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36年ぶり廃止の「一人っ子政策」これからも中国に真の自由はない=浅野久美

中国共産党は10月29日、中央委員会第5回全体会議(5中全会)で次期5カ年計画(2016-20年)の大枠を策定し、36年ぶりに「一人っ子政策」を廃止する方針を明らかにしました。

これを受け、中国・香港株式市場では育児関連の銘柄を中心に買いが入る場面もありましたが、『三橋貴明の「新」日本経済新聞』に寄稿するチャンネル桜キャスター・浅野久美氏の見方は冷ややか。「夫婦に産む自由が戻ったわけではなく、国民にとって大きなお世話であることには変わりがない」としたうえで、一人っ子政策が事実上の失敗に終わった原因を分析しています。

記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2015年10月31日号より
※本記事のタイトル・リード文・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

労働人口が足りない中国。一人っ子政策はなぜ失敗したのか?

「2人までならよろしい」国家から押しつけられた自由

今週も色々ありましたが、個人的にいちばん「なんだかなぁ」度の高かったニュースは、「中国の一人っ子政策、36年ぶりに廃止」でした。

中でも特に、なんだかなぁ…なのは、結局、「夫婦に産む自由が戻った」わけではなく、新たに「2人までならよろしい」というあたり。

それぞれの夫婦がそれぞれ好きなように家族を形成してよい…のではない以上、相変わらずの「大きなお世話」計画であることに変わりはなく、人間としての基本の営みである出産の是非までを政府がいちいちコントロールするという気持ち悪さは、「永久に先進国ヅラはするなよ」と悪態をつきたくなるレベル。

でも、その無理矢理なコントロールに慣らされてしまっていた人々も、今回はえらく冷ややかなリアクションのようですよ。

そもそも、人口抑制のために導入された一人っ子政策で、実際には4億人が抑制された、というデータがありますから、「成功」なんじゃないのか…という見方になりそうなものですが、13億の人口のうち、30パーセントが50歳以上、15パーセントが60歳以上というバランスになり、結局は労働人口や軍事人口が足りなくなる、というのですからやはりかなりの見込み違いなのでしょうね(日本も少子高齢化の対策については、ちょっとピントがずれているようなので大きなことは言えませんが)。

深刻化する都市部と地方の格差

それにしても、この政策のおかげで、2人目ができて(しまい)産む選択をした夫婦にとっては、多額な罰金を払ったり、昇進できなくなったり、多方面で社会的に冷遇されるという未来が待っている状況でした。

さらに、男の子優先という考えが根強く残る地方部などでは、人身売買や誘拐事件も頻発するようになり、一方では都市部でさえも、2人目を懐妊した妊婦さんは周囲からの圧力で堕胎を強要されるだけでなく、こっそりと処理するために、不衛生な病院を選んで予後が悪く死亡した…なんて不幸な事例も山のようにあるわけです。

また、現状1億人いるともいわれる、戸籍のない「黒孩子(闇の子)」は、成長しても学校にも行かれず、まともな職にもつけずにひっそりと生きている反面、公には存在していない体になっている分、たとえ犯罪を犯しても表にも出ない、という闇から闇の社会となるわけですね。

片やパスポートをふりかざして海外へ爆買いに出かける人たちとの落差は、悲劇としか言いようがありません。

36年前といえば、中国ではほぼ全員が人民服を着ていたような時代で、政府の政策には異議を唱える風潮もなかったのでしょうけど(コンドームも政府から無料配布されていたそうです)、中国自体も大きく変化した現在の世の中、「何をいまさら」という反応にもなりますよね。

っていうか、そもそも2人目3人目を望み、経済的に余裕のある人たちは、罰金を払って堂々としているか、あるいはとっくに海外に出て、国籍もしっかり取って、多方面に「保険」をかけていることは国内でも周知なのですから、今になって「さあ、張り切って2人目どうぞ~」と言われたって、わーい、と喜ぶよりは、なんだかなぁ…の心境ではないでしょうか。

Next: 「一人っ子政策」利権崩壊で中国国内の地方政府は大慌て?

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