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FRB、7月末利下げ示唆。景気改善のハッタリを否定された黒田日銀はどうする?=高梨彰

「米国は7月31日に利下げをして、政策金利の目標レンジを2.00%-2.25%にする、つもりです」。パウエルFRB議長の議会証言を勝手にまとめるとこんな感じです。(『高梨彰『しん・古今東西』高梨彰)

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プロフィール:高梨彰(たかなし あきら)
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。

パウエルFRB議長、黒田日銀総裁の言葉を否定して利下げへ

パウエル証言「7月末に利下げ」を示唆

アメリカは7月31日に25bp(ベーシスポイント=0.25%)の利下げをして、政策金利の目標レンジを2.00%-2.25%にする、つもりです」。パウエルFRB議長の議会証言を勝手にまとめるとこんな感じです。

また今回の議会証言は、間接的に黒田日銀総裁の言葉を否定するものでもあります。

パウエル議長率いるFed(Federal Reserve:米連銀)、最近の姿勢は「我慢(patient)」でした。でも我慢も限界なので利下げへ向かう、としています。

パウエル議長はこの我慢の加減を左右させる存在としてcrosscurrentsという言葉を使っていました。逆流、望むものとは反対の動き、そんな意味合いのようです。力石徹のクロスカウンターみたいなものでしょうか…。

FRBにとっての逆流はトランプ大統領

何が逆流かといえば、世界経済成長と貿易問題が望まない方向に進んだということです。

前回FOMC(連邦公開市場委員会:6月18-19日開催)時、この逆流は少し収まったかにみえました。しかし、またぞろ復活、とのパウエル議長の解説です。

また、「一時的」としていた低インフレ率ですが、ここに至っても上がって来ず。これも利下げを促す要因と。

そしてなによりuncertainty、不確実性が利下げ(金融緩和)を促す理由のようです。

これら、中国・新興国経済の循環的な減速を除けば、ほぼトランプ政権の関税ネタにて説明可能です。

結局、トランプの動きによりクロスカウンターを喰らい、インフレ率も上がらず、不確実性が高まったので、Fedは今月末に利下げする、そんなことを言っているようです。

また、6月FOMC時点の景気見通しを下方修正した、という意味にもなります。

FRB議長と米大統領とのぎこちない関係が利下げを促した、とするのは言い過ぎでしょうか。

そんな関係を見透かしたせいなのか、株価の上げも一過性に留まっています。トランプ・ツイートの方がFedの利下げよりも刺激は強いですから。

Next: パウエルFRB議長、黒田日銀総裁の言葉を間接的に否定



パウエルFRB議長、黒田日銀総裁の言葉を間接的に否定

ところで、日銀はFOMCの前日7月29-30日に金融政策決定会合を開催します。

前回会合(6月19-20日)後の記者会見にて、黒田日銀総裁は「Fedの見通しをみると、2021年に向けて改善している」といった趣旨の発言をしていました。

Fedの見通しだって今後は良くなるというのだから、日銀が「(物価上昇の)モメンタムは保たれている」と言っても差し支えないでしょという風にも聞こえました。

しかし、パウエル議長は宗旨替え、低インフレは「一時的」ではないとの方向に移りました。

手段が限られる中で、黒田総裁はこれまで数々のハッタリをかましてきたかと思います。その1つが、堅調さの続く米経済です。

Fedにハシゴを外された今、FOMC前日に日銀はどういう対応をするのでしょうか。すでに市場の関心も薄れているだけに、日銀が動かなくても「やっぱりね」と見過ごすのみかもしれません。

ただ、黒田総裁のハッタリが否定された中で、「何を言っても信じない」から、単に「何も出来ない」日銀総裁とのレッテルを貼られ、円買いなど市場に仕掛けられる余地は大きくなります。

パウエル議長がトランプ大統領の前に堕ちた今、黒田総裁のハッタリ返しがどこまで通用するのか。不安でもあり、ちょっと展開そのものを期待するところでもあります。

<今回のまとめ>

・パウエルFRB議長、議会証言にて月末25bp利下げを示唆
・「一時的」としていた低インフレが長期化しそうとも
・Fedの改善見通しをハッタリに活用していた黒田総裁、どうするのでしょうか

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  • Fedにハッタリを否定された黒田総裁(7/11)
  • ジャニーさんに聞いてみたい、「停滞あと何年?」(7/10)
  • なまじディープ・ステートと親和性があるだけに(7/9)
  • Fedの「あるべき論」は横に置いて(7/8)
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高梨彰『しん・古今東西』』(2019年7月11日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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