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損しない実家の売却時期は?特別控除や特例を使いこなす方法=小櫃麻衣

実家を売却するベストなタイミングはいつなのでしょうか?実家住まいか、持ち家住まいかなどなど、様々な条件によって最適な時期は変わってきます。(『FPが教える!相続知識配信メルマガ☆彡.。』小櫃麻衣)

3000万円の特別控除、評価額が8割引ほかお得な制度を使うには?

負担がどこかで増えれば、どこかで減る

今回は、実家を売却するタイミングについて解説させて頂きます。

記憶に新しい平成27年の相続税法改正では、相続税の基礎控除額が4割削減、死亡保険金の非課税枠の半減など、私たち納税者にとって負担が増す改正になったという印象を持たれるかもしれません。

ただ、未成年者控除や障がい者控除の控除額の引き上げや小規模宅地の特例の限度面積の引き上げなど、いくつかの緩和策も提出されました。

どんな法律であっても法改正により、引き締め策が出るとそれと同時に、緩和策も出すのが一般的なのです。

今回解説していく内容も、その緩和策の1つです。

それは、相続発生後に死亡した方が所有する自宅を売却する場合であっても、一定要件を満たせば、3,000万円の特別控除が認められるようになったということ。

この“一定要件”というのがポイントになりますので、今回はこの点について解説させて頂きます。

売却利益に3,000万円の特別控除

居住用財産の3,000万円特別控除とは、自宅を購入した時の金額から自宅を売却する時の金額が値上がりした時、つまり儲けが出た時に適用させることができる制度です。

例えば、4,000万円で購入した自宅が7,000万円で売れた時には、3,000万円の儲けが出ますよね。

通常であれば、儲け部分の3,000万円からその不動産を売却する際にかかった印紙税・登録免許税・仲介手数料などの諸費用を差し引いた金額に対して所得税が課税されるのですが、3,000万円の特別控除を使うことができれば、儲け部分の3,000万円から特別控除の3,000万円を差し引くことができます。

すると、所得税の課税される部分がゼロになりますので、所得税を納めなくても良いというわけです。

法改正前までは「その家に住んでいる」ことが条件だった

さて法改正がなされるまでは、死亡した方から相続した自宅を売却する際には、相続した方がその家に住んでいた場合に限り、3,000万円の特別控除を適用させることができていました。

逆を言えば、死亡した方と別居する相続人が実家を相続した後に売却したとしても、3,000万円の特別控除を使うことができなかったというわけです。

しかし平成27年の法改正により、死亡した方と別居する相続人が実家を相続する場合であっても、一定要件を満たせば3,000万円の特別控除を使うことができるようになったのです。

Next: 住んでなくても特別控除が受けられる?その条件とは



「3,000万円の特別控除」を受ける条件とは?

それでは、その一定要件とはどんなものなのか、説明していきましょう。

1つ目は、昭和56年5月31日以前に建築された自宅であること。

2つ目は、区分所有建物登記がされている建物ではないこと。
例えば、二世帯住宅で親世帯と子世帯がそれぞれ別に登記していないなどです。

3つ目は、相続開始直前において、死亡した方以外に住んでいた人がいなかったこと。

相続人が子どもたちだけになる二次相続時に、その子どもたち全員が親と別居しているというケースでは、この措置が活躍することになるでしょう。

ちなみにこの措置は、令和元年12月31日までに限定されているものですので、この間に相続が発生した場合に限り、適用させることができるということですね。

期間が限定されているということは、期間内に相続が発生しなければ3,000万円の特別控除は使えないというわけです。

しかし、この措置のほかにも実家売却時の税負担を軽減させられる魅力的な制度があります。

これまでも当メルマガで何度か解説しているので、すでにお気付きの方も多いかと思いますが、一体どういった制度なのでしょうか。

「小規模宅地の特例」が使える

その制度とは、小規模宅地の特例。

小規模宅地の特例とは、死亡した方が所有する自宅の土地部分の評価額を330平方メートルまで80%減額できる制度です。

この特例は、死亡した方の配偶者や同居する相続人が自宅を相続する際に用いられることが多いのですが、条件を満たせば同居していない相続人が相続する場合であっても、8割引きを使うことができるようになりました。

通称「家なき子特例」と呼ばれているものです。

家なき子特例の適用要件の代表的なものは、
1. 死亡した方に配偶者や同居する親族がいないこと
2. 相続開始3年以内に持ち家に住んでいないこと
3. 相続税の申告期限までその自宅を保有していること
などです。

こういった条件を満たすことができれば、小規模宅地の特例により8割引きを適用させることができるのです。

平成30年の改正によって、この3つの条件のほかにも付け加えられたものがあるのですが、最低限この3つの条件は満たす必要があると覚えておきましょう。

持ち家に住んでいないというのがネックになるかもしれませんが、転勤族で賃貸暮らしをしている、社宅に住んでいるというケースではこの特例を適用させることができます。

最近は、結婚を機に家を買うという方が減少傾向にあるようなので、みなさんが思っている以上に、該当する方がいらっしゃるかもしれません。

Next: 実家を売却するタイミング、いつがベスト?



実家を売却するタイミング、いつがベスト?

つまり、今回のタイトルにもある実家を売却するタイミングとしては、実家に住んでおらず、持ち家に住んでいないのであれば、小規模宅地の特例を使える可能性があるので相続発生後、ということになります。

また、実家に住んでおらず、持ち家に住んでいるのであれば、3,000万円の特別控除を使える可能性があるので、相続発生前に売却するのがベストということになりますね。

しかし、前述の通り場合によっては相続発生後であっても3,000万円の特別控除を適用させることができるかもしれませんので、その点も考慮した上で考えましょう。

3,000万円の特別控除小規模宅地の特例、どちらを使うのが得なのかをシミュレーションするのが一番だとは思いますが、小規模宅地の特例を使いたいがために持ち家を売却したところで、過度な節税とみなされ特例を適用させることができない可能性があります。

持ち家に住んでいるなどの小規模宅地の特例の条件を満たしておらず、かつ、自宅を所有する被相続人予定者が老人ホームなどに入所して空き家になっている、もしくは老人ホームへ入所する予定があるのであれば、できるだけ早いうちに自宅を売却した方が良いでしょう。

まずは専門家へ相談を

さて今回は、実家を売却するタイミングについて解説させて頂きました。

自宅の売却時には、様々な控除や特例を適用させることができる可能性が高いので、どのタイミングで控除や特例を使うべきか、慎重に判断しなければなりません。

実家を手放す確率が高いのであれば、どのタイミングで売却すべきなのか、また相続によって相続人に売却してもらった方が良いのか。

所得税だけでなく相続税も大きく関係してくるので、まずは一度、専門家へ相談してみてはいかがでしょうか。

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FPが教える!相続知識配信メルマガ☆彡.。』(2019年7月12日・15日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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