マネーボイス メニュー

今年「あと1回」と予想される米利上げ、その後の日米経済にかかる急ブレーキとは?

アメリカの利上げ予測と日本の金融政策は、今後どのように進んでいくのか。直近の米利上げの影響から、日米の経済状況の見通しまでをおさらいします。(『らぽーる・マガジン』)

※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2018年10月1日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

米利は予定通りに上げたものの、今後は緩やかな減速を予測

全会一致で、予定通りの米利上げが決定

米連邦準備理事会(FRB)は、25~26日の連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.00~2.25%に引き上げることを決定しました。利上げは予想通りで、決定は全会一致でした。

声明文では「緩和的」の文言が削除されました。パウエル議長は「金利の道筋を示したものではない」と説明しましたが、政策金利が中立水準に近づいているとの認識を市場に与えたようです。

足元の強い経済指標からタカ派的な見通しが今後の利上げ回数の増加として現れると予想されていたものが、実際には足元のGDP上方修正されたのみで、インフレ見通しは前回同様となりました。

さらに、ドットチャートは中央値に変化が見られなかったものの、2020年の分布をみると、従来から二極化が進みました。

3.625%のドットが6個に増えた一方で、3.125%以下のドットも増加、前回より低い水準での利上げ打ち止めを見込んでいることが伺えます。また今回から追加された2021年末の分布は、中央値が2020年末と同様の3.375%で、中央値だけを見れば、政策金利据え置きが中心的な予想ということになります。

上昇に勢いがない、米10年債利回りに注目

今年はあと1回、新興国市場の動揺など懸念材料もありますが、2019年も3回の追加利上げを見込むなど従来のシナリオを維持しましたが、ドットチャートからも、2020年に想定する利上げ回数はわずか1回にとどまり、2021年はゼロとなっています。

また2019年後半以降は大型減税の効果が薄れるとされ、FOMCは成長率見通しも2020年は2.0%、2021年は1.8%と緩やかな減速を予測しています。

さらに、FOMC参加者のうち数人は、2021年の利下げを見込んでいることも分かりました。

FOMCでの利上げ発表後、トランプ大統領は、利上げに対する不快感を表しました。

マーケットでは、一瞬ドルが買われ、ドル/円でも113円オーバーでしたが、トランプ発言もあり、利上げを織り込んだポジション解消もありで、ドルが売られました。

今回のFOMCから見られることは、今の米国経済好調も、あと数年で終わるという予想であることがわかりました。

整理しますと、今の利上げは2020年までで、当初予定よりも低い水準で打ち止め、2021年からは経済成長率は鈍化し、利下げも考えておかなければならないという状況になるということです。

このせいか、米10年債利回りの上昇に勢いがないことに注目します。

Next: 2020年以降、経済成長率が鈍化する理由とは



2020年の東京五輪開催後、猛烈な円高が訪れる?

この2020年という年を日本の事情に照らし合わせると、2019年消費税率引き上げ2020年東京五輪開催で、これ以降が五輪需要がなくなります。

さらに2025年は団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という、人類が経験したことのない「超・超高齢社会」を迎えます。

認知症の人が増える、空き家が増えるなどなどの社会現象も起きると言われています。

問題は金融政策で、日本がこのままゼロ金利政策を続け、その間米国は利上げを行っていき、米国金利差拡大で円安が加速すれば、物価が上昇していきます。

今足下では原油価格が徐々に上がってきていますが、このまま原油価格が上昇し続ければ、場合によっては日本は、日銀が言う物価目標2%達成となるかもしれません。

タイミングとしては2020年あたりだとしたら、米国は利上げ打ち止め、むしろ利下げを検討する頃に、日本は利上げをするかもしれません。

そうなると、日米金利差縮小で、今度は猛烈な円高になる可能性があります。

ファンド勢のポジション入れ替えが猛烈に進めば、日本の株価は円高で暴落、ふたたび日本は円高不況に陥ることになることが想像されることが恐ろしいです。

長期投資とじっくりと構えていると、すごく痛い目にあうかもしれません。

トランプ政策はレーガン大統領政策(レーガノミクス)に似ている

確かにトランプ大統領の経済政策は、大きく財政を緩めて減税やインフラ投資を推進し、とにかく株価を上げることに注力しました。

その結果、米財政は逼迫するのは事実です。

つまりトランプ大統領は、財政を緩めて財政逼迫を助長し、中央銀行に当たるFRBは金融引締めを行っているのです。

これはレーガン大統領のときと同じ状況で、当時は、市場原理に基づき社会保障削減と減税を行いましたが、軍事費という政府支出を拡大させました。

経済規模は拡大しましたが、減税と軍事費拡大のセットは、結果として貿易赤字・財政赤字(双子の赤字)を増大させました。

このことは、後にプラザ合意へと繋がり、日本は出口が見えない円高不況に突入していったのです。

ユーロを売られる要因が表面化

イタリア政府の予算案合意延期報道からユーロが売られ、ドルが強くなるタイミングで、ユーロ/ドルは、チャートで見れば下方向に推移しました。

先週も解説しましたブレグジットの行方が混沌としてきて、英国とEU側との交渉がうまくいっていないようです。このままだと白紙離脱というハード・ブレグジットになる可能性が高まったと言えそうです。

