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「まず行動すべきは日本銀行」11/30黒田総裁の注目発言を考える

黒田日銀総裁は11月末、名古屋での経済界代表者との懇談における挨拶で、「デフレという状況を打破するには、誰かが断固たる決意を持って物事を変えなければなりません。そしてそれが、物価の問題である以上、まず行動すべきは日本銀行です」と発言しました。

今後、日銀の追加緩和に期待できるのか、できないのか?投資信託に精通しSEの経歴を活かしたツール提供を行うのりたま氏が分析します。(『毎月分配投信の本当のこと のりたマガジン』)

「異次元緩和」第3弾の行方は?最近の気になった要人発言

黒田総裁「まず行動すべきは日本銀行です」

まずは、黒田総裁の注目発言の確認をします。ブログでも少し取り上げましたが、意外な発言にちょっと混乱しました。
(11/30)【挨拶】黒田総裁「最近の金融経済情勢と金融政策運営」(名古屋)[PDF]

賃金が上がるペースをみながら物価の上昇に向けた手を緩めたり早めたりするということを意味しません。

物価目標の実現をゆっくりやっていれば、賃金の調整もゆっくりになるだけです。これは結局は、「卵が先か鶏が先か」という問題であって、デフレという「竦み(すくみ)」の状況を打破するには、誰かが断固たる決意を持って物事を変えなければなりません。そしてそれが、物価の問題である以上、まず行動すべきは日本銀行です。

物価基調が上昇するなかで、出遅れているのは賃金であるのが現状です。

政府などからも企業側へ要請する場面を多く見られていることはもちろん、日銀としても追加緩和で無理な物価上昇を避けているように感じていたところで、次は企業側だという流れになっていたと思います。

そんなところへ、「まず行動すべきは日本銀行です」とはどういう意味でしょうか?

これまで先行して物価を上昇させてきたことを言っているだけなのか、賃上げとのバランスなんて考えすぎてもしょうがないから、賃上げをまたずに日銀が何か行動するということを示唆しているのか?

物価目標の達成時期を遅らせるだけで何もやっていない日銀なのに、やっていることと、言っていることが違うのでイマイチ理解できません。話の最後の方はこのように言っています。

実際に2%の物価安定が実現した場合、デフレ期の考え方で投資や雇用の判断、価格設定などを行っていた企業は、競争に出遅れ、不利になります。労働需給や企業収益など賃上げの環境は既に十分に整っているとみていますが、この先2%の物価上昇を前提として、それにふさわしい賃上げを実現していくのは、まさに労使の役割です。

今、インフレマインドに転換しないと手遅れになると焦らせ、環境は整っているのだから早く賃上げすべきと言っているように思います。

結局、これが言いたかったがための前フリだったのかなと。話のしかたとしてはとてもうまいです。(^_^)

とりあえず私としては、演説用の言葉だけであって特別な意味はなさそうだな、という程度で受け止めておきたいと思います。

ただ日銀にはメッセージ性が欠けていると思っていたので、少しはいい話をしてくれたとは思います。もっとそういう意識で日銀の声明を発表してくれるといいのですが。

Next: 「すでに」日銀は行動している~黒田総裁の講演後の記者会見


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「すでに」日銀は行動している~黒田総裁の講演後の記者会見

講演後の記者会見内容も公表されていましたのでチェックしておきます。
【記者会見】黒田総裁(名古屋、11月30日)[PDF]

(質問者の問い)
10月末の決定会合では、2%の物価安定目標の達成時期を半年後ずれさせたにもかかわらず、政策は据え置かれた。その行動と、今回ここでおっしゃっている早期実現のために必要と判断すれば躊躇なく対応するとおっしゃっていることとの関わりがちょっと分かりにくい部分があるので、どういう意図なのかを教えて頂きたい

まさに私が思っていたことをズバリ質問してくださっています。

現在の「量的・質的金融緩和」を継続していくことで、いわば累積的に緩和効果が効いてくるわけですが、それを着実に進めることによって、2%の「物価安定の目標」を早期に実現できるという確信を持ったことから、引き続き「量的・質的金融緩和」を遂行していくという決定に至ったということです

やっぱり思った通りで、何かあるというわけでもなく、今、実施している量的緩和を継続させているということ自体、日銀が「行動」しているということなのでしょう。

岩田副総裁からも注目発言が

他にも関係者による講演があったようなので掲載しておきます。
(12/2)【挨拶】岩田副総裁「最近の金融経済情勢と金融政策運営」(岡山)[PDF]
【記者会見】岩田副総裁(岡山、12月2日)[PDF]
少しだけ抜粋。

原油価格の変化で物価安定目標の達成が少し後ずれすることは許容するというのが、先進国の多くの中央銀行の、あるいはその先進国の人たちの、共通の理解だからだと思います。

これは注目発言です。原油下落はしょうがないので達成時期の後ずれで対処すればいいし他国も同じ理解?まぁわからなくもないけど、こんなにハッキリ言っちゃっていいの?(^_^; 追加緩和はしないと断言しているようなものです。

量的緩和の効果に懐疑的な木内審議委員の意見も要チェック

【講演】木内審議委員「『量的・質的金融緩和』再考」(資本市場研究会)[PDF]
現在の量的緩和を縮小すべきと主張する木内氏の講演ですが、その理由などが述べられています。詳細は省略しますが、少数派の意見はとても貴重なのでよろしければチェックしてみてください。

【関連】黒田総裁の説明に疑問符。本当に異次元緩和で物価は上がったのか?=久保田博幸

【関連】黒田総裁の胸中は?「2期連続マイナスGDP」と「日銀現状維持」の分析

毎月分配投信の本当のこと のりたマガジン』(2015年12月6日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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