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主要な半導体メーカーの90%が導入に、電子産業で活用されるブロックチェーンの現状=高島康司

今回は半導体を中心とした電子産業におけるブロックチェーン導入の概要を紹介する。特に半導体分野では、すでに90%のメーカーが導入に動いているという。(『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』高島康司)

※本記事は有料メルマガ『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』2019年3月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

ブロックチェーンが電子産業の最適な生産管理で活躍

数多くの部品の管理に最適なブロックチェーン

これまで当メルマガでは、あらゆる分野におけるブロックチェーンの適用可能性の概要と、それにかかわる多くのプロジェクトを見てきた。ブロックチェーンのシステムの適用は、予想を越えた早さで進む可能性がある。

これは、半導体を中心とした電子産業でも同様である。いまスマホやタブレットが日常では不可欠なディバイスになっている。支払い手段がスマホに統合され、キャッシュレス化が進むとスマホの重要性はもっと高まることは間違いない。スマホは通信手段とともに、財布やショッピング、SNS、そして動画鑑賞のための統合的な手段になっている。

そして、高度な電子機器としてのスマホは、ナノレベルの極小の無数の部品で構成されている。そうした部品は、半導体のデザインが、「ファーウェイ」の系列である「ハイシリコン」のような中国の先端的な企業によって担われる一方、エッジングと呼ばれる半導体の製造過程は「クアルコム」のようなアメリカの専門企業が担当するというように、サプライチェーンのグローバル化がもっとも進んだ産業分野でもある。

そのような状況では、暗号化されたデジタルデータのブロックを複数存在する分散台帳に書き込むブロックチェーンのテクノロジーは、広い活用範囲を持つ。まとめると、次の5つになる。

1)部品の履歴の管理

これは、電子産業のみならずあらゆる分野の製造業に当てはまるポイントだが、製品が多くの部品でできており、それらがグローバルに分散した生産拠点によって生産されている状況では、ブロックチェーンによる部品の履歴の管理には大きな利点がある。

電子産業のサプライチェーンでは、すでに部品の履歴は厳重に管理され、どんな製品のどんな部品でもその出所を調べることは容易だ。しかしながら、管理は中央集権的なサーバによって行われるため、セキュリティーを確保するために、相当なコストがかかっている。このような状況でブロックチェーンを活用すると、製品の製造に必要なすべての部品をブロックチェーン上に登録して管理できるので、サーバの必要はなくなる。

もちろん分散台帳もコストはかかるだろうが、高度なセキュリティーの確保が必要なサーバよりも、確実にコストは削減できる。

2)部品の厳格な品質管理

電子産業では、それこそナノ単位の部品が製造されている。1ナノは10億分の1メートルのことだ。そうした極小の部品が、世界に分散した異なった生産拠点によって生産される場合、わずかな品質や仕様の違いが大きな問題を発生させる原因になる。これは単に不良品の混入だけではない。無数にある部品の製造にかかわるメーカーの間で、仕様書の理解に相違や誤解があったり、必要な情報が正しく伝わっていないこともこうした問題の原因となる。問題のある部品が一度納入されると、それだけで工場の製造ラインが何日も止まることもある。

もしブロックチェーン上に部品が必要とする品質の細目がすべて記録されていると、そのような問題は発生しにくくなる。また、たとえば熱成型された金属と、射出成型されたプラスチックでは、必要とされる品質の詳細は根本的に異なる。そうした部品の品質に関する情報をそれぞれの部品に対応した独自のテンプレートに記録することができれば、誤解や間違いは生じにくくなる。

Next: ブロックチェーンで過剰在庫や生産不足を回避できる?



3)情報の幅広い共有

生産拠点が世界的に分散し、製品の製造に多くの企業が関与している状況では、納品や出荷される部品の情報を共有していることが重要になる。すでにこれは既存のサプライチェーンでも実現している。

しかし、すべての情報が関係している企業の間で共有されているわけではない。製品の情報はそれぞれの企業が独自に管理しているので、他の企業に有用な情報が共有されてないケースも多い。

たとえば、小売と部品メーカーはその典型かもしれない。最終製品の売れ行きのデータは、年度末にならないと公表されない場合が多い。それはリアルタイムの情報ではない。これが原因となり、部品メーカーは過剰な在庫を抱えるはめになったり、逆に部品の製造が間に合わず、納入できないケースも出て来る。

そうした状況で、もし関係企業が持つ部品毎の幅広い情報がリアルタイムで共有できるなら、過剰在庫や生産不足などの問題は回避できる。たとえば、小売は日々の売上を自動的にブロックチェーンに登録できれば、関係企業は適切な生産計画を立てることができるはずだ。

4)在庫データの共有

特にスマホなどの電子機器の分野では、モデルチェンジのスピードが極端に速い。モデルチェンジがあるたびに、新しく開発された部品が大量に必要になる。

一方、旧モデルの古い部品も一定数は確保しておかなければならない。修理などのためにそうした部品の需要はいつも存在しているからである。しかし、現行のサプライチェーンのシステムでは、在庫管理の繁雑さを回避する必要から、こうした古いモデルの部品まで記録し、他のメーカーとそれを共有するところはめったにない。そのため、自分の在庫にはない古い部品が必要となったとき、その調達先を探すには時間がかかるか、調達できないこともある。

このような状況でブロックチェーンのシステムを活用して、あらゆるメーカーの在庫状況を分散台帳に記録することができれば、古い部品の調達問題は解消される。ただ、もちろんこの場合、競合他社に自社の在庫状況を公開したくないメーカーもあるはずだ。そのような状況を考慮して、ブロックチェーンに記録する在庫データは匿名にすることができる。

