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ヤフーが始める「信用スコア」の光と影~すべての日本人が格付けされる日=岩田昭男

ヤフーが「信用スコア」事業への参入を発表しました。優秀な人には様々な特権を与え、ランクが低い人は特権を奪われて生きにくくなるという社会がやって来ます。(『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』岩田昭男)

※本記事は。『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』2018年10月15日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:岩田昭男(いわたあきお)
消費生活評論家。1952年生まれ。早稲田大学卒業。月刊誌記者などを経て独立。クレジットカード研究歴30年。電子マネー、デビットカード、共通ポイントなどにも詳しい。著書に「Suica一人勝ちの秘密」「信用力格差社会」「O2Oの衝撃」など。
岩田昭男の上級カード道場:http://iwataworks.jp/

中国では「ごま信用」が社会のステータスに。日本でも馴染むか?

「個人の信用」が数値化されて売られる社会へ

ヤフーが「信用スコア」事業に参入すると話題になっています。はたして、この事業は成功するでしょうか。

同社はYahoo! IDを基盤に個人のインターネットでの様々なデータを分析して「信用スコア」を作り、それを企業に売り込む新規ビジネスを近々スタートさせるとしています。

ヤフーショッピングでの購買行動やヤフーオークションでのやりとり、さらには毎日の検索履歴も対象にするということから、利用者のネット生活全般はカバー(見える化)されるでしょう。

これにリアルの世界のクレジットカードの返済履歴などの個人情報を組み合わせて、より正確な「信用スコア」を売ろうとしているようです。

スコアは100点満点で、点数が高くなればシェアリングサービスを利用する際に保証金が免除されるなどの特典がたくさん用意されるといいます。

もちろん集められたスコアは、パートナー企業のマーケティング活動などに利用されます。

中国で人気の「ごま信用」がモデル

この事業のモデルになったのは中国のアリババグループのQRコード決済『アリベイ』のサービスである「芝麻信用(ジーマ信用・ごま信用とも言う)」です。

ごま信用の評価軸は、個人特性支払能力返済履歴人脈素行という設定ですから、ヤフー信用と比べれば、より幅広い分野から情報を集めて評価しようとしているようです。

その影響力は非常に強く、アリベイで買い物をするたびにスコアが表示されますから、さらに点数を上げて有利な特典を得ようと皆が競うようになったといいます。

Next: 中国では「信用スコア」競争がブームに? いったん信用が落ちると…



中国では「信用スコア」競争がブームに

信用スコアが高いことで得られる特典には、例えば、旅行でホテルを予約する際のデポジット、賃貸サイトでの敷金、レンタカーの預かり金が不要になるなどがあります。

隣に住む◯◯さんがホテルで割引を受けたというと、負けてはならじと村民一同が点数アップに競い合うようになっています。

また、スコアが高い方が、ローンを借りる際も金利が低くなる仕組みになっていますし、就職の面接や婚活でも有利になるというので、中国国民は点数を上げるのに夢中になっており、ごま信用そのものがブーム化しています。

その影響でアリベイの発行数が増加し、利用金額が上がったそうです。

いったん転びだすと、地獄の底まで落ちてしまう…

しかし、点数を一本調子で上げ続けることは簡単ではありません。かなり難しいといえます。

というのもアリベイの場合は、「いいね」の数であるとか、シェア自転車を返し忘れたなど素行や道徳に関する評価項目が数多くあり、それをいちいちクリアしなければならないからです。

そのため、いったん点数が下がりだすと、これまで享受できた特典の数々を手放さねばならなくなり、就職や結婚でも優遇されることはなくなる傾向にあります。

いってみれば、人生のチャンスを1つずつ潰されていくようなものですから、これはこたえます。その結果、社会の格差がさらに広がり、固定化するといった問題も起きているようです。

中国政府も全面的に協力

中国政府もこのスコアには全面的に協力しており、政府が持つ国民の個人情報もそこに投入されている模様です。

また、日頃のネットへの書き込みなどで国の方針と異なっていたりすると、ある日突然、「AIの指摘で君は反逆者となった」と公安に拘束されることもあり得るのです。

Next: 日本にも恐ろしい「スコア社会」がやってくる? ヤフーの計画は…



中立なルールが必要だ

そう考えると、日本で始まるヤフーの信用スコアにも、ひとこと言いたくなってきます。

信用スコアの導入自体に否定はしませんが、国家の介入はもちろん、企業との提携もよほど慎重にしなければならないと言えるでしょう。

できれば、第三者委員会のような中立的機関を作って、ルールをしっかり決めて、運営をすべてガラス張り入りにするなど、明確な姿勢で臨んでほしいものです。

スコア嫌いなら拒否もできる

ソフトバンクとヤフーが始めたQRコード決済『Pay Pay』が10月5日にスタートしましたが、こちらはアリベイの加盟店開拓も行い、日本人と中国人訪日客をダブルで取り込むことを売りにしています。

そして、そこにはこの「信用スコア」が仮に加わってくるとすると、せっかくの人気に水を差すことにならないかと心配になります。

ただ、ヤフー信用の場合、自分の個人情報のスコア作成を認めたくない人は、事前にスコアの作成を拒むことができるといわれています。また、パートナー企業に自分のスコアを提供することに「同意しない」ということもできるといいます。

この辺は個人情報の扱いに極めて慎重な日本人向けの対応と言えるでしょう。

いずれにしても、本格的な信用力格差時代が日本にも到来したということです。あなたがそれにどう備えるか、それが問われています。

余談ですが、動画配信サービスのNetflixで配信されているドラマ『ブラック・ミラー』のシーズン3の第1話「ランク社会」にて、本稿で話題にした「スコア社会」の恐ろしさがユーモアたっぷりに描かれていますので、ぜひご覧ください。背筋が凍りますよ。

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達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』(2018年10月15日号)より抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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