1980年代、フジテレビが民放視聴率ダントツ首位だった黄金時代に新卒入社した経験を元衆議院議員の三宅雪子さんが綴ります。(『三宅雪子の「こわいものしらず」』)
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元衆議院議員。玉川学園女子短大、共立女子大学を卒業。テレビ局勤務を経て、2009年群馬4区で民主党から立候補し、比例復活当選。現在は、執筆やネット配信、福祉や介護のアドバイザーなどをしながら政治活動を行っている。
同期の女子アナは河野景子さん、有賀さつきさん、八木亜希子さん
視聴率は民放ダントツ首位。フジテレビの入社試験は?
1980年代、フジテレビは「楽しくなければテレビじゃない」をキャッチコピーにバラエティ番組がヒット。視聴率は民放でダントツトップでした。人気が高かったフジテレビに私は「総合職」として入社しました。
入社前の経緯から書きます。
私は玉川学園の短期大学から共立大学に編入をしました。当時、短期大学卒業=短卒は各企業で引く手あまたでした。いわゆる「売り手市場」だったんですね(反対の女性大卒は苦労したと記憶しています)。
私はマスコミ希望だったのですが、短大卒の場合、事務職になると言われました(その後しばらく短卒採用は中止になりました。今はわかりません)。そのため大学へ編入したのです。
大学4年だった1987年の春「マスコミセミナー」といういわゆる青田買いの場があり、ここが事実上のフジサンケイグループ採用の1次試験でした(その前に書類選考はありました)。フジサンケイグループのどの社が希望なのかを書くように言われ、第1希望「フジテレビ」第2希望「ニッポン放送」と書いた覚えがあります。
そこでの成績は英語では上位でしたが、国語などは全然ダメでした。結果を見て「だめかも」と思いましたが、英語で何とかカバーできたのか、2次試験に進むことができました。3次(部長面接)、4次(役員面接)と人数は減ってきました。親しくなった人の姿が次の試験では見えないと寂しい気持ちになります。ライバルなのですが、一緒に受かりたいと思いながら面接に臨んでいました。
最終面接は錚々たるメンバーでした。その後にNHKで活躍した女性アナウンサーやコメンティターになっている女性もいました。ちなみにこの年のフジテレビアナウンサーは、河野景子さん、有賀さつきさん、八木亜希子さんの3人でした。
思い返すと、1989年4月16日に亡くなった故・鹿内春雄社長が最後に面接した社員となりました。内定は、かなり早い時期でした。
Next: バブル当時の就活は難しくなかった?しかし入社後は男女で扱いの差も…
バブル当時の就活は難しくなかった
早い内定だったので学生最後の夏休みはゆっくり過ごせました。バブル時代だったので、就職に苦労した友人はほとんどいませんでした。
ただし、有名企業に入れても、「女性」というだけで仕事を任せてもらえないという話はよく聞きました。短大卒だとなおさらでした。
男女雇用均等法が成立していましたが、証拠づくりのように数人を抜擢して残りの人は従来と変わらないお茶くみやコピーという仕事でした。
そういう意味では、フジテレビに入社したアナウンサー3人含む14人の女性一般職(総合職)は恵まれていました。
配属発表の日は天国と地獄
数週間の研修の後、新入社員一同が集められて人事発令がありました。
今考えてみれば、たとえ、初年度に仮に希望でないセクションに配置されても、人生が終わるわけではありませんし、数年後にはまた異動があります。
好まない人事発令であっても、それは長い会社員人生の中で(たいがいは)わずか数年のこと。
しかし、まだ若かった私たちはそうは考えられず、人事発令の日は天国と地獄といった1日となりました。「人事」「総務」「経理」いずれも一般企業であれば、なんら問題ない配置です。しかし、同期の多くは制作現場に関わりたかったので、悲喜こもごもでした。
私は希望の営業局の「営業管理部」に配属になりました。好きなフジテレビの番組を売りたかったので営業志望でした。営業管理部の仕事は番組セールスではありません。
研修中に、ある役員が、営業局幹部が私を管理部で自分の秘書にしたがってると口を滑らせましたので疑心暗鬼でしたが、その通りになりました。配置は不満でしたが、その元営業局幹部は今でも娘のように私をかわいがってくれています。
女性優遇と差別が混在
1年後に希望の「ローカル営業部」に異動になりました。「ローカル営業」は首都圏の番組をセールスが仕事です。
しかし、ここでは、異動当日からジェンダーバイアスの壁にぶつかりました。この時代は混沌期でした。「優遇と差別」つまり、女性であることで極端に得することと、極端に損をすることが混在していました。
Next: まだ仕事に「お茶くみ」があった時代、当然のように女性の担当だった…
お茶くみは1日3回、女性の仕事だった
1988年6月の株主総会後、定例の人事異動を経て、フジテレビは新しいスタートを切ります。
私が配属された「営業管理部」はその名の通り営業局を管理するセクションです。いわゆる営業局の総務ですね。私は事前に言われていた通り秘書が主な仕事となりました。
もっとも私に「向いていない」、そして「あまり好きではない」業務でした。事務は苦手でした(そもそも事務が苦手だったので「事務職」ではなく「総合職」を選んだのでした)。
1986年に男女雇用均等法が施行されていましたが、それでも1988年はまだ普通に会社で「お茶くみ」があった時代です。そして、そのお茶くみは当たり前のように女性の仕事でした。
総合職で入ったとはいえ、その「女性の仕事」から外されるわけではありませんでした。さすがに「女性ばかり不公平だ」という声があがり、1988年入社の男性新入社員は一部「お茶くみ」ローテーションに入ったようです。
私は、「お茶くみ」自体をなくそうと声をあげ、その甲斐あって毎日のお茶くみはなくなりました。各自は飲みたいときに飲めばいいんですよね。お茶くみは1日3回でしたから、なくなったことによりだいぶ楽になりました。
朝礼・ラジオ体操も強制だった
1980年代は「朝礼」「ラジオ体操」がまだ普通にあった時代です。懐かしい…。
最近はこうした「業務外」の会社の儀礼的なものに関してはだんだんと強制ではなくなっているようです。2019年になってようやくですね。
最近は「ハイヒール(の強制)をやめよう」というムーブメントもあるようです。女性を縛っていたものが少しずつでもなくなるなら何よりです。自由を勝ち取るためには、たゆまない努力が必要だということです。
とはいえ、フジテレビは自由で闊達な雰囲気で、活躍する先輩を見ているだけでも、毎日わくわくしていました。明るい時代でした。
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『三宅雪子の「こわいものしらず」』(2019年5月24日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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3年3ヶ月の与野党国会議員の経験を生かし、三宅雪子独自の語り口で、あたたかみのある中にも、言うことは言う「こわいものしらず」なコラムを展開します。加えて、「教えて!○○さん」「名言・迷言・明言」「永田町コトバ」「ヒトリゴト」「話はそれますが…」など、私的なコンテンツもローテーションでお届けする予定です。