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ミニストップ、レジ袋有料化実験へ。なぜ世界は急速に脱プラスチックに動いたのか

ミニストップがレジ袋無料配布中止の実験を開始するなど脱プラスチック化の動きが加速しています。プラ製品生産量世界第3位の日本はいま何をすべきでしょうか。(『らぽーる・マガジン』)

※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2019年6月24日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

日本もゴミを輸出してる?ゴミ処理対策からゴミを出さない対策へ

コンビニもレジ袋有料化へ

ミニストップは6月24日、千葉市美浜区の「イオンタワー店」と「イオンタワーアネックス店」でレジ袋無料配布中止の実験を開始することになりました。

報道では、レジ袋有料化に踏み切った背景として、石油資源の枯渇、プラスチックごみの不法廃棄、焼却される際の温室効果ガスの発生など環境汚染が世界規模の問題となっていることを挙げています。

希望者にはバイオマス10%含有のレジ袋(1枚3円)を販売します。主にサトウキビの搾りカスを原料とする植物由来ポリエチレンを10%配合したレジ袋となっています。

今後2店舗での実験状況の検証を経て、2020年2月までに約40店舗での実験拡大を検討しているそうです。

環境保護に貢献できない企業はお払い箱

さらに今回のレジ袋有料化は「サステナビリティ経営」の一環と説明しています。

「サステナビリティ経営」の「サステナブル」とは持続可能性(sustainability)という意味で、今までの持続可能性の概念は、企業として収益を上げ、顧客の信頼を得て企業として存続し続けることであったのは、今では地球環境の保護のための活動としてとらえられるようになっています。

つまりもっと広い観点から、地球環境が損なわれたら人々の生活を維持することができなくなるから、そうならないように企業が取り組んでいくべきという考え方にたっているようです。

地球環境の保護に貢献できないようならば、企業として存続すべきではない…。

環境先進国であるアメリカやヨーロッパでは、環境保護は、企業としての存続価値までを意味するほど重要な位置づけとなっているようです。

株式投資の世界でも「ESG投資」という考え方があります。

「ESG」とは、

の3要素のことで、企業が長期的に成長するには、この3要素が必要だと、昨今考えられているものです。

投資の意思決定において、従来型の財務情報だけを重視するだけでなく、ESGも考慮に入れる手法は「ESG投資」と呼ばれています。

特に長期投資においては企業価値をESGに求める機運が高まり、年金基金などアセットオーナーや運用会社がESG投資を推進していくことを自主的に署名し参加を表明しています。世界最大の年金基金である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も2015年9月に署名をしました。

日本政府もESG投資を後押ししていて、2014年2月に金融庁が発表した「日本版スチュワードシップ・コード」、2015年6月に金融庁と東京証券取引所が発表した「コーポレートガバナンス・コード」は、ともにESG投資の概念を推進する内容となっています。

今回は、社会における「レジ袋有料化」から見える「環境」の問題について考察していきます。

Next: 魚よりも多い?深刻な海洋プラスチック問題



深刻な海洋プラスチック問題

WWFという団体があります。約100カ国で活動している環境保全団体「World Wide Fund for Nature(世界自然保護基金)」のことです。

1961年9月、絶滅のおそれのある野生生物を救うことからスタートし、地球上の生物多様性を守り、人の暮らしが自然環境や野生生物に与える負荷を小さくすることによって、人と自然が調和して生きられる未来を目指しています。スイスのグランに、そのネットワークの中心が置かれています。

日本グループは「WWFジャパン」で、秋篠宮文仁親王殿下が名誉総裁になっておられ、ロゴマークにはパンダが使われています。WWFジャパンの顧問には皆さんがよく知る人がいて、ユニセフ親善大使を勤めている黒柳徹子さんや、パンダ大使で歌手の加藤登紀子さん、子ども達にもお馴染みのさかなクン、東京五輪誘致で「お・も・て・な・し」で脚光をあびた滝川クリステルさんが名を連ねています。

WWFは、海洋プラスチック問題にも取り組んでいて、ホームページには、海洋プラスチックごみの悲惨な現状を数字を用いて紹介しています。

そこに、海洋プラスチック問題の深刻さが紹介されています。その内容を中心にプラスチク問題の現状を考察します。

<海洋プラスチックごみは年間800万トン>

WWFによりますと、すでに世界の海に存在しているといわれるプラスチックごみは、合計で1億5,000万トンと言われているようです。そこへ、少なくとも年間800万トン(重さにして、ジャンボジェット機5万機相当)が、新たに流入していると推定されています。