同時にイタリアやスペインなど南欧諸国の財政問題が再び表面化しそうで、緊縮疲れの国民は、EUからの財政引締要請と戦う政権を好むようになっています。

EUの難民入り口を引き受けているギリシャやイタリアは、そのための費用援助などをEUともめることもあり、様々な不満が鬱積していると思われます。

これがいつ噴火するのか、マーケットに対してのネガティブ要因を、EUは抱えたままでいます。

EUの顔であるドイツでも、難民受入反対の極右が勢力を伸ばしてきました。

ブレグジットの展開しだいでは、EUそのものの土台が危うくなりかねないという思惑がマーケットに浸透すれば、ユーロ下落に拍車がかかるかもしれません。

Next: 10月頭に日経平均が大きく上昇した理由とは



日経平均株価強し、その要因は海外勢の買い

先週末(10月1日時点)の日経平均株価終値は24142.50円、これは今年1月のバブル崩壊後の高値24124円に4円まで迫るものでした。

日中高値で言えば、一時24286.10円をつけましたので、1月に付けた取引時間中の年初来高値24129円を上回ったことになり、1991年11月14日以来の日中高値を付けました。

需給で見れば、海外勢の買いが入ったことが上昇要因と言えます。

海外勢は年初から日経平均が直近安値を付けた9月7日の第1週までに、先物を含めて日本株を約8兆5000億円売り越していました。これが直近では、28日に発表された3週は1兆4703億円の買い越しとなっていて、買越額は、2014年11月1週以来の高水準の結果となりました。

国内法人の上期末に向けた決算対策売りも、中旬までに一巡したことも上昇要因と考えられそうです。

信用買い残が減って売り残が増えていることからも、上昇はうなずけるところはあります。

ここまで勢いよく上昇してくると警戒感も出てきて、短期的な行き過ぎ感は否めないとか、過熱気味という声も、ささやかれてきているようです。

ドル/円は113.60~113.70円台まで円が売られています。

専門家の間でも「なぜ」という感じで、こんなに大きく円安に振れる要因を、十分につかめていないようです。

考えられる要因として、FRB利上げ後のトランプ大統領による「利上げ不愉快」発言によるドル高にブレーキがかかったことが挙げられます。

日本企業が中間決済で、ドル買い需要が高まっていたとの観測もあります。

ただドル/円での円安傾向は、ここから大きく加速しないのではという見方があります。

その理由としてFX会社によれば、「ミセスワタナベ」のポジション取りで、ドル/円での買い比率が低下していて、今の相場を冷静に見ている印象があるというのです。

またこれ以上に円安が進むと、日米通商交渉の最中ですから、トランプ大統領の円安牽制発言が出てくるのではとの懸念も出始めています。

ドル/円114円超は、頭が打たれる危険性をはらんでいるというのが、市場関係者の見方のようです。

続きはご購読ください。初月無料です

<初月無料購読ですぐ読める! 10月配信済みバックナンバー>

※2018年10月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。

・予定通り米利上げ、でもその先は…(10/1)
いますぐ初月無料購読!

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込324円)。

9月配信分
・大きく伸びた株式市場(9/24)
・週末マーケット上昇、円安加速(9/17)
・強かった米雇用統計(9/10)
・株価上昇も、円高が気になりますね…(9/3)
2018年9月のバックナンバーを購入する


※本記事は、らぽーる・マガジン 2018年10月1日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

【関連】ヘッジファンドの退場ラッシュが支える米国株、中間選挙前にさらなる上昇へ=近藤駿介

【関連】日本人は地方を見捨てるのか。2024年、少子高齢化で認知症が這い回る地獄絵図となる=鈴木傾城

【関連】「ふるさと納税」成功しすぎで総務省は許せない? 制度見直しの真意とは

らぽーる・マガジン』(2018年10月1日号)より一部抜粋
※タイトル、本文見出し、太字はMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

らぽーる・マガジン

[月額330円(税込) 毎週月曜日]
絶対に知るべき重要な情報なのに、テレビなどが取り上げないことで広く知らされていないニュースを掘り起こし、また、報道されてはいるけどその本質がきちんと伝わっていない情報も検証していきます。情報誌は二部構成、一部はマーケット情報、マーケットの裏側で何が動いているのかを検証。二部では、政治や時事問題、いま足元で何が起こっているのかを掘り下げていきます。“脱”情報弱者を求める人、今よりさらに情報リテラシーを高めたい人はぜひお読みください。CFP®資格の投資ジャーナリストが、毎週月曜日にお届けします。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。