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パクリ商法を封じても中国は潰れない。今後、ファーウェイほか中国企業が技術覇権を握るワケ=高島康司

1990年代末から始まる帰国ラッシュ

一方中国では、2001年の「世界貿易機構(WTO)」の加盟に向けて準備が進められていた。「WTO」には自由貿易の厳格なルールが存在しており、国内産業保護のための高関税の適用は許されない。あくまでグローバルな自由貿易の原則にしたがうことが要求される。

そのような状況で中国が国際競争力を維持するためには、安い労働力を提供して海外企業の生産拠点となると同時に、競争力のある製品の生産・開発能力を強化しなければならない。

これを担う人材として政府が注目したのが、「文化大革命」後にアメリカへと留学した人々の集団である。政府は、彼らを高給と高いポストの保証で帰国を促した。PhDを取得し、すでにシリコンバレーでキャリアを築いていた多くの中国人がこれに応じて、帰国ラッシュが始まった。

この帰国ラッシュは、江沢民政権における「文化大革命」で「下放」された第1世代から始まり、胡錦濤、習近平の歴代政権で規模を拡大させながら続いている。世界ではじめて5ナノの半導体の製造に成功した先の「AMEC」の創業者も帰国した人材のひとりだ。

「AMEC」を操業したのは、中国の半導体の父と呼ばれ、ドクター・ジェラルドの名前で知られるゼーヤオという人物だ。彼はカリフォルニア大学ロサンゼルス校で物理化学のPhDを取得後、半導体製造大手の「アプライドマテリアルズ社」に13年間在籍した。その間、同社の副社長およびエッチング製品事業グループのゼネラルマネージャーなどを歴任している。その後、中国政府の要請に応じて帰国し、2004年に現在の「AMEC」を設立した。

いま、アメリカの名門大学に留学してPhDを取得し、シリコンバレーの大手IT企業で数年勤務した後、ベンチャー企業に参加して会社設立のノウハウを学び、その後自分のベンチャーをシリコンバレーで立ち上げるというのがこうしたエリートの一般的なキャリアコースだ。

こうした人々が政府によるリクルートの対象となっている。現在では「海亀」と呼ばれる人材群だ。「海亀」はアメリカでPhDを取得した後、「グーグル」や「アップル」などの最先端企業で働き、その後帰国してベンチャーを設立している。

いま中国国内では、帰国組も含め、500万人を越える修士号、博士号の取得者、そして研究者がいるとされる。この数はさらに増加している。

経済力と人材群が最先端テクノロジーの基盤

もちろん、こうした人材が設立したベンチャーには、中国の政府系ファンドも投資をしている。

特に5Gのテクノロジーに関しては、政府の「科学技術部」、「工業情報化部」、「国家発展改革委員会」が「5G推進小グループ」を設置し、「ファーウェイ」を始めとする中国の5G関連企業の全面的な支援を始めた。

このように見ると、知的財産権の侵害によって、日米欧の企業が開発した先端的なテクノロジーを盗むことが、中国のテクノロジーの基盤であるとする、日本で比較的に広く喧伝されているイメージは、当たってはいないことが分かる。

中国の経済力を基盤とした旺盛な投資、そして膨大な人材のプールが、中国の先端的なテクノロジー開発を支える基盤だ。これが、イギリスやアメリカを始めとした各国経済への影響力の拡大と合わせて、中国の先端的テクノロジーの世界覇権を目指す基礎になっている。

Next: 知的財産の侵害さえ阻止すれば中国は潰れる?無視できない中国の底力

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