5)企業相互のローン

あらゆるメーカーの電子機器を組み立てるEMSのような企業は、一時的に資金繰りに困ることがある。一般的に、EMSに組み立てを依頼している企業の支払いは90日間隔で行われるのに対し、EMSの部品の調達先への支払い間隔は30日だ。この期間のずれから、EMSは組み立てた製品の支払いを受ける前に、部品メーカーへの支払いを行わなければならない。この期間のギャップが原因となり、資金繰りに一時的に困るEMSも出て来る

そのような状況で、もし資金的に余裕のある企業がEMSにローンを提供できれば、この問題は解決できる。EMSにはメーカーとの契約が成立しているので、将来の支払い能力は証明されている。返済不能になる危険性は少ない。また、資金を融通する企業にしても、低利であっても金利収入は利益になる。

こうしたEMSを中心とした企業間の資金の融通をブロックチェーンの分散台帳に記録すれば、安全で信頼性の高いローンの提供が可能になる。

Next: 電子部品の分野でこれから期待されるブロックチェーンのプロジェクトとは?



注目されているプロジェクト

これがいま、発展と成長の著しい半導体を中心とした電子産業で展望されているブロックチェーンの適用エリアだ。最近、大手コンサルタント企業の「アクセンチュア」があらゆる産業分野への聞き取り調査を実施したところ、電子産業の花形である半導体の分野が、ブロックチェーンの導入にもっとも積極的であることが分かった。今後、主要な半導体メーカーの90%がブロックチェーンの導入にすでに動いている。そのため、IBMほか大手企業単位のブロックチェーン導入のプロジェクトが目白押しだ。

このように、すでに大手で積極的な導入が進められており、企業ベースですでに稼働しているものも多いので、今回の記事ではこれから成長が期待される電子産業のブロックチェーン導入プロジェクトを紹介する。もちろん、紹介する範囲は半導体には限定されない。電子産業全般のプロジェクトを紹介する。

●12SHIPS

サムスンが開発したマイニング用コンピュータチップのための冷却システム。

いまブロックチェーンのシステムの拡大によってマイニングが独立したビジネスの分野になっている。そしてマイニングに特化したコンピュータ用のチップとしては、「サムスン」が開発した「ASIC」のチップがもっとも一般的に使われている。「ASIC」のチップのハッシュパワーは大きく、高速なマイニングが可能となる。

しかしながら、最高度のパーフォーマンスを得るためには、効率的な冷却システムがどうしても必要になる。冷却効果が高ければ高いほど、「ASIC」のチップから最高のパーフォーマンスを引き出すことができ、高いハッシュパワーが得られる。

「12SHIPS」は「沈殿式冷却システム」という液体を使った独自の冷却方法を開発し、「ASIC」のチップから最大限のパーフォーマンスを引き出す。さらに、冷却に使われた熱水を都市の暖房システムに供給し、無駄なく使用するシステムも開発した。無駄なく安心できるエコシステムである。

紹介ビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=i-gsMnMEEqk

●クリプトクシジェン(Cryptoxygen)

コンピュータメーカーと協力した仮想通貨の取引プラットフォーム。

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●ビットウィングス(BitWings)

仮想通貨のウォーレットをハードウェアに組み込んだスマホ。

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●エミバ(Emiba)

電子産業が必要とする合成素材を生産する特殊技術の会社。

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●レコーズ・キーパー(Records Keeper)

製品のあらゆるデータをブロックチェーン上に記録するプロジェクト。

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Next: ほかの産業のブロックチェーン導入状況とは…



もっとも急速にブロックチェーンの導入が進む分野

今回は電子産業全般を対象にしたが、なかでも半導体の分野は、すべての産業分野でブロックチェーンの適用がもっとも急速に進んでいる分野だ。2018年9月に公開された大手コンサルタント企業、「アクセンチュア」の調べでは、半導体では実に88%の企業が、3年以内にブロックチェーンのシステムを導入する。いまアメリカ大手の「クアルコム社」や、中国大手の「ハイシリコン社」などの企業では、独自開発のブロックチェーンのシステムの導入に取り組んでいる。

他方、今回紹介した「レコーズ・キーパー」のように、どんな産業分野の企業でも使える汎用性のあるシステムを提供しているところもある。次回はそうしたものを中心に紹介する。

ちなみに、以下が「アクセンチュア」の調査で明らかになったブロックチェーンの導入に積極的な分野だ。数値は3年以内にブロックチェーンの導入を計画している企業の割合。

1)半導体 88%
2)航空と国防産業 86%
3)産業機器 85%
4)生命科学 85%
5)小売 85%
6)保険 84%
7)ソフト開発 84%
8)自動車 82%
9)化学 81%
10)通信 81%

これがブロックチェーンの導入に積極的な産業分野だ。これを見ると、いま急速にブロックチェーンの導入があらゆる分野で進んでいることが分かる。

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ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』(2019年3月5日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン

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昨年から今年にかけて仮想通貨の高騰に私たちは熱狂しました。しかしいま、各国の規制の強化が背景となり、仮想通貨の相場は下落しています。仮想通貨の将来性に否定的な意見が多くなっています。しかしいま、ブロックチェーンのテクノロジーを基礎にした第四次産業革命が起こりつつあります。こうした支店から仮想通貨を見ると、これから有望なコインが見えてきます。毎月、ブロックチェーンが適用される分野を毎回紹介します。

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