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本格下落前の一服か?景気の概況は「回復」維持で、このまま消費増税突入の見込み=馬渕治好

今週の日経平均の予想レンジは2万700~2万1,300円。世界の主要国企業の景況悪化が進み、日本の消費者心理も悪化しているものの、週末までは材料なしで動き一服。(『馬渕治好の週次メモ「時の花」』)

※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週次メモ「時の花」』2019年5月27日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。市場急変時には号外の配信もあります。

馬渕治好の週次メモ「時の花」2019/5/27号より

日経平均:今週末まではおおきな材料なく、下落相場前の一服

<今週(2019/5/27~5/31)の日経平均予想>

2万700~2万1,300 円
(先週の予想:2万900~2万1,500円)
(実績値:2万922.00~2万1,430.06円)

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

先週発表された、5月分のドイツIFO指数(4月99.2→5月97.9)を含め、欧米諸国等世界の主要国で企業の景況感悪化が進んでいる。米中通商交渉は、妥結にせよ決裂にせよ、すぐには結果は出ず、長期膠着状況に陥ると見込まれる。ブレクジットの先行きも不透明で、こうした極めて不透明な環境下では、一段と(中国のみならず)世界の企業の業況感は悪化し、設備投資等の計画も委縮するだろう。「世界経済の悪役は中国だけであって、中国で大規模な経済対策が打ち出されるだろうから何の心配もない」といった楽観論は、打ち砕かれるものと懸念される。

そうした世界的な企業行動の委縮は、日本では資本財を中心とした輸出の減退(4月の輸出金額・数量ともに前年比減で、金額は5か月連続、数量は6か月連続の前年比マイナス)に表れている。また、日本国内の設備投資の先行指標とみなされる機械受注(船舶・電力除く民需)は、1~3月は前期比で3.2%減少となった(内閣府の調査では、4~6月は前期比15.7%増が見込まれているが、世界的な環境の不透明化で、実際には未達になると予想する)。

こうした資本財中心の売れ行き悪化が、鉱工業生産を抑制しており、これまでのところ、生産をカットしながら在庫が増えるという、最悪の傾向が続いている。5/31(金)に発表される4月の鉱工業生産統計で、単月の生産が多少戻っても、これまでの生産減少傾向を覆すほどでなければ、外需製造業企業の株価は圧迫されるだろう。

一方内需については、消費者心理を測る消費者態度指数も悪化傾向が続いている。5/31(金)公表予定の5月の数値が注目されるが、5月の月例経済報告では政府は若干の景況判断の下方修正を行ないながらも、景気の概況が「回復」との表現は変えておらず、このまま消費増税に突入すると見込まれる。とすれば、消費関連中心に内需株も買いづらい展開へと進もう。

今週末までは、それほど大きな材料がないため(米国株式市場も5/27(月)はメモリアルデーで休場)、国内株価は大きくは荒れず、落ち着いた推移だと見込むが、それはこれから生じる下落相場の前の一服に過ぎまい。

為替:円だけの一強状態に移行

<今週(2019/5/27~5/31)の米ドル円相場予想>

108.70~109.60 円
(先週の予想:109.30~110.40円)
(実績値:109.27~110.68円)

米ドル/円 日足(SBI証券提供)

日米首脳会談が5/27(月)に行なわれるが、共同声明の発表はないと公表されており、トランプ大統領も日米通商協議の詳細を詰めるのは夏の日本の参院選後だと語っている。すぐに米ドル円相場を大きく動かすような材料は、表れにくいと考える。

ただ、足元の市場は米中間の交渉ばかりに注目しているが、日米間、米欧間でも、今後米国からの要望は強まっていくだろう。あからさまに米ドルを安くせよ、といったような要求が米国から寄せられるとは想定しがたいが、為替条項の通商協定への盛り込みなど、米国が米ドル高をけん制する動きは積み上がっていくものと想定される。

米国経済の減速(さらには後退)や、それに伴う企業収益の悪化により、米株安・米社債価格安が生じ、それが米ドルを押し下げる、という流れも(すぐではなかろうが)見込まれる。既に先週は、これまで円以外の非米ドル通貨に対して堅調だった米ドルが、じわじわと弱含む動きを示し始めており、次第に米ドル・円の二強状態から、円だけの一強状態に、為替相場は移行すると予想している。

Next: 2019年の投資額の見通しは?



2019年の投資額は前年比0.3%の若干増の予想だが…

【今週の一枚】

IMF(国際通貨基金)のデータで、世界の投資額(設備投資、住宅投資など)の伸びをみると、2009年はリーマンショックによる世界経済のマイナス成長で、投資も大きく落ち込んだ。

それに対して2016年は、実は世界全体の実質経済成長率はプラスだったが、投資額は減少した。これは、同年初からの世界同時株安や6月の英国の国民投票などで、経済環境についての不透明感が大きく広がり、企業が必要以上に投資を抑制したためだと推察される。

2019年の投資額は、今のところ若干増(0.3%増)が予想されている。しかし、米中通商交渉やブレクジットを巡る不透明感が台頭し、主要国の企業心理は幅広く悪化しているため、今年も投資額が減少する恐れが強い。

こうした(中国のみならず)世界的な投資抑制は、世界各国にとって自国の景気抑制要因となるが、特に日本経済・日本株が大きな打撃を受けると懸念される。というのは、2018年年間の日本からの輸出額をみると、最もウエイトが高いのは自動車・自動車部品を中心とする輸送用機器で、23.2%を占めているが、一般機械(20.3%)、電気機器(17.4%)のウエイトも高い。以前は電気機器といっても、AV機器を中心とした家電など、家計向けも多かったものの、今は機械・電機のなかでは、工作機械、プレス機械、半導体製造装置、産業用ロボット、建設機械や、それらを支える機械部品、電子部品といった、企業の設備投資・建設投資関連が主力となっている。このため、世界的な企業投資の減退は、日本からの輸出を直撃し、日本の輸出主力株の株価を押し下げるだろう。

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馬渕治好の週次メモ「時の花」』(2019年5月27日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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