中国人民銀行は10月23日夜、預金金利の上限撤廃と基準金利、預金準備率の引き下げを発表しました。これには経済減速に少しでも歯止めをかける狙いがありますが、経済ジャーナリストの小倉正男氏は「今回の追加金融緩和は気休めにすぎない」としたうえで、「中国経済は今後30~50年間にわたって『喪失の時代』を経験することになる」との見方を示しています。
中国は「需要創出の要」から「世界最大のリスクファクター」に
中国バブルは崩壊不可避。気休めにすぎない金融緩和
バブルとおできは大きくなると潰れる。中国のバブルも膨らんだおできと同じで、どうやっても潰れるしかない。
中国の7-9月期のGDPが6.9%と発表された。ついに7%を割り込んだわけだが、6.9%ならそう悪くはないのではないかという声もある。株価も「ひと安心」と上昇してみせた。
ただし、良いも悪いもない、数字そのものが信用できる代物ではない、という見方が前提としてある。適当な数字を出していると思っていなければならない。
中国はさらに金利を下げて、同時に金利自由化に踏み切った。しかし金利を下げても、雇用や所得が増える、あるいは需要が起こる状況ではない。金利自由化は「改革」とはいえるが、需要が極端に低迷している現状において意味は低下している。
中国では、妙な表現だがシャドウバンキングが金利自由化を担ってきた。銀行は国有企業などにしか融資しない。シャドウバンキングは、高い金利で一般企業や個人に融資してきた。そのカネが土地や株などの投資に向けられていったわけである。金利自由化はそうした実体に追随したものということになる。
失われる50年
バブルというものは、土地でも株でも、「これは絶対に儲かる」とみんなが思い込んで買うときに勃発する。中国はお国がかりでバブルを奨励したようなものだから、このバブルは全員参加型である。
みんなが買えば、次に買う人がいなくなる。買う人がいなくなれば、買った人は売る人に変わる――。
バブル崩壊とは、売る人ばかりになった状態のことである。
いまの中国がまさにそれである。おカネはどんどん中国から逃げている。こうなると人民元の切り下げは不可避というか、価値を維持するのが困難になるのが市場原理だ。
日本のバブル崩壊では、20年以上も「失われた時代」が続いた。だが中国経済は、今後30~50年の間「喪失の時代」を経験することになるだろう。中国のバブルは、共産党独裁の中央政府、地方政府がつくった「官製バブル」であり、無責任というか責任の所在がない。バブルもごついが、バブル崩壊もごつい、とみておいて間違いない。
バブルを「つくるまで」が責任のすべて。指導部に打つ手なし
日本のバブル崩壊では、名だたる企業が軒並み「損失隠し」「損失飛ばし」を行った。膨大な損失・赤字を出せば、経営責任が生じることになる。だから責任を取りたくない。会長、相談役として会社に残れなくなる。役員退職金にも響く――ひたすら損失隠しにひた走った。
いっぽう中国は、中央政府や地方政府、すなわち国が主導したバブルだった。彼らにとってはバブルをつくるまでが「責任」というか「使命」であり、バブルをつくったことへの結果責任などさらさらない。コミットのベクトル(方向)が違った。
したがってバブルは巨大化し、崩壊も巨大化し、しかも途方もなく長期間に及ぶことになる。責任がない体制というか、体質というものが、そうさせる……。
中身はともかくGDP世界2位の経済大国・中国は、これから長い苦難に沈むことになる。中国は「需要創出」で世界経済に貢献したが、今後は世界経済における巨大な不確実性ファクターになる。
『日刊株式投資情報新聞』2015年10月26日号より一部抜粋
※太字、見出しはMONEY VOICE編集部による
無料メルマガ好評配信中
日刊株式投資情報新聞
[無料 ほぼ平日刊]
「日刊株式投資情報新聞」は投資家と企業を結ぶ報道型IR支援会社の日本インタビュ新聞社が提供するインターネットの株式専門メールマガジン。当社の提供する媒体は、「日本インタビュ新聞 株式投資情報」をコアとして、「経営者紀行」、「個人投資家向け企業情報 Media-IRソリューション」と幅広い情報網を有する。こうした立体的な情報が、個人投資家に生き生きとした感動のあるニュースソースを実現している。