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コスパのサイゼリヤ、店舗数のすかいらーく。ファミレス業界の復活は本物か?=栫井駿介

一時は鳴かず飛ばずだったファミレス業界が再び息を吹き返しているようです。その中でもおいしい銘柄はどこなのか? 次の成長企業を見つける足がかりを掴みます。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

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外食業界は小売業界と同じ道を歩む?いま注目の外食関連銘柄とは

テンバガー(10倍株)が多数生まれる外食業界

一時は鳴かず飛ばずだったファミリーレストラン業界ですが、近年再び息を吹き返しているようです。その一つのきっかけが「ファミレス飲み」です。少しくらいなら、居酒屋と比べて圧倒的なコストパフォーマンスで飲めてしまいます。ゆっくりと席に座りながら「センベロ」も難しくありません。

一方で調子を落としているのが居酒屋業界です。若い人がお酒をあまり飲まなくなったことや、働き方改革により会社の飲み会が少なくなってきていることも影響しているでしょう。

外食業界の栄枯盛衰は今に始まったことではなく、幾度となく繰り返されてきました。難しい業界ですが、動きの激しさゆえに数多くのテンバガー(10倍株)を生み出してきたことも事実です。この記事ではファミリーレストラン業界を俯瞰することで、次の成長企業を見つける足がかりをつかみたいと思います。

規模のすかいらーく、コスパのサイゼリヤ

ファミリーレストラン業界には店舗数の多い順に以下のような企業があります。

すかいらーくHD<3197> 3,145店舗(ガスト, ジョナサン, バーミヤン, 夢庵など)
サイゼリヤ<7581> 1,469店舗
ジョイフル<9942> 876店舗
ココスジャパン<9943> 587店舗
デニーズ(セブン&アイHD<3382>傘下) 377店舗
※店舗数は直近本決算期末時点

店舗数で突出しているのが、すかいらーくHDです。傘下にはガストをはじめ、ジョナサン、バーミヤン、夢庵など、誰もが目にしたことのあるブランドが名を連ねています。伸び悩んだ時期もありましたが、2006年にMBO(非上場化)が行われ、規模の拡大とともに業績を改善させてきました。2014年に再上場を果たしています。

外食産業において規模を拡大させることは、購買力の強化につながります。同じ食材を大量に仕入れることによって、価格交渉をより有利に進めることができるのです。その結果、営業利益率はここに挙げた企業の中で最も高い水準となっています。

すかいらーくに次いで店舗数が多いのがサイゼリヤです。イタリア料理を専門とするファミリーレストランで、科学的な分析に基づくローコストオペレーションの徹底により、競合他社より安い価格で商品を提供しています。

顧客にとってのコストパフォーマンスの高さを端的に表す数字が原価率です。原価率が高いほど値段に対して高い食材を使っているため、それが満足度を高める要因となります。サイゼリヤの原価率は他の三社を大きく上回っていることから、「安くていい料理」を提供していることが分かります。

一方では、効率的な運営により販管費(人件費や賃料)を抑えることで、平均を上回る利益を確保しているのです。

※デニーズは非開示

客を満足させ、自らの利益も確保するこの姿勢は「三方良し」につながり、長期的な経営を維持していく上で非常に重要なものと言えます。

Next: 外食業界は小売業界と同じ道を歩む?/はま寿司を擁するゼンショーに注目



外食業界は小売業界と同じ道を歩むか

今は好調なファミリーレストラン業界ですが、外食は栄枯盛衰の激しい世界です。今日の勝ち組が明日には負け組になってしまうことも決して珍しいことではありません。

長期的な話をするならば、外食業界は小売業界と似たような軌跡をたどると考えます。

小売業界においては、かつて「何でも揃う」百貨店やダイエーなどの総合スーパーがもてはやされましたが、今は客足が伸びず、苦境にあえいでいます。

かわって台頭してきたのが、ユニクロやニトリなどの専門店です。これらはひとつのカテゴリに集中することで商品の質を高めると同時に、SPA(製造小売業)の導入でコストを大幅に下げ、価格競争においても優位に立ったのです。

