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企業不祥事はなぜ増加する?ピンチを投資チャンスにする、7つの実例=山崎和邦

近年、企業不祥事が増加傾向にある。データの改ざん、不適切な会計処理など、日本の企業が不正に手を染める背景とそのピンチを投資チャンスに変えた例を紹介。(山崎和邦)

※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2019年5月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

企業不祥事は実際に投資機会となるのか

日本は工業大国として岐路に立っているのかもしれない

──投資家としてここから学ぶものは何か?上記の仮題は筆者付す。

日立製作所と系列10社が、外国人技能実習適正化法に関し違反があるとして国の機関から改善指導を受けていた。日立といえば、財界総本山・経団連の会長を輩出しているだけに反響も大きかった。しかし、日本の大企業でこうした問題点を抱えている企業が最近、急速に目立っている

ここ1~2年に企業不祥事で名前の挙がった企業を並べてみると、商工中金、日産自動車、富士ゼロックスの販売会社、神戸製鋼所、東芝、三菱自動車、東レ、シャープ、三菱マテリアル、マンション工事の杭打ち工事で旭化成子会社の旭化成建材と工事に関わった三井住友建設、日立ハイテクノロジーズ、電通の違法残業、東洋ゴム工業、タカタ等々きりがないほどだ。

(*筆者註;ここに嶌信彦氏が列挙したほかにKYBがある。過去においては、大事件となって懲役2年6月が3人出たオリンパス粉飾事件、即刻上場廃止になった西武鉄道、性質は違うがメキシコ湾の事故で1兆5千億の賠償金を払ったブリティッシュ・ペトリアム(BP社)があった。筆者が、それらに対して如何に動いたか、旨くやったか、失敗したかを実例で略記する)。

いずれも検査データの改ざん、無資格の社員による完成車検査38種、不適切な会計処理、架空売上と利益水増しの粉飾、性能に関するデータ改ざんなど、その内容も多種多様を極めている

日本はなぜ、モノづくり大国ではなくなってしまったのか

日本はモノづくりにおいては世界一の評判をとっていた国である。手先が器用で勤務態度が真面目で、納期に遅れることなく商品を納入し、出来上がった製品の質も折り紙つきといわれるほどだった。

1980年代には、その日本のモノづくりの秘密を研究しようとしてアメリカの大学で講座まで設けられたほどだった。60年代頃までは、日本の製品にそれほどの評判はなく、アメリカの大手自動車メーカーは、日本車を買って全て分解し自社製品と比べる実験をしたが、当時は「まだ日本車は恐れる必要なし」という結論だった。

それが高度成長期に入り、各社が次々と研究投資を行ない、最新の設備投資を導入するとともに、社員教育に力を入れ海外に研修生を派遣するようになってからメキメキと実力を上げ、良質で廉価な商品を作るようになってきたのである。70年代に入ると日本の輸出品は世界で飛ぶように売れ、アメリカとは貿易摩擦が日常化するまでに至った。日本は世界一のモノづくり大国と呼ばれるほどになったのだ。

ところがバブル経済崩壊後の90年代後半から様子がおかしくなった。多分、多くの企業はいつでもかつてのように良質で廉価な商品を作れると自信を持っていたが、日本が油断をしている隙に韓国、台湾、東南アジア諸国や中国がどんどん力をつけ日本のライバルに成長してきていたのだ。いまや労賃などのコストは新興国の方がずっと安いし、商品も日本品を研究してひけをとらないものを作るようになっているのである。

アメリカ、EU、北欧などの先進国は第5世代(5G)の先端通信機器を次々と考案し、新産業革命ともいうべき新しい工業製品を作り始めた。その間、日本は5Gと産業の融合に遅れをとり、特に中国企業がメキメキと力を伸ばして日本の市場を浸蝕しているのが実情だ。

国も企業も個人も余裕が出てくると、かつてのような熱気を失い油断してしまうのが常だ。今の日本はそうした坩堝に落ち込んでしまったのだろうか。安倍首相は世界各国を廻り、外交面では評判がよい。しかし、日本の技術、環境、留学生、研究開発とその論文等の分野ではどんどん国際的地位が低下している現実もあるのだ。少し大げさにいえば、工業大国として岐路に立っているのかもしれない。

筆者の長年の友でジャーナリストである嶌信彦氏(2019年4月19日 vol.140より)

Next: 企業不祥事で取引した際の成功例と失敗例を紹介



企業不祥事から投資家として何を学ぶか──筆者が実行した7つの事例

昔から「事件には買い向かえ」「天災は売るべからず」と言われてきた。これは弱みを叩くなという士道などから来るものではない。単純明快な利益獲得動機から言われるものである。筆者自身がこれを実践してうまく行った例とうまく行かなかった例とを簡単に列挙したい。

<1:東芝の例 ※当メルマガで何度も触れたので要点だけ略述>

東芝の事件は技術や現場に問題があったのではなく、ノルマ意識の重圧に耐えられなかった幹部の粉飾数字が元だった。したがって、万が一上場廃止になっても現場や技術は動いているのだから再上場されればそれなりの企業価値は評価される株価が生まれるはずだと考えた。後述するオリンパスも全く同じ理由で買った。東芝の場合は、2兆円で半導体部分を売却するという具体的な売り先と売却値段が持ち上がった。

2兆円を発行株数で割ると一株435円になる。そこで筆者は250円以下171円まで本気で買い下がった。この時は稼働資金の半分以上を投入した(155円という半世紀ぶりの超安値の示現は16年2月12日のキューバ共和国への旅行中に知ったが、時差が14時間あるので直ちに買い注文を出したら日本では翌々日の月曜日となって171円になってしまったという経緯がある)。