プラスチック製のレジ袋が完全に自然分解されるまでに1000年以上かかるとの研究もあり、いったん海に入り込むと、環境にとても長い間影響を与えることになります。

これらのプラスチックごみの多くは、例えば海岸での波や紫外線等の影響を受けるなどして、やがて小さなプラスチックの粒子となり、それが世界中の海中や海底に存在しています。

5mm以下になったプラスチックは、マイクロプラスチックと呼ばれています。

マイクロプラスチックは本来自然界に存在しない物質で、具体的にどのような影響を及ぼすのか詳しいことはまだ明らかにされていません。

しかし、どう考えても生き物にとって良い影響を与えるとは思えませんし、、自然保護という観点から楽観視することはできないでしょう。

マイクロプラスチックは、日本でも洗顔料や歯磨き粉にスクラブ剤として広く使われてきたプラスチック粒子(マイクロビーズ)や、プラスチックの原料として使用されるペレット(レジンペレット)の流出、合成ゴムでできたタイヤの摩耗やフリースなどの合成繊維の衣料の洗濯等によっても発生しています。

<使い捨て容器が問題になっている>

この問題になっている海洋プラスチックの8割以上は、陸上で発生し海に流入したもので、特に多いのが、使い捨て用が中心の「容器包装用等」です。この用途に使われるプラスチックは、世界全体のプラスチック生産量の36%、世界で発生するプラスチックごみの47%を占めていると考えられます。「ゴーストネット」と呼ばれる、廃棄された漁網も考えられます。

プラスチックの年間生産量は、過去50年で20倍に増大しました。しかし、これまでにリサイクルされたのは、生産量全体のわずか9%に過ぎません 。

ダボス会議で知られる世界経済フォーラムは、2050年にはプラスチック生産量はさらに約4倍となり、「海洋プラスチックごみの量が海にいる魚を上回る」というショッキングな予測を発表しています。

Next: 生態系への影響は?クジラやウミガメに被害が…



生態系への影響、クジラやウミガメに被害が…

プラスチックは、いくら小さくなっても、分解してなくなることはありません。しかも、小さなプラスチックは、海の生き物がエサと間違えて食べてしまうことがあり、海の生態系への影響が心配されています。

マイクロプラスチックは、人間の生活圏に近い海域より沖のほうに多く、このことは、すでにこの汚染が広く外洋に及んでしまっている可能性があることを意味していると言われています。

比較的大きなプラスチックごみは岸の近くに多かったのに対し、マイクロプラスチックが遠く沖合にまで広がっていることがわかっています。

その仕組みは、砂浜などに打ちあげられたプラスチックは、太陽の光にあたったり砂にもまれたりして、小さく砕けていき、その小さな破片になったプラスチックは波をかぶって沖に出ます。小さなプラスチックは浮きあがりにくいので、岸に押しやる波の力を受けにくく沖には戻ってこないで、遠く沖合まで散らばっていきます。

海の生き物に必要な栄養である動物プランクトンが、植物プランクトンと間違えてマイクロプラスチックを食べてしまっていることが、最近の研究でわかりました。この動物プランクトンを魚が食べ、その魚をさらにサメやクジラのような大型の生き物が食べることで、海の生き物全体にマイクロプラスチック汚染が広がっていく可能性があると言われています。

動物プランクトンが栄養のないマイクロプラスチックを食べて満腹になれば、発育不足になって生態系のバランスがくずれることも指摘されています。

さらに、マイクロプラスチックが生き物の体内に入れば、それと同時に表面についた有害な物質が取り込まれる可能性も指摘されていて、実際に、水鳥などの体内から、プラスチックや、そこから溶けだしたとみられる有害物質がみつかっています。

海洋ごみの影響により、魚類、海鳥、アザラシなどの海洋哺乳動物、ウミガメを含む少なくとも約700種もの生物が傷つけられたり死んだりしています。このうち実に92%がプラスチックの影響、例えば漁網などに絡まったり、ここまで述べたとおり、ポリ袋を餌と間違えて摂取することによるものです。

<プラスチックごみが海洋生物の命を奪っている>

プラスチックごみの摂取率は、ウミガメで52%、海鳥の90%と推定されています。プラスチックごみが、直接海の生物の命を奪っていることが見て取れます。

今年4月、イタリア西部サルデーニャ島の浅瀬に先週打ち上げられたマッコウクジラの死骸の胃の中から、22キロ分のプラスチックごみが見つかったことを、CNN伝えています。クジラは妊娠していて、子宮の中の赤ちゃんも死んでいたそうです。
※参考:https://www.cnn.co.jp/world/35135095.html