百貨店や総合スーパーは、外食産業で言えばまさにかつてのファミリーレストランです。一言で表すなら「何でもあるけど、何もない」。デフレに慣れきった消費者の目はシビアですから、そこを訪れる理由がなければわざわざお金と時間をかけて外出することはなくなってきました。

コンビニ弁当や冷凍食品でもそれなりの料理を楽しむことができるようになりましたから、もはや「何でも揃う」というだけで客を連れてくることはできなくなっているのです。

「専門化」と「コスト競争力」という観点でユニクロやニトリに近いと思われるのが、サイゼリヤです。イタリア料理に的を絞り、ミラノ風ドリアなど安くて美味しいヒット商品を生み出しました。また、ハウスワインは価格に対して十分すぎるほどの美味しさを提供しており、ファミレス飲みブームのきっかけを作ったとも言われます。

安くていいものを提供し続ける経営手法はいつの世も正義であり、派手さはなくとも着実に人々の生活に根付くことができるでしょう。

グループ戦略のシナジーも捨てがたい

それぞれのお店が専門化する一方で、どのカテゴリーが流行るのかを予想するのは容易ではありません。外食産業は流行り廃りが激しく、アパレルや家具のようにはいかない側面もあります。

そこで、ひとつの持株会社が様々なカテゴリーの専門店を連ねることで、どこがヒットしてもいいようにカバーしてしまう戦略もあます。すかいらーくや外食最大手でココスの親会社でもあるゼンショーHD<7550>がその例です。

違うカテゴリーのお店であっても共通する食材は多いため、購買力の強化によりコストを下げることができます。グループ全体で急成長することは難しいにしても、失敗も避けやすい経営手法です。

食材の共通化だけではなく、様々な経営ノウハウを共有することでシナジーを生むこともできるでしょう。

ゼンショーグループで急成長中なのがはま寿司(非上場)です。お店に入るとペッパー君がお出迎えしてくれます。

このペッパー君、レンタル期限を迎え8割が契約解除されてしまうという悲しいニュースもありますが、はま寿司のペッパー君はそのようなニュースは無縁とも思われるほど忙しく働いています
※参考:ペッパー君さようなら 8割超が“もう要らない” – AERA dot.
※参考:ペッパー君に冷たくしないで 「はま寿司」全店で大活躍中 – J-CASTニュース

整理券の発行から呼び出し、席番号の案内までしてくれ、店員の手を煩わせません。これだけ働いてくれるなら、外食産業でも大きな問題となっている人手不足解消にも一役買うでしょう。要は、人もロボットも使い方次第ということです。

Next: 安くなったら買いたい注目のファミレス銘柄は?/各社PERまとめ



注目企業:ジョリーパスタ

同じゼンショーグループで私が注目しているのがジョリーパスタ<9899>です。名前の通りパスタの専門店であり、豊富なメニューによってパスタ好きを唸らせています。

ジョリーパスタ<9899> 日足(SBI証券提供)

パスタに特化していることから、無駄なコストを避けることができます。ゼンショーグループですから、有利な価格で食材を仕入れることができるでしょう。営業利益率も直近の決算で9.0%と外食産業の中では非常に高い水準を記録しています。

専門店であり、ゼンショーグループでのコスト競争力は魅力的です。画期的な商品で顧客の心を掴むことができれば、ファミリーレストラン業界において台風の目になる可能性があると考えます。

もちろんそう簡単にはいかないのがこの業界の難しさですが、生活しながら次に流行るお店を探すのも株式投資の一つの醍醐味です。

ジョリーパスタのPERは30倍超と比較的高く、なかなか手が出る水準ではありません。しかし相場が軟調な今、もし下がってきたら買いのチャンスが訪れるかもしれません。普段買い物をするように、安くなったら抜け目なく買えることが長期投資家に求められる才能と言えるでしょう。

【PERまとめ】(2018年11月21日時点)

すかいらーくHD<3197>:28倍
サイゼリヤ<7581>:18倍
ジョイフル<9942>:30倍
ココスジャパン<9943>:55倍
ゼンショーHD<7550>:45倍
ジョリーパスタ<9899>:34倍


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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2018年11月22日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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