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手術も可能に? VRはブロックチェーンとの融合で遠隔医療の高度化が進む理由=高島康司

今回は、バーチャルリアリティー(VR)とブロックチェーンの融合である。AIやブロックチェーンとならびVRも、いま急速に発展している第4次産業革命の重要な分野のひとつである。今回は、VRとブロックチェーンを結合させたプロジェクトの概要を紹介する。(『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』高島康司)

※本記事は有料メルマガ『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』2019年1月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

バーチャルリアリティーとブロックチェーンの融合

VRの発展

VRは決して新しいテクノロジーではない。すでに1990年代の後半からパソコンの画面で見ることのできるVRのサイトは多数存在した。それらは、中に入って展示物を鑑賞することのできるバーチャルな美術館や博物館、中に入ることのできるバーチャルな一戸建てやマンション、また多くの人々と出会えるバーチャルな広場などであった。VRを適用したリアルな体験ができるあらゆるサイトが存在した。

なかでもパソコンでアクセスするVRのもっとも完成度の高いサイトのひとつが、「リンデンラボ」が提供する「セカンドライフ」である。「セカンドライフ」はさまざまな世界を持つ巨大な都市空間だ。人々はバーチャルな身体であるアバターを通して都市のなかに入るが、そこにはスタジアムやショッピングモール、映画館や美術館、オフィスやマンション、また一戸建てなど、現実世界に存在するあらゆる施設や場所がある。

そうした「セカンドライフ」でもっとも特徴的なことは、バーチャルな都市のなかで不動産の権利を購入して開発し、売り出すことができたり、またショッピングモールで陳列された商品を見て実際に購入することができたりと、実際の社会と同じような商取引ができたことである。これが、1990年代の後半から始まった前世代のVRの到達点であった。

その後、2010年代からインターネットの通信速度が飛躍的に上昇し、膨大なデータのダウンロードが短時間でできるようになると、さらにリアルなVRが開発されるようになる。それは、専用のゴーグルを装着し、現実世界と変わらない360度の3D体験を可能にするデバイスの出現である。

それを使うことで、リアルな体験ができるゲームや映画、そしてスポーツなどのエンターテインメントだけではなく、遠隔治療や遠隔手術などの医療、科学のモデルを視覚的に再現できる教育、建物が建つ前に内外から建造物を確認できる建築、商品を手にとって見ることのできるショッピングモール、3Dの身体で出会える新しい形態のSNSなど、実に多くのVRの適用例が見られるようになった。

Next: VRがブロックチェーンと融合するとどのようなことができるのか?



ブロックチェーンとの融合

一方、このように急速に発展しているVRを管理しているのは、既存の中央集権的なサーバである。こうしたVRがブロックチェーンと融合すると、中央のサーバで管理された既存のVRにはない機能が加わる。これにより、VRの適用分野がさらに拡大する可能性が出てきた。それらをまとめると以下のようになる。

1)データ処理の分散化

VRでは膨大なデータから画像や映像、そして音声を生成するレンダリングという作業が不可欠だ。これはコンピューターのGPUに大きな負担をかける。GPUの処理速度が十分にないと、レンダリングに遅延が生じ、VRの動きが悪くなってしまう。

一方VRにブロックチェーンを適用すると、スマートコントラクトなどを活用して条件を指定すると、ブロックチェーンのシステムにつながっている複数のコンピューターでレンダリングの作業を分散化することが可能になる。特定のコンピューターのGPUへの付加が一定の水準を越えると、ブロックチェーンのネットワークにある他のコンピューターに作業を分担させるというような条件の設定だ。すると、処理の負担も分散できるので、レンダリングの高速化が実現できる。特にこれは、VRによる遠隔手術など、ミスが許されない現場では不可欠になる。

2)バーチャルオフィスにおける仕事の管理

また、ブロックチェーンはバーチャルオフィスの管理でも大きな力を発揮する。

高速なVRがリアルタイムで実現できれば、本格的なバーチャルオフィスの構築も可能になる。VRの世界の現実と変わらないバーチャルオフィスを作り、そこに人々が集まり実際にあらゆるオフィスワークを行うことができる。

基本的にブロックチェーンとは、ブロック化されたデジタルデータを暗号化し、複数存在する分散台帳に書き込むデータ管理のテクノロジーである。これをバーチャルオフィスに応用すると、勤務時間やオフィスの入出などのデータが確実に記録され、安全に管理できる。

3)不動産の管理

次に、VRの世界における不動産の所有権の記録と管理である。

10年ほど前に大ブームを迎えた「セカンドライフ」だが、VRの世界における不動産の所有と開発という分野を切り開く大きな実績を残した。「セカンドライフ」の不動産開発の生み出す収益で生活する人々も出現した。

しかし、「セカンドライフ」の不動産売買には不安定な要素もあったことはいなめない。それは、VRでは現物として不動産が存在しているわけではないので、バーチャルな不動産の所有権をどうやって安全に保証するかという問題である。もし所有権の確実な記録ができなければ、VRでいくら不動産の売買ができるシステムを開発しても、あまり意味がない。せっかく買ったVRの不動産の所有権が確定できないのだ。この不安を払拭しきれないことが、「セカンドライフ」の弱点であった。

このような状況に、不動産の所有権をブロックチェーンに登記できるシステムがあれば、VR空間であっても不動産の所有権は確実に保証できる。

Next: そのほかに、VRとブロックチェーンがマッチするジャンルとは



4)ショッピングモールの有効な支払い手段

また、「セカンドライフ」の実績のひとつは、VR空間でショッピングモールを建設して、実際のショッピングができるようにしたことである。客がモールの店に入り、VRで展示した見本から商品を選ぶと、製品が実際の店から後で送られてくるというシステムである。