事実、東芝は2月の155円から当年の12月には計算通りの435円を示現してその上の445円まで進んだ。もちろん「売りは早かれ」を金科玉条とするセッカチな筆者のことだから、380円ぐらいでは全部売り切った。このことは本稿で既述したが買いの動機と何度でも買い下がった事実と「売りは早かれ」の実践とが含まれている行動だから改めて述べた。

<2:オリンパスの例>

2年半の懲役を3人輩出したというほどの大掛かりな粉飾決算だというだけであって、内視鏡の技術は世界一、そのシェアも世界一ということには関係がない。

そこで2,000円のものが粉飾発覚と同時に1,000円まで暴落したが、1,000円割れから500円までを買い下がった。平均買値から約2倍になったので売ったが、売らないでいれば最安値から10倍以上になった。しかし、一定の目的を達する値段で売った場合はその後に後悔はない。「頭と尻尾は猫にくれておけ」と言うが、筆者はいつでも猫にくれるほうがずっと大きい。だが、後悔はしない。

<3:西武鉄道の例>

次に古い話しだが、もっとも単純明快な判断である。西武は堤代表が株主構成の大きな嘘を発表し続けてきたので東証が怒って直ちに上場廃止を決めた。

しかし、事業は順調に進んでいる。現に筆者はその西武鉄道で週一回、大学へ3科目の講義に行く。企業体としては順調に存続しているのだ。故に主幹事証券も西武本社自身も再上場を図るだろう。そうなれば、しかるべき株価として生まれるはずである。こう判断して平常時の株価の4分の1以下になったところを本気で買い、またナンピンして買い下がった。8年以上も待たされたが、再上昇した時に買値から2倍半で全部売却した。例の通り、もう少し待てば4倍にはなった。

<4:英BP社の例>

次に英BP社は、40ドルぐらいしていた大英帝国の名門会社がメキシコ湾でタンカー事故を起こし、オバマ大統領に1兆5,000を賠償金にとられた。

株は暴落した。これは「天災」ではないが「売るべからず」だし、「事故には買い向かえ」の格言通り、(損害保険制度は英国で生まれた。その英国の名門会社が損害保険をかけていないはずはないから)、直ちにほぼ前の値段に戻った。そのプロセスで全部売り切った。

<5:KYBの例>

もう1つの例、KYBは免震装置の欠陥で株価が何分の一にもなった。

本来この会社は油圧機器の名門で世界的メーカーであり、この会社がなければ全ての自動車は存在しない。建築物の免震構造などというものは、この会社にとって微々たるものでしかないし、決定的な欠陥が生じたわけでもなくデータの改ざんである。よって「ここから下値は買い下がろう」と決めて2,410円を打診買いした。

そしてナンピン買いの機会を待ったが、そこから日経平均は大幅に下がっても2,410円以下は再び来ることはなく、約2~3割株価は戻って、そこを維持している。

<6:失敗例としてタカタの例>

これはアメリカで起こった事故だ。アメリカは車検制度がない。そこで起こった事故だから、本質的なものかどうか判らないという判断で(メカに詳しくない筆者のことだから、その判断に確信があったわけではないので)大量には買わなかったが買い始めた。ところが株価は止めどなく下がり筆者の想定と違ってきたので損切りして投げた。

ここで言えることは、1:東芝における具体的な株価算定・2:オリンパスにおける確たる技術力、世界に冠たるシェア、3:本業は順調だが社長が嘘を言っていたから上場廃止になった西武、4:「事故には買い向かうべし」の格言通りの英BP社、5:主力商品とは別の部門の不祥事は軽視するというKYBについての考え方、これらの判断は正しかったとしよう。

ところが根拠もないのに「車検制度がないアメリカで起こった事故だから無視する」という判断は間違っていた。間違っていた判断は直ちに損金としてのペナルティが掛かるということである。しかし、投げなければ株はタダになった。

<7:サンバイオの例>

最近の例である。サンバイオは実験失敗の発表でストップ安を演じた。

こういう企業は実験失敗の発表でストップ安をし、成功の発表でストップ高をする。いずれもその発表寸前に賑わって買われていたか、失望売りが出ていたか、による。津男メルマガで2、3回述べた「風船の例」である。

サンバイオは、ビジネスモデルは真摯であると筆者は見ていたし、「ストップ安比例配分が続いた後の完全合致を買えば概ねは短期間で大幅値上がりする」というアノマリーを信じているから、よほどの悪質な事件でのストップ安でない限りは完全合致には買い向かう。

失敗したのは2000年春の光通信の例だ。セミナーでは計算書と罫線を示して詳述した。サンバイオの例はうまく行った。こういう企業は、実験に失敗したと発表すれば大幅安をするし、実験に成功したと発表すれば大幅高するものだ。

そこで図に乗って、再びの安値を買って「窓埋めまで上がる」を信じて2,831円の買い玉を3,780円の窓埋めの指し値で売り切った。(その後は例によって、筆者の売値を1,000円も大幅に上回った。筆者はほとんど常に「猫にくれてやる」方が大きい。が、そこに後悔や悔しさは寸毫もない。空売りではないのだから、売った後は自分と無関係だからだ)。

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第1部;当面の市況

第2部;『令和時代の株式投資』、「1億円以上の投資家」「ツワモノ」「一般投資家」の三者に対する日経ヴェリタス紙の1千人のアンケートの要約

第3部;中長期見通しと長期投資と、中央銀行への政治圧力の問題

第4部;消費増税と政局と市況

第5部;消費増税と政局と市況

第6部;企業不祥事と投資機会の実際

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※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2019年5月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2019年5月14日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。

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