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池袋暴走事故で「上級国民」批判が爆発、日本社会の格差と理不尽さに庶民が怒りだした

池袋暴走事故に関して、事故を起こした加害者が元高級官僚であることから、その後の加害者に向けて「上級国民」という言葉が投げかけられています。

警視庁は証拠隠滅の恐れがないと判断、男性を逮捕せず任意で捜査を進めるとの報道を受け、ネット上では「上級国民だから逮捕されないのではないか?」という意見が飛び交っているようです。(『らぽーる・マガジン』)

※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2019年4月22日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

逮捕されないどころか「さん」付け報道。これは上級国民の特権?

日本社会は「平等」か

上級国民」という表現があるようです。いまツイッターなどSNS上で話題となっている言葉ですが、ネットでその意味を調べてみますと、

「一般国民」と対をなす言葉として用いられている

…とあります。

日本国憲法第14条では、法の下の平等と貴族の禁止が規定されています。あらためて
条文を読んでみましょう。

日本国憲法第14条

すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴わない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

あらためて読むと、「平等」という言葉が強烈に飛び込んできますが、現代社会においては「上流階級」とか「上位層」なんて言葉が日常に溶け込んでいるように思えます。

富裕層」とか「セレブ」となると、経済的優位な立場を表すものですが、それはそこに至るまでの「努力」というものも介在する場合があるので、一概に批判対象として用いられる「上級国民」の概念とは一致しないところもあります。

ただそこに至る過程において、何らかの特別な配慮優遇があるとしたら、それは地位や環境から得られる特権(そんなものがあるのかどうか)を利用したものとして、いま話題になっている「上級国民」に該当するのでしょう。

「格差」と「差別」は違う

差別の裏には「アンフェア」があり、社会はアンフェアの塊で、アンフェア社会を生き抜く知恵をつけることが大事ですが、法律や税制等に関してのあからさまなアンフェアは我慢ができない、そんな思いが「上級国民」という言葉には含まれているようです。

池袋で起こった87歳という高齢者の暴走運転による痛ましい事故に関して、事故を起こした加害者が、元高級官僚であることから、その後の加害者に向けて、この「上級国民」という言葉が投げかけられているようです。

警視庁は証拠隠滅の恐れがないと判断、男性を逮捕せず任意で捜査を進めるとの報道を受け、ネット上では「上級国民だから逮捕されないのではないか?」という意見が飛び交っているようです。

Next: 逮捕されないどころか「さん」付け報道。これは上級国民の特権なのか?



「上級国民」と呼ばれるだけの経歴

加害者である87歳男性は元通産省官僚工業技術院の元院長だったそうです。

工業技術院とは、経済産業省による特別な機関で、ネット上のデジタル大辞泉の解説をそのまま引用しますと…

鉱工業の科学技術に関する試験研究、計量標準の設定、日本工業規格(JIS)の制定などを行った行政機関。昭和23年(1948)工業技術庁の名称で商工省に設置、同27年改称。通商産業省の外局を経て、平成13年(2001)廃止。一部業務は独立行政法人産業技術総合研究所に吸収された。

とあります。憶測ですが、旧通産省から天下ったのでしょうかね。

ネット上では、87歳の加害者に関して、農機大手クボタの副社長も務めていた人で、平成27年には叙勲・瑞宝重光章を受章している「上級国民」となっています。

逮捕されないどころか「さん」付けで呼ばれる待遇に違和感をおぼえているという表現が多いようです。

ツイッターでは批判の声も

Twitter上では下記のような気になるものがあります。

日本社会は理不尽だ

これだけ「上級国民」が叩かれるのには過去の例があるようで、ネット上では、2013年に元首相の孫と結婚した著名な女子アナウンサーが、また2018年には元東京地検特捜部長の弁護士が、それぞれ乗用車を運転し死亡事故を起こしたものの逮捕されませんでした。

またその一方で、2018年に軽トラックを運転し死亡事故を起こした、今回の運転者と同じ87歳の男性は逮捕されたことなどが例示されるなどして、議論となっているようです。

社会がアンフェアであることはわかりますが、理不尽であることは納得できないのでしょう。

Next: 上級国民と一般市民に「分断」される社会。反エリート思想は世界に拡大中



上級国民と一般市民に「分断」される社会

この「反エリート」思想が政治の世界で見られたのが、米大統領選挙「ヒラリー・クリントン氏 vs ドナルド・トランプ氏」です。

トランプ陣営は、ヒラリー・クリントン氏をエスタブリッシュメント(支配者層)の代表と位置付け、それまで「虐げられた」階層と公言する中間白人層の支持を得たとされています。

これ以降、政治はポピュリズムに走り、欧州では移民排斥運動に発展し、ポピュリズム政党の台頭が目立つようになりました。

「分断」。

これが新しいキーワードになっています。

上級国民批判の背景は「世代間の分断」

ヒエラルギーによる分断、都会と地方の分断など、様々な場面で見られますが、今回の池袋の自動車事故に関しては、若者層が声を上げて「上級国民」を非難しているようで、その背景には「世代間の分断」があるという指摘もあります。

社会保障において、今の若者が高齢者を支えているにも拘らず、職や生活面等で報われない若者達の目から見て、裕福な、あるいは高齢者だからと優遇されている現状が許せないのではという分析です。

もちろん若者が抱いている感情が客観的に見て正しいと思えないところもありますが、この世代間の分断が発展していく先に見える世界の恐ろしさを、どうしても危惧してしまうのです。

こんなところにも「分断」のタネが潜んでいるのですね。

テレビ報道では高齢者の運転に関する話題が中心で、75歳以上の人の運転免許証自主返納率が4.7%であることが問題視されています。

このような「上級国民」への怒りや世代間の分断の恐れは、ネットだから取り上げられる話題であり、地上波では取り上げられないもので、池袋自動車事故とは直接関係ないですが、別の角度からテレビ報道のあり方を問いたいところではあります。

池袋の痛ましい自動車事故を、違った角度から見てきましたが、今後、反エスタブリッシュメント(支配者層)の動き分断の流れは、大きく加速することが危惧されてなりません。

ひょっとしたら、それが「令和」の時代なのかもしれませんね…。

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らぽーる・マガジン』(2019年4月22日号)より一部抜粋
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