このときの支払い手段は「セカンドライフ」などのVR空間で使える独自の通貨である。「セカンドライフ」の場合は「リンデンドル」であった。ショッピングを楽しむためには、クレジットカードなどを通して事前にこの通貨を購入する必要性がある。そのため、VR空間でのショッピングはクレジットカードを持っていないとできない。

しかしながら、いまだに8割を越える世界の人口はクレジットカードも銀行口座も持っていない。これがVR空間でショッピングを楽しめる人口を制限している。「アマゾン」などのオンラインショッピングサイトと同様に、VR空間のモールはクレジットカードと銀行口座を持つ先進国の人口に限定されたサービスとなる。

もしこのような状況で仮想通貨が使えるのであれば、VR空間のショッピングはこの制限を越えて拡大できる。すでにスマホを介した仮想通貨は、新興国や低開発国でも一般的な支払い手段になりつつある。多くの地元の商店では現金を仮想通貨に換金するサービスを提供しており、これを利用するとスマホのウォーレットに入った仮想通貨でショッピングができる。VR空間のショッピングモールでこうした仮想通貨を使えるのであれば、モールの拡大の制限はなくなる。

ブロックチェーンを導入したVRのプラットフォームであれば、仮想通貨による支払いは問題ない。これが、「セカンドライフ」のようなVR空間におけるショッピングの制限を突破し、拡大させる。これから、カジノ、コンサートホール、アートギャラリーなどサービスの提供をするサイトが増えると、仮想通貨による支払いができると一層便利になる。

5)分散的ストリーミング

VRの急速な発展で、あらゆる種類のスポーツやゲームなど現実と変わらないリアルな体験ができる。もちろんこのためには、データの高速なストリーミングが必要になる。しかしこれらが、中央集権的なサーバの存在に依存している限り、回線速度が遅かったり、サーバへのアクセスが集中したりすると、ストリーミングが中断されてしまう危険性は高い。

これは特に、イー・スポーツなどのVRの対戦型オンラインゲームでは大きな問題となる。VRのイー・スポーツのリアルさは、まさにストリーミングに依存する。しかしこれは、人気が出れば出るほどストリーミングのリクエストは殺到し、サーバの許容範囲を越えてしまうことにもなりかねない。これがVRのスポーツトーナメントなどで発生すると、悲惨なことになる。

こうした状況を回避するために、VRのプラットフォームにブロックチェーンを活用すると、ブロックチェーンのネットワークでつながっている無数のユーザーの間でストリーミングを相互に共有し、いつでも高速で安定したストリーミングを確保できる。

Next: 実際に稼働している5つのプロジェクトを紹介!



すでに稼働しているプロジェクト

これらが、VRにブロックチェーンを導入する効果である。すでにブロックチェーンを活用したプロジェクトがいくつか稼働している。それらを紹介しよう。

●ディセントラランド(Decentraland)

アクセスしたユーザーがコンテンツを自由に作成し、それを販売することのできるプラットフォーム。すでに時価総額は2018年12月の時点で5500万ドルに達している。

「ディセントラランド」はイーサリアムのブロックチェーン上に構築された「セカンドライフ」である。それはVRの巨大な都市空間だ。「セカンドライフ」と同様に土地の購入もできるし、将来の値上がりを期待して土地への投資も可能だ。購入した土地の権利はすべてブロックチェーン上に登記されるので、所有権が確実に確保される。

購入した土地はユーザーが開発し、ショッピングモールや映画館、さらにバーなどを建設し課金サービスを提供することも可能だ。支払いは「ディセントラランド」のブロックチェーンに基づく独自な仮想通貨が使われる。

公式サイト:
https://decentraland.org/

●ヴァイブハブ(VibeHub)

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●キャパシティー(Cappasity)

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●ブロッキー(Blockv)

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●メイトリックス(Matryx)

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あらゆる分野で適用可能なVR

これらが、注目されているすでに稼働しているプロジェクトだ。この他にもいくつかあるが、それは次回の記事に詳しく書く。

ARとならびVRも、ゲーム、映画、スポーツ、不動産、教育、科学、医療などあらゆる分野に適用され、これまでは考えられなかったようなリアルな3Dの体験が可能になるはずだ。特に、ブロックチェーンの活用によって、リアルタイムの高速なストリーミングが安定的に提供できるなら、VRの活用分野は一層拡大することだろう。

また、ブロックチェーンを介してVRと仮想通貨が融合すると、VR空間のショッピングモールにおける安全性の高い支払い手段になる。さらに、投資対象として注目が集まるVR空間における不動産の売買も、所有権の登記がブロックチェーンで行われるので、安心できる。

これを見ると、VRとブロックチェーンの融合もこれから大きな拡大が期待できる分野のひとつであることは間違いない。

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ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』(2019年1月22日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン

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昨年から今年にかけて仮想通貨の高騰に私たちは熱狂しました。しかしいま、各国の規制の強化が背景となり、仮想通貨の相場は下落しています。仮想通貨の将来性に否定的な意見が多くなっています。しかしいま、ブロックチェーンのテクノロジーを基礎にした第四次産業革命が起こりつつあります。こうした支店から仮想通貨を見ると、これから有望なコインが見えてきます。毎月、ブロックチェーンが適用される分野を毎回紹介します。

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