22日、菅野完が強制わいせつ未遂容疑で書類送検されて話題になった。事件発生から書類送検まで7年かかった理由と合わせて、この問題の核心を考えたい。(『世に倦む日日』)
※本記事は有料メルマガ『世に倦む日日』2019年5月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
被害者はもう1人?強制わいせつ「未遂」とは言い切れないワケ
安倍首相批判のジャーナリストが書類送検
5月22日、作家の菅野完(すがの たもつ)が強制わいせつ未遂容疑で書類送検されたと報道され、ネットの中は1日中この問題で持ちきりとなった。
早朝に時事が一報を出し、これで止まると思っていたら、その後、Yahooのトップに出てリアルタイム検索の1位となり、共同の記事が出て、TBSのワイドショーまで続くという大きな騒ぎとなり、ツイッターでは話題沸騰となって熱が冷めないまま1日が暮れた。
思っていた以上に一般の関心が高いことに驚かされる。3年前に週刊金曜日が告発したときも、2年前に民事の一審判決が出たときも、さらに昨年、週刊現代が、米国警察が菅野完に逮捕状を出して指名手配中である事実を暴露したときも、これほど大きな騒動は広がらなかった。
やはり、警察が動いて刑事事件となった点の意味が大きく、世間の反応を引き起こしやすいのだろう。
最初に、事件発生から書類送検まで7年かかった問題について、私の理解している範囲で解説を加えたい。
事件発生は7年前、なぜいま?
ネットでは、特に菅野完を擁護する声の多い阿修羅掲示板などで、この時期に警察が書類送検し、それをマスコミが報道したことについて、官邸による反安倍潰しの謀略ではないかという陰謀論が囁かれている。
いかにも阿修羅掲示板らしい素朴な反応だが、それは無意味な妄想にすぎない。
7年という時間は確かに長すぎて不自然だけれど、被害届が出されて受理されたのは2016年6月であり、告訴状の手続もその後だから、正式に刑事案件となってからの時間は3年弱である。
3年間、警察はこの事件を捜査し、結論を得て書類送検に踏み切ったことになる。無論、3年という時間も、事件の性質や規模からして、常識で考えれば長すぎるのだけれど、そこには刑事(司法上あるいは行政上)の論理と理由がある。
それは、民事の最終決着を待っていたということだ。民事訴訟は2015年12月に提起されている。一審判決が出たのが2017年8月で、損害賠償金110万円の支払命令が出されたが、菅野完が判決を不服として控訴する。2018年2月に高裁が控訴を棄却、菅野完は上告を断念し、判決が確定して民事裁判は決着した。そこから1年ほどしか経っていない。もし仮に、民事で争っている二者が途中で和解すれば、そこで告訴も取り下げられることになる。警察はこの件で御役御免となる。
民事の行方を注視して待機したため、刑事の動きが休眠したのが、この事件で被害届受理から書類送検まで3年も時間を要した理由だろう。そう考えると納得がいく。