さらに年5月にCNNでは、イタリア南部シチリア島の海岸に打ち上げられた若いクジラの死骸の腹が、プラスチック製の袋などで膨れ上がっていたことを報じています。
※参考:https://www.cnn.co.jp/world/35137251.html

少し古い映像になりますが、2015年南米コスタリカ沖で、オリーブヒメウミガメの鼻からプラスチック製のストローを10分近くかけて研究者らが引っ張り出す動画が紹介されています。
※参考:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/081900226/

どれもショッキングな映像ばかりで、私たちが出すプラスチックごみによる被害であることを認識しなければなりません。

Next: 日本は生産量世界第3位、プラスチックごみによる経済的損失が拡大中



海洋プラスチックごみのさらなる影響

このようなプラスチックごみは、豊かな自然で成り立っている産業にも直接的、間接的な被害を与え、甚大な経済的損失をもたらしています。例えば、アジア太平洋地域でのプラスチックごみによる年間の損失は、観光業年間6.2億ドル漁業・養殖業では年間3.6億ドルになると推定されています。

さらに、プラスチックの原料となる原油の使用は、地球温暖化の主要な原因の1つで、プラスチックの生産拡大傾向がこのまま続くと、パリ協定の目標である「2℃未満」を達成するときに許される2050年の温室効果ガス排出量の約15%を、プラスチックの生産および焼却時の排出が占めると試算されています。

日本沿岸で回収された漂着ごみは年間約3万トンから5万トンにも及びます。モニタリング調査によると、漂着ごみにおいて、海外から流れ着くものを含めたボトルや漁網等プラスチック類が占める割合は個数をベースにすると65.8%。また、日本近海でのマイクロプラスチックの濃度は、世界平均の27倍にも相当するという調査結果もあります。

プラスチック生産量世界第3位の日本

世界のプラスチックの年間生産量が過去50年間で20倍に拡大しています。

産業別生産量では、容器、包装、袋などのパッケージが36%と最も多く、建設(16%)、繊維(14%)と続きます。特にペットボトルやレジ袋、食品トレーやストローなど一度利用されただけで捨てられてしまう「使い捨て用」に使われることの多いパッケージ用のプラスチック生産が、プラスチックごみの量を増やすのに大きく影響しています。

このパッケージ用プラスチックでリサイクルされている割合は14%しかありません。そして、プラスチックごみ全体でみると、約半分(47%)をパッケージ用が占めています

その中で、日本のプラスチック生産量は世界第3位となっています。

特に1人当たりの容器包装プラスチックごみの発生量については、世界第2位と、この問題に国際的な責任を持たなければならない立場にあります。

実際コンビニの普及もあり、国内で年間に流通するレジ袋の枚数は、推定400億枚で、1人当たり1日約1枚のペースで消費されています。また、ペットボトルの国内年間出荷は227億本に達します。

<廃棄プラスチックは燃やしても埋めても悪影響>

日本では廃棄されるプラスチック(廃プラ)の有効利用率が84%と特に進んでいるとされていますが、全体の57.5%は、燃焼の際にエネルギー回収をするものの燃やす「サーマルリサイクル」という処理方法に頼っています。

そもそもプラスチックとは、熱や圧力を加えることによって成型加工ができる高分子物質の総称で、今や私たちの生活に欠かすことのできない素材です。原料は原油など有限の資源で、日本では原油はそのほとんどを海外から輸入しています。

廃プラスチック(廃プラ)とは、使用後廃棄されたプラスチック製品とその製造過程で出たプラスチックのかす、廃タイヤを含むプラスチックを主成分とする廃棄物のことです。

廃プラスチックは、一般系廃プラスチックと産業系廃プラスチックに分けられます。

廃棄プラは焼却や埋立てで処分されますが、焼却となれば公害問題を引き起します。リサイクルにより再利用することが望ましいもですが、複合材料化された廃プラは再利用が困難です。

化石燃料を燃やしCO2排出しているということですので、今後ますます深刻化する地球温暖化への対策まで含めた視点で見たときに、とても資源が有効かつ持続可能な方法で利用されているとは言えません。

