知的財産の盗用さえ禁止すれば、中国経済は減退すると考える人は多い。本当にそうだろうか。中国が5Gをはじめ今後のテクノロジー覇権を握る可能性と、隠し持つ爆破的な成長率について解説したい。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2019年3月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
米国のファーウェイ排除要請を各国が無視へ。中国経済の力の源は
ファーウェイ排除で、中国経済に大ダメージ?
米中のテクノロジーをめぐる世界覇権の争いが激化している。
トランプ政権は、上下両院が昨年可決した「国防権限法」に基づき、2019年8月以降、米政府機関が「ファーウェイ」など中国通信5社の製品を調達することを禁じ、さらに2020年8月からは、同5社の製品を利用している「世界中のあらゆる企業をアメリカ政府機関の調達から排除することを決めた。実行されれば世界中の企業が、中国が絡むサプライチェーンから排除されかねない。
このような圧力によって、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、そして日本などの米同盟国が「ファーウェイ」の政府機関からの排除を決め、「ファーウェイ」が各国で計画している5Gのインフラ建設からの排除も決定した。
これで、「ファーウェイ」を筆頭にした中国企業の凋落は避けられないとの見方も強い。
一方、各国は「ファーウェイ容認」へ
しかしながら、トランプ政権の強い圧力にもかかわらず、アメリカの同盟国による「ファーウェイ排除」の動きは鈍い。むしろ、「ファーウェイ」による5Gの通信網インフラを容認する方向に動き出している。
まずイギリスだが、2月17日、「国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)」が、「ファーウェイ」について利用を一部制限すべき領域はあるが、「安全保障上のリスクは抑えられる」との判断を固めた。
またドイツだが、一部の政府の省庁ではすでに2週間前に「ファーウェイ」を5Gネットワーク構築の入札に参加させる暫定合意がなされている。最終的には内閣と議会の承認が必要だが、トランプ政権の主張とは裏腹に、ドイツ当局の調査でも、「ファーウェイ」機器での不正行為の兆候は見つけられなかったとした。ドイツで「ファーウェイ」機器と通信網が全面的に容認される方向が強まっている。
さらにインドは、トランプ政権の通信網のアップグレードにファーウェイの機器を使えばサイバーセキュリティーに重大な脅威を及ぼすとの警告にもかかわらず、ファーウェイが提供する割安な価格や高い技術力はそうしたリスクを上回るとの主張が多いとの理由で、政策担当者や通信会社はほとんど耳を傾けていない。トランプ政権の圧力にもかかわらず、インドは「ファーウェイ」の5Gの通信網を導入する方向だ。
米国が力を失いつつある
このような状況を見ると、トランプ政権の圧力は有効性を失い、最終的には「ファーウェイ」の5Gの通信網が世界の覇権を握る可能性が強いことが分かる。
アメリカは、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどの文化的にも近い関係にある諸国とは、それぞれの情報機関が収集した情報共有のネットワークを持っている。「ファイブ・アイズ」だ。
この協定の中核となっている国がアメリカとイギリスだが、トランプ政権の圧力にもかかわらず、そのイギリスが「ファーウェイ」機器と通信網の排除はしないことを明確にした意味は大きい。すでにアメリカは同盟国を結集する力を失っており、覇権が凋落している分かりやすい兆候だろう。