マネーボイス メニュー

東京の不動産価格はこの14年で大幅上昇。それでもバブルと言えない、その理由とは=田中徹郎

収益率6%という物件がごろごろとあった14年前と比較して、東京の不動産価格はかなり高くなっています。これは果たして、バブル化しているからなのでしょうか?(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
株式会社銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

まだ割安? 東京はアジア主要都市と比べてもまだまだ伸びるワケ

不動産と日本国債を比較すると見えてくる

東京のワンルームマンションはバブル化しているんじゃないでしょうか?」

お客さんから時々このような質問を頂きます。確かに東京のワンルームマンションの相場は随分上がってきました、そういえば僕がこの事務所を開業したころ(今から14年以上前です)は、手取りベースの収益率が6%を超える物件がゴロゴロしていたものです。

今にして思えば当時の不動産は安すぎました。金融の世界で日本国債は、信用リスクがゼロの資産、つまり「無リスク資産」と位置づけられます。株や社債など他のあらゆる金融商品は、この日本国債と比較して評価されることになります。そのような観点で当時の不動産を見ればどうだったでしょう。

例えば14年前の2004年時点で、日本の超長期金利(すなわち日本の30年国債の利率)は2.7%ほどでした。一方で上記のように、当時の不動産の収益率が6%ほどでした。これは何を意味しているのでしょうか。

仮に私たちが1,000万円で日本政府が発行する満期30年の国債を買えば、むこう30年にわたって毎年27万円の利息を得ることができます。

1,000万円×2.7%=27万円

一方で私たちが同じ1,000万円で、中古のワンルームマンションを買っていたならどうでしょう、その場合の私たちが得る家賃は毎年60万円です。

1,000万円×6%=60万円

27万円と60万円を比べると、圧倒的に後者方が利益が多いにもかかわらず、すべての人が不動産を買うわけではありません。なぜなのでしょう。

それは上記のように国債にはリスクがない(注)と考える一方で、不動産にはさまざまなリスクがあるからです。

注)実際には日本国債も破綻するリスクがあるのですが、金融の世界ではリスクゼロとみなします。

例えば、万が一地震や火災が起きた場合の価値の減少、お金が急に必要になった場合、換金にかかる時間の問題、建物部分が年の経過とともに価値が減少する点、空室が生じた場合、家賃がもらえない可能性など不動産が持つリスクと収益率を天秤にかけたうえで、私たちは不動産を買うべきか、それとも日本国債を買うべきか、という選択をしているといえるでしょう。

Next: まだ東京はバブルじゃない? 14年前に比べて割安感は減っているが…



14年前に比べて割安感は減っているが…

では現在の両者の収益率はどうなっているのでしょうか。現在の30年国債の利率は0.8%程度、これに対して都心にある中古マンションの手取り収益率は3.6%程度です。

以上を整理しますと

<14年前>

・30年債金利(1):2.7%程度
・ワンルームの手取り収益率(2):6%程度
(2)-(1)=3.3%

<現在>

・30年債金利(1):0.8%程度
・ワンルームの手取り収益率(2):3.6%程度
(2)-(1)=2.8%

注)(2)-(1)は「リスクプレミアム」といって、私たちがリスクを取ることによって得られる収益の上乗せ部分です、これが大きければ大きいほど不動産は割安と考えられます。

たしかに上記のように「リスクプレミアム」は縮小しており、不動産の割安感は小さくはなっていますが、収益率の低下(6%→3.6%)ほどには「リスクプレミアム」は縮小していないことがわかります。

このようなことから現在の不動産相場は決してバブルではなく、金利との見合いの中で考えるなら正常な範囲だといえるでしょう。

東京の将来は明るい

以上は不動産を金融商品としてみた場合の検証ですが、東京という都市の将来から考えた場合はどうなのでしょう。

例えば東京オリンピックが終われば都内不動産相場は下がるとお考えの方も多いようですが、私は違う考えを持っています。確かに全く影響がないとは言えないでしょうが、東京という都市は常に進化し続けています。

いよいよ新橋駅前の名物ビルは建て替えられるようですし、JR新橋駅も現在改修中です、日本橋やJR東京駅周辺は再開発が進んでいますし、日本橋上空の悪名高い首都高も、いよいよ地中化されるようです。

この近所の話をすれば、築地市場の跡地は広大で、どのように開発されるか楽しみですし、田町と品川の間にできる新駅も少しずつ形が見えてきました。

リニアモーターカーはだいぶ先ですが、その頃の品川駅はどのように姿を変えているのでしょうか。

Next: 東京の不動産はまだ割安。アジア主要都市と比較しても遜色がない



東京の不動産はまだ割安

少なくともアジア近隣の競合都市と比べても、東京の将来は全く遜色がないと思います。

ちなみに香港、シンガポール、上海などアジア主要都市の収益率は2%をやや下回る一方で、これら諸国の30年債利回りは概ね4%を超えます。つまり、リスクプレミアムはマイナスです。

このようなの点からも、東京の不動産はまだ割安感が残っていると僕は思います。

【関連】来年10月に襲う「消費税10%」地獄、生活を守るたったひとつの冴えたやりかた=鈴木傾城

【関連】2022年までに日本経済は破綻する。アベノミクス成功でも終焉でも未来は同じ=高島康司

【関連】日本より悲惨な韓国経済、この先の10年「希望が一切ない」4つの根拠

一緒に歩もう!小富豪への道』(2018年10月9日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

一緒に歩もう!小富豪への道

[無料 毎週火曜日+号外あり]
富裕層むけ、富裕層入りを目指す方むけの究極の資産防衛メルマガ!一国だけに資産を集めておくのは危険な時代がやってきました。海外ヘッジファンド、貴金属、不動産からアンティーク・コインまで、金融不安に負けない世界分散ポートフォリオを、経験豊富なファイナンシャル・プランナーが誠意をもってご案内します。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。