ちなみに欧米諸国では、プラスチック製ストローなどは埋め立てているようです。

Next: 日本もゴミを輸出?海洋プラスチック問題における「中国ショック」



日本もゴミを大量に輸出している

先進国で出たプラスチックごみの廃棄方法に「他国への輸出」があります。

環境規制の厳しい先進国では、ごみ処分にともなうコストも高くなりやすいので、安価にごみを引き取り、規制の緩い開発途上国に持ち出して処分する「ごみの輸出」という方法がとられています。

リサイクルされず、輸出されたプラごみの多くは、その他のごみと同じく、最終的に開発途上国で投棄されることになります。開発途上国の郊外や貧困層の多く暮らす地域では、海外から運び込まれたごみがうず高く積み上がっている光景や、そのなかからまだ使えそうなものを拾い集める人々の姿が珍しくはありません。

日本年間150万トンものプラスチックくずを「資源」という位置づけで中国を中心にアジア諸国に輸出していました。

しかし、世界最大の輸入国である中国がリサイクル処理に伴う環境汚染などを理由に2017年から輸入規制を始めたことで、日本のプラスチックごみの行き場がなかなか見つからないといった問題が起こっています。

慶応義塾大学の大久保敏弘教授らのチームによると、日本はプラごみだけで年間500億円分以上が輸出されているとしています。

海洋プラスチック問題における「中国ショック」

海外ごみの輸入を厳しく禁じる。水がきれいで空が青い中国を築いていかなければならない…」。中国李克強首相による、30年に及ぶ国策の大転換でした。

2017年7月27日付で中国政府“国務院”が、全国の省・自治区・直轄市政府ならびに国務院関係部門に対して下達した「外国ゴミの入境を禁止する固体廃棄物輸入管理制度の改革推進実施法案の通知」に基づくものでした。

2017年12月31日、中国は“洋垃圾(外国ゴミ)”の輸入を禁止しました。

中国の国策と表現しましたが、急速な経済発展の一端を、実は資源ごみが支えていました

資源不足に悩む中国は、海外から資源ごみを輸入し、リサイクルする方法を選びました。特に先進国が消費した膨大な廃プラスチックは、石油原料よりはるかに安い、貴重な資源だったのです。経済発展とともに中国の輸入量は年々増加し、世界の廃プラスチックの6割を輸入するまでになりました。

しかしそれは、中国国内に深刻な環境汚染をもたらしました。経済発展と環境汚染には、このような関係があったのです。

汚れた状態で輸入される廃プラスチックをリサイクルするには、手作業による分別が必要でした。人件費の安い農民が、丁寧に仕分けをして汚れを洗い落としますが、その時に出る汚泥や、洗浄に使う薬品の多くが、川などにそのまま流されていました。土壌からは鉛や水銀などの物質も検出されるようになりました。

中国の経済発展は、中国国内からも大量のプラスチックごみを出すことにもなりました。「自国のプラスチックすら持て余すようになった今、環境汚染を引き起こす海外の資源ごみはもはや受け入れられない…」。これが李克強首相の「外国ゴミ輸入禁止」という国策大転換に繋がっていったのです。

Next: 中国が拒否した先進国のゴミはどこへ…? しわ寄せは東南アジアへ…



ゴミの受け入れを東南アジアに求めるのだが…

「中国ショック」とも呼ばれるゴミ輸入禁止は、米国の3分の1以上の州に影響が出ると言われ、世界各国に影響を及ぼしました。もちろん日本への影響も大きいものとなりました。

2018年に学術誌『Science Advandes』に発表された論文によれば、中国の輸入禁止により、2030年までに1億2,000万トンを超す廃プラが行き場を失うとされています。

その行き先として東南アジアのタイ、マレーシア、ベトナム、インドネシアなどに向かうことになりました。

東南アジアの多くの国自身も、中国にごみを輸出している状況で、そのうえ東南アジアの国々は中国よりはるかに面積が狭く、ごみ処理場が遅かれ早かれ一杯になることは容易に想像でき、すでに各国の処理能力を超えてしまいました。

今年5月31日、フィリピンは、カナダからリサイクル可能だと偽られて運び込まれた廃棄物を積んだコンテナ69個を送り返すという事態が起こりました。

カナダの企業が「リサイクル可能なプラスチック」として持ち込んだのですが、2014年に税関職員がコンテナ内を調べたところ、大半が大人用おむつなどを含む家庭ごみと判明し、ごみが入ったコンテナは港に放置されてきました。

カナダ側は費用を負担してごみを引き取るための船を準備していると明かしたものの、フィリピン側は待たずに送り返したということです。

東南アジアに行き着いたゴミは海の中へ…?

