韓国への半導体材料「輸出規制」が始まった。日本や韓国のメディアは徴用工問題の対抗措置とミスリードしているが、実はこれは安全保障上の問題である。(『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』)
※本記事は、『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』2019年7月7日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
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韓国への輸出規制は始まっている
ことの発端は産経のスクープである。産経新聞の報道によると、韓国への半導体材料3品目の輸出規制が7月4日にスタートするとあり、さらに8月から韓国は「ホワイト国」から除外されるという。
※参考:半導体材料の対韓輸出を規制 政府 徴用工問題に対抗 来月4日から – 産経ニュース(2019年6月30日配信)
そして、次の日に各紙も一斉に報道して、経済産業省のホームページでもそのことは確認された。しかも、7月4日からなので、すでに輸出規制は開始されている。
さて、ここで重要なのはまず、半導体材料の輸出規制は3つ。ホワイト国から除外は別だということ。つまり、現時点ではまだ韓国はホワイト国から除外されていない( 8月からそうなるのは確定だが)。
報復ではなく「安全保障」上の措置
1つずつ見ていこう。まず、半導体材料の輸出規制についてだ。
対象の3品目は、半導体の洗浄に使う「フッ化水素」。このほかにスマートフォンのディスプレーに使われる「フッ化ポリイミド」。最後に半導体の基板に塗る感光剤の「レジスト」だ。
日本が世界で70~100%近いシェアを持っていて、主にサムスングループやLGグループなどの韓国企業も、ほぼ全量を日本から調達していると韓国メディアが述べている。
まず、輸出規制の中身についてだが、読売新聞によると、これは事実上の「禁輸」ということになる。つまり、韓国にはこの3品目は売らないということだ。
では、どうして売らなくなったのか。
最初は徴用工問題でついに日本政府が報復措置に乗り出したのかと思ったが、実はそうではない。これは「安全保障上」の問題なのだ。
経済産業省のホームページの一文を引用しよう。
輸出管理制度は、国際的な信頼関係を土台として構築されていますが、関係省庁で検討を行った結果、日韓間の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況です。こうした中で、大韓民国との信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になっていることに加え、大韓民国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生したこともあり、輸出管理を適切に実施する観点から、下記のとおり、厳格な制度の運用を行うこととします。<中略>
7月4日より、フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の大韓民国向け輸出及びこれらに関連する製造技術の移転(製造設備の輸出に伴うものも含む)について、包括輸出許可制度の対象から外し、個別に輸出許可申請を求め、輸出審査を行うこととします。
まず、日本や韓国のメディアは徴用工問題の対抗措置とミスリードしているが、実際は安全保障上の問題であることを確認してほしい。
そして、輸出規制というより、個別に輸出審査を行うということで、万が一に許可が下りれば売ってもらえるのだ。
だが、その許可が降りるのは難しい。なぜなら、「不適切な事案」が発生したことが原因なのだ。この不適切な事案というのが非常に重要である。