金融庁が「節税保険」を問題視しているという昨年6月のニュースを発端に、今年に入ってから各社動きが出始めました。今後の動きについて、詳しく説明します。(『奥田雅也の「無料メルマガでは書けない法人保険営業ネタ」』奥田雅也)
※本記事は有料メルマガ『奥田雅也の「無料メルマガでは書けない法人保険営業ネタ」』2019年1月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
事業(医業)経営に関する生命保険・損害保険活用術に精通し、過去20数年間で保険提案した法人数は2,500社以上。現在は大阪を拠点として保険代理店経営・保険営業を行うかたわら、年間60回程度の講演や、業界紙・本などの執筆、コンサルティング業務を展開中。著書に『ここから始めるドクターマーケット入門』(新日本保険新聞社)『法人保険販売の基礎』(電子版・保険社)など。
全損商品がこれからどうなっていくのか
金融庁が認可した商品に後からケチをつける理由
もうすでにご存じの方も多いと思いますが、新年に入ってから各社いろいろな動きが出始めておりますので、ここで一度、整理をしておきたいと思います。
まず、そもそもの流れとしては昨年6月にダイヤモンドオンラインでいわゆる「節税保険」について金融庁が問題視しているという報道からスタートし、朝日新聞や日経新聞がその後追加で報道をした「例の件」です。
数名の経営者ならびに保険営業パーソンから「なぜ金融庁は認可した商品に後からケチを付けるのか?」というご質問を頂いたのでまずはここから解説をしていきます。
生命保険会社が顧客から預かる保険料は大きく2つに分類が出来ます。
1つは将来の保険金支払に備えるための「危険保険料」で、もう1つは保険会社の運営上、必要な事業費を計算した「付加保険料」です。
※解約返戻金の仕組みなどを文章で説明するのは無理なのでここでは割愛します。
生命保険会社が金融庁へ商品の認可を行う際には、最初の「危険保険料」だけを提示して認可を取り付ける仕組みになっています。そして事業費を計算した「付加保険料」部分については、何かあれば金融庁が保険会社へモニタリングをするというのが取り決められています。
ですから、金融庁は商品認可時点では「危険保険料」部分しか確認をしていないので、「この保険契約は幾らの保険料を契約者から領収するのか?」は正確には把握していません。
そこで、今回問題になっている法人向け生命保険商品については、途中解約時の返戻金を増やすために「危険保険料」だけでなく「付加保険料」の計算をかなり歪に行っている保険会社があり、これが今回問題になっています。
ことの発端は、某N社が後発で出した全額損金タイプの商品と言われており、この商品における「付加保険料設定」の仕組みを金融庁が把握したことから、全社に対して「事業費モニタリング」を実施する流れになったと聞いております。
昨年の6月頃に全保険会社に対して、法人向けの商品である「長期平準定期・生活障害定期・介護定期・災害保障期間付定期・逓増定期」などについて事業費モニタリングが実施され、その中で問題があると思われた保険会社の商品については、再度10月頃に金融庁からモニタリングがあったと聞いております。
※この流れのなかで、発売をリリースしておきながら延期なった保険会社もありましたが…(笑)。
その中で、金融庁は「その付加保険料計算は是正するように」と個別に保険会社へ指摘をしているらしく、システム対応が間に合う保険会社から徐々に発売停止→訂料(保険料の改訂)、という流れになっている様です。
Next: 発売停止→訂料の動きは、今後どうなりそうなのか?
訂料の動きはこれからも徐々に増えてくる
実際に私が取り扱っている某M社の全損定期は3月いっぱいで売り止めになりますし、某M社の逓増定期保険も3月いっぱいで売り止めになると聞いています。
この流れはこれから徐々に増えてくると思います。
ただご存じの通り、3月決算の法人が多いために、3月末前の販売停止は避けたい保険会社側の意向と一刻も早く歪な保険商品を是正したい金融庁側とでつばぜり合いをしているとも聞こえてきているので、今後はもう少し発売停止をしてくる保険会社が増えそうな気もしております…。
ちなみに付加保険料設定に問題なしとされた保険会社については訂料はありませんので、何も心配する必要はないと思います。今のところは、金融庁と保険会社との「付加保険料」部分におけるやりとりで終わっていますので、根本の「支払保険料の税制変更」という流れにはなっていません。
ただ、あまりにこの流れが長引いて変な方向に行けば、国税庁が動き始める可能性はゼロではないですから、その点は注意深く見守る必要があるかな?と思っています。
※事実、保険業界の重鎮であるS氏は当初、税制変更はないと言い切っておられましたが、ここにきて少し歯切れが悪くなってきました…(汗)。
なお、ご存じの通り国税庁が支払保険料の税制変更を行う場合には、過去の例ではいきなり通達を出すのではなく、生命保険協会に通知をしたうえで、パブリックコメントを出して改訂をしますので、その点はご安心頂ければと思います。少なくとも生命保険協会へ通知してから、実際のルール改訂の発遣は1年程度の時間は要します。
まだ、これを書いている時点では国税庁から生命保険協会へ通知をしたとは聞いてませんので現時点では動きはありません。
あと注意しないといけないのは、あまり保険業界について詳しくない方が「税制変更になったとしても『以後の契約だけ』だから先に売っておけば大丈夫だ」的な発言をしているようです。
これは大きな間違いで、平成20年2月28日の逓増定期と平成24年4月27日の終身がん保険「だけが」以後の契約より新しいルール適用とされており、それ以前は「以後に支払う保険料」というルールで運用されています。
ということは、仮に全損定期の保険料経理処理ルールが変わった時に、「〇〇年〇〇月〇〇日以後に支払う保険料から新しい仕訳を適用するように」という発遣の仕方もあり得ますのでくれぐれもご注意下さい。
繰り返しになりますが、現時点においては国税庁に動きはありませんので最後の部分は参考程度に留めておいてください。
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※太字はMONEY VOICE編集部による
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