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決議権を行使していますか?株主総会が集中する、この時期に考えておきたいこと=山田健彦

3月末決算会社からの「定時株主総会招集ご通知」がこの時期多数届きます。すべての株主総会に足を運ぶことはできませんが、行かない決議権どうしていますか?(『資産1億円への道』山田健彦)

株主が決議権を行使するべき、重要な理由とは

総会に行けない決議権、そのままにしていませんか?

3月末決算会社からの「定時株主総会招集ご通知」という書類が筆者の所にも届くようになりました。一昔前のものと比べると、会社側の説明資料は、写真やグラフを多用して株主に理解してもらいたい、という意図が伝わってくるものが多くなっている印象です。ただ、それでも読み込むのに時間がかかり、イライラさせられます。

機関投資家など、数百以上もの銘柄を保有している投資家などは一つ一つ全て読むのかな~、などと思いながら中身を自分なりに精査しています。

総会の決議事項としては通常、取締役や監査役の選任が議案の中心となりますが、ここにも会社側の株主に対する姿勢が見て取れます

例えば、ある一部上場企業ですが、某取締役を再任させたいとして、その理由について会社側の資料では「XX氏は、XX省においてXX局長、事務次官を歴任し…その豊富な経験と実績を活かして当社の重要な業務執行の決定および執行役の職務の執行の監督に十分な役割を果たすことが期待できるためであります」とあります。

筆者はこの方の再任には「否」として議決権の行使をしました。

取締役の再任で「~~~が期待できるため」?

「否」とした理由は、再任なら今までの実績を「候補者とした理由」に書くべきだ、と思ったからです。

新任の取締役候補なら「~~~が期待できるため」はアリでしょうが、再任ならその「期待に応えてくれたのか」を実績をもとに説明してほしいものです。

ちなみにその会社はPBRは0.37倍、ROE3.61%、時価総額5兆4,540億円、手元キャッシュは52兆円という、手元キャッシュが時価総額の10倍近くという会社です。ハッキリ言って解散してしまった方が株主のためになる会社です。

会社発表の今年度予想売上高は対前年度比でマイナス7%、当期純利益予想はマイナス12.4%。というかなり問題のある会社でもあります。

手元キャッシュが豊富なので、M&Aなどで好成長(高成長は期待しない)企業に変わる可能性もあるかも、と考え超長期目線で保有しているのですが、やはりこの取締役の再任説明には納得できません。

たかが1人の個人投資家ですが、このような行動を沢山の個人投資家が取ることで、企業も少しずつ変わっていって欲しいという思いで議決権行使しました。

Next: 社外取締役は、その企業の役に本当に立っているのか?



単なる趣味で社外取締役をやってない?

同じ会社の社外取締役候補(これも再任)で、何社も社外取締役を兼務している人がいましたので、この人にも再任は「否」としました。

「重要な兼職の現状」欄で
XXX株式会社名誉会長、
XXX商工会議所会頭、
XXX銀行社外取締役、
XXX株式会社社外取締役、
XXXグループ社外取締役、
XXXグループ本社社外取締役と7つの役職を兼務しています。年齢ももう少しで80歳。これで社外取締役の仕事を果たせるのかはかなり疑問です。

ちなみに欧米では1人が3社以上の社外取締役となる事はまず無いそうです。

「大所、高所から示唆に富む提言を頂いております」?

次に別の会社ですが、やはり社外取締役の再任提案の中で「…その豊富な経験にもとずき大所、高所から示唆に富む提言を頂いております」という再任の理由がありましたが、このような説明で社外取締役の再任を、という件にも「否」としました。

「大所、高所からの示唆に富む提言」とは何なのか、それが業績にどう影響したのか、が記述されていないことが「否」とした理由です。

企業にもよりますが、一般に社外取締役には一人あたり年間で1千万円以上の報酬が支払われているそうです。3社掛け持ちしていたら、3千万。

その額が妥当かどうかは別にして、それだけのものを支払っているなら、株主に対してその額に見合った価値を会社に提供したのかどうかを明示すべきでしょう。

それ以外にも、年齢が80を超えた人の新任、再任には一律に「否」としました。早く引退して欲しいものです。

親子上場はチェックすべき事柄

欧米の投資家が不思議がるのは日本の親子上場です。親子上場は東証も好ましくないとしていますが、一般に親子上場は親会社の企業価値を損なうものとされています。

つまり、小会社を上場させないで、親会社の下に置いておけば親会社の時価総額や株価、ROEなどはもっと上がっている筈なのにもったいない、というものです。

親子上場は日立、トヨタ、パナソニック、東芝などかなりの数になります。

中には親会社の時価総額は小会社の2割くらいしかない、なんて会社も実在します。会社名は敢えて出しませんが、小会社に対する親会社の持ち分は50%超。小会社の時価総額は先週の金曜日(6月7日時点)で約3千3百億円。親会社の時価総額はたったの717億円。

単純に考えても親会社の時価総額は、小会社に対する持ち分を考えれば1,650億円を大幅に下回る、というのは何かおかしい。小会社が必死に稼いでいるものを親会社が食い潰している、という構図が想像されます。

このような親子上場に伴う資本の歪みを持つ会社の中には、過去に何回か「もの言う株主」がその歪みを正す株主提案を行い、その度に株価の急騰を演じた銘柄も少なからずあります。

6月8日付けの日経新聞朝刊にも「もの言う株主」に関する記事が載っていましたが、基本的に彼らの主張は正しく、株主軽視で脇の甘い会社は狙われるということです。

最近では「もの言う株主」と対話をして増配や自社株買いなど株主を重視する経営に転換してきた会社も出てきていて、それは我々個人投資家にとっても喜ばしいことと考えます。

議決権の行使はぜひ、行いましょう。
※参考:株主提案、過去最高54社に 機関投資家の提案相次ぐ―日本経済新聞(2019年6月7日公開)

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資産1億円への道』(2019年6月10日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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資産が1億円あるとゆとりある生活が可能と言われていますが、その1億円を目指す方法を株式投資を中心に考えていきます。株式投資以外の不動産投資や発行者が参加したセミナー等で有益な情報と思われるものを随時レポートしていきます。

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