私たちが住宅を買うときに住宅ローンを組むと、通常は金利を支払います。しかし、マイナス金利だと逆に利息がもらえることに…この仕組みについて解説します。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)
株式会社銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。
住宅ローンがマイナス金利になるとインフレが起こる
金利がマイナスになるとは、どういうことなのか?
私たちの多くは住宅を買うときにお金を借ります。
代表的な住宅ローンはフラット35で、これは日本の10年物国債の金利などを参照に、利率を決めているといわれています。
現在のフラット35の金利水準は1.27%からということになっていますが、もしこの金利がマイナスになればいったいどのようなことが起きるのでしょう。
金利がマイナスになるということは、借りる側、すなわち私たちが逆に利息をもらえるということです。
例えば皆さんが3,000万円の住宅ローンを組んだ場合、総返済額が2,800万円で済むというイメージです。このインパクトは結構大きいと思います。
借りた額より総返済額が少なくなりますので、とにかく「借りたモン勝ち」です。
現金の残高を維持したまま、多くの方はめいっぱいのローンを組むことになるでしょう。
その結果、住宅の購入は促進されますし、ローンの支払額が減る分、国民は消費を増やそうとするでしょう。
これをさらに拡大すれば、いったいどのようなことが起きるのでしょうか。
つまり住宅ローンの金利だけではなく、日銀が民間の銀行に対して、マイナスの金利で融資を行うということです。
その場合、例えば民間の銀行が企業に行う融資も、マイナス金利の貸し出しとなるかもしれません。
企業側は借りれば借りるほど、銀行から逆に利息をもらえますので、先ほどの住宅ローンと同じく、「借りたモン勝ち」状態です。
Next: 日銀が民間の銀行にマイナス金利で融資をしたら、何が起こるのか?
賃金上昇、消費拡大、インフレへの好循環へ
企業は借りたお金で積極的に設備投資などを行いますので、波及的に他の企業の売り上げも増え、時間の経過とともにやがて賃金の上昇⇒消費の拡大⇒インフレへの好循環が始まるかもしれません。
もっともこれは分かりやすく説明するための極端なお話で、実際には住宅ローンがマイナス金利になるほど、日銀はマイナス金利貸し出しを深堀りするとは思えません。
私たちにとって、せいぜい住宅ローンの利息が今より少なくなる程度にとどめることでしょう。
それでもそのインパクトは無視できません、わずか零点数パーセントの金利低下でも、総支払額は数百万円の単位で節約できる可能性がありますので。
住宅ローンだけではなく、民間銀行から企業に対する融資の金利も下がりますので、社会全体でみるとその効果は絶大です。
日銀はあらゆる市場にマネーを供給する元締めですから、その蛇口部分でマイナス金利を適用すれば、上記のように緩やかなインフレへの誘導に成功するかもしれません。
上記は最近ささやかれ始めた「日銀のマイナス金利貸出」の基本的な考え方です。
日銀はすでにバランスシートを拡大しつくしていますし、民間銀行からの受け入れ預金(「日銀当座預金」)に対し、一部マイナス金利を適用しています。
注)これは先ほどの「マイナス金利貸し出し」ではなく、逆に日銀が借りる側になる場合の金利です。
景気の後退懸念から、アメリカ(FRB)とヨーロッパ(ECB)は、再度量的緩和や利下げにむけて舵を切り始めましたが、日銀はすでに政策を総動員しており、従来の量的緩和と低金利政策をこれ以上拡大することは困難かつ危険でもあります。
ですから今回お話しした「マイナス金利貸し出し」は、日銀にとって、選択肢になる可能性はあると思います。
ただしその影響の大きさから考えて、もし実行に移すなら、よほど慎重に事を運ぶ必要があるでしょう。
『一緒に歩もう!小富豪への道』(2019年4月4日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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