これには、フィリピンなど東南アジアでごみの不法輸入が問題化していることがあります。

「中国ショック」の影響です。

中国が2017年末にプラスチックごみの原則輸入禁止に踏み切って以降は、処分先に困ったカナダや米国などのごみが大量に持ち込まれ始めました。

マレーシア政府も5月末、計3,000トンの不法ごみを日本を含めた送り出し国に返すと発表しています。

「豊かな国のごみを貧しい国に送っていいという発想は受け入れられない…」。マハティール首相の批判メッセージですね。

現在、海へ流入している海洋プラスチックごみは、アジア諸国からの発生によるものが、全体の82%を占めるとしていますが、何か関係があるのでしょうかね。

Next: ゴミ焼却が中心の日本、環境のためにできることはあるか?



ゴミ焼却が中心の日本

ゴミ処理に関しては、日本では「3R運動」があります。

日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として開発途上国への国際協力を行っているJICA独立行政法人国際協力機構のホームページにも、世界のゴミ事情を掲載していてそこに、日本が取り組む「3R運動」について解説されています。

日本では、プラスチックの分別回収が世界でもトップクラスに進んでいて、国連が2018年に発表した報告書で、日本の回収は見習うべきだとも指摘されています。

日本が発表している数字では、日本のプラスチックのリサイクル率は84%、分別回収されたプラスチックは、リサイクルされていることになっています。

今指摘されているのは、回収したプラスチックの7割以上を“燃やして”いるという現実です。

<リサイクルには3種類ある>

リサイクル(再資源化)には、次の3種類の方法があります。

ペットボトルごみがペットボトルに生まれ変わったり、廃プラが駅ホームのベンチやバケツに生まれ変わたりする、いわゆるモノからモノへと生まれ変わる「マテリアルリサイクル」。

廃プラをひとまず分子に分解してからプラスチック素材に変えて何度でも再生できる「ケミカルリサイクル」。

ペットボトルなどのプラスチックをごみ焼却炉で燃やし、その熱をエネルギーとして回収する「サーマルリサイクル」です。

デメリットを挙げると、「マテリアルリサイクル」が一般的なリサイクルのイメージに近いかと思いますが、この方法だと、リサイクルする度にプラスチック分子が劣化してしまい、どんどん品質が悪くなり、使えないものになってしまうのです。

それを補うのが「ケミカルリサイクル」ですが、分子に分解する工程に大掛かりな工場がいるため、資金やエネルギーが大きくかかります。

生ゴミなど水分の多いゴミは燃えにくく温度が下がるのに対し、プラスチックはもともと原油が原料なのでよく燃えて高熱を発する「いい燃料」とされていて、身近な例で言えば、温水プールなどにその熱は利用されている「サーマルリサイクル」ですが、燃やすことによる地球環境との問題がついて回ります。

<世界はリサイクルから「リデュース」へ>

プラスチック単体の完全燃焼では、ダイオキシンのような有害物質は発生しない、ダイオキシン類は、炭素・酸素・水素・塩素が熱せられる過程で発生する可能性があり、廃棄物を焼却すると有害物質を含む排ガスを生じますが、人の健康に影響する量ではないとの報告もあります。

ただ、焼却と地球温暖化は常に議論の対象となっていて、世界は「Recycle(リサイクル)」から「Reduce(リデュース)」へと流れが変わっているのです。

日本の現状では、日本のリサイクル率84%のうち、マテリアルリサイクルは23%、ケミカルリサイクルは4%、残りの56%がサーマルリサイクルとなっています。

マテリアルリサイクル23%、ケミカルリサイクル4%の合計27%のうち、15%が前述の中国に輸出されてからリサイクルされていて、国内でマテリアルリサイクルされていたのは8%にすぎないのだそうです。その中国にも輸出できないというのは既に指摘しています。

ケミカルリサイクルも、実際には廃プラを製鉄所に持っていって鉄鉱石と石炭と一緒に燃やしているのが現状で、日本は回収したプラスチックの7割以上を燃やしていることになります。

Next: 富山県モデルを全国展開?ゴミ処理対策からゴミを出さない対策へ



ゴミ処理対策からゴミを出さない対策へ

2018年7月9日、スターバックスが全世界の店舗でプラスチック製ストローの使用をやめると発表しました。これと並行して、イギリスでは4月、アメリカのシアトル市では7月に、プラスチック製ストロー廃止の方針が打ち出されました。

ここまでの説明の通り、もはやゴミを処理することの限界もあり、ゴミを出さない対策に重点が置かれています。

世界の潮流は、日常において、極力プラスチック製品を使わないで生活しようという流れになってきています。前述の説明を繰り返せば「Recycle(リサイクル)からReduce(リデュース)」というのが世界の流れとなっています。

レジ袋有料化もその流れの中にある対策と言えそうで、スーパーを含めレジ袋の有料化は世界標準として、東京五輪までに日本社会に浸透させる狙いがあるようです。

<日本もプラ製レジ袋の無償配布禁止へ>

原田環境相は6月3日、全国のコンビニやスーパー、ドラッグストアなどの小売店で使われているプラスチック製レジ袋の無償配布を禁じる法制化を行う方針を明らかにしました。レジ袋の有料化の方法などは今後、各事業者が選択するとしています。

富山県モデル」が参考になっているようです。

2008年4月に都道府県単位では全国で初めて、レジ袋の無料配布廃止をスタートさせたのが富山県です。当初スーパーとクリーニング店で始まった富山県の取り組みは、ドラッグストアやホームセンターにも広がっていて、レジ袋が必要な人は、レジ周辺につり下げられた有料の袋を自分で取り、精算する方法となっています。

レジ袋1枚の価格は、スーパーマーケットで1枚5円、クリーニング店で10円となっていて、その収益金などは、地域の環境保全活動などに活用されています。

富山県では、無料配布の廃止後、マイバッグの持参率が92%と、平均で9割を超えたとのことです。

国は、富山県にならい、スーパーやコンビニ、ドラッグストア、百貨店などの事業者を一律に対象とする予定で、レジ袋を使用する場合は有料とし、その売り上げを、仕入れ原価を除き、環境対策などに充てる考えとのことです。

原田環境相は「プラスチック問題について、身をもって検討、考え直してもらうことも大事」と述べています。

レジの横に有料袋をつり下げているのは、最近よく見かけるようになりましたね。

Next: プラスチックを生み出す「化学メーカー」はどう生きる?



化学メーカーもアンチプラスチックへ

ここまでお話した流れで、プラスチック“創出”企業である化学メーカーも無傷ではいられないことは想像できます。

化学メーカーは、今後、自然界への排出削減など、何らかの対策費をコストに計上しておけなければならない局面にきているとも言えます。

そんな中で、放っておけば土に還る「生分解性プラスチック」を製造できるメーカーが注目されています。

三菱ケミカルカネカです。

カネカは、欧州での採用を増やしていて、さらに今年4月には、セブン&アイ・ホールディングス(HD)と資生堂というビッグネームと、100%植物由来の生分解性プラスチック「カネカ生分解性ポリマーPHBH」を用いた製品の共同開発を立て続けに発表しています。

報道によれば、セブン&アイ・HDとは、セブン-イレブンの大ヒット商品「セブンカフェ」のストローへの導入から始め、カトラリーやレジ袋への使用も検討する予定で、資生堂とは、化粧品の容器、用具、包装資材、什器などでの展開を検討するとのことです。

「カネカ生分解性ポリマーPHBH」は、土中のみならず、海水中でも分解するとのお墨付きを欧州(ベルギー)の代表的な認証機関から取得しているようです。

生分解性プラスチックは2000年ごろから環境負荷を低減する新素材として話題にはなっていて、2005年に愛知県で開催された「愛・地球博」のカトラリー(食卓用のナイフ、フォーク、スプーンなど)にも採用されていました。

<普及には高いハードルがある…>

ただ普及には課題もあります。それは「価格」です。

生分解性プラスチックは既存の汎用プラスチックに比べて高く、コーヒーショップのストローでいうと、10~20倍にまで跳ね上がるといわれています。

今後、製造過程におけるコスト削減がどれだけ進むかが問われるのでしょう。日本の技術が海洋プラスチック問題を解決することができるのかどうかが鍵となっています。

地球にやさしい企業が世界を救う、それが日本企業であることを期待したいです。

IT分野において、大きく後れをとった日本企業が世界に勝てるヒントが、ここにあるのかもしれませんね。

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らぽーる・マガジン』(2019年6月24日号)より一部抜粋
※タイトル、本文見出し、太字はMONEY VOICE編集部による

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