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ジム・ロジャーズも警鐘 戻り相場の限界点と「3月10日大暴落」説=高島康司

日銀のマイナス金利政策導入により、日本の株価は大幅に下落し、日本国債(10年)の利回りは史上初めてマイナスとなった。同時に円高が進み、将来なにが起こるか分からない前代未聞の状況だ。円安によって輸出を促進し、また外国人観光客の増大で国内消費を増やすことを狙ったアベノミクスにとって大きな痛手である。そこで今回は、著名投資家の相場見通し、海外の市場アナリストが予測する次の市場暴落の時期を紹介する。(未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ/高島康司)

「2016年3月危機」に備えよ。著名投資家・海外シンクタンクの警告

今回の株価急落原因は「マイナス金利政策」の予想を超えた副作用

今回の株価急落と急速な円高の原因は、日銀の新たな量的金融緩和策であるマイナス金利政策の予想を超えた副作用であると見られている。

周知のように日銀は、すべての銀行に対し日銀当座預金の口座を持つことを義務づけており、口座は0.1%の金利だった。だが日銀は新規の当座預金には逆にマイナス金利を課し、銀行から手数料を徴収することにした。このため当座預金から資金の引き出しが急増することが予想された。

しかし銀行の資金量が増えたところで、やっと0.5%程度の成長率の日本では企業の貸し出し需要は増えない。むしろ、日銀の当座預金から得ていた0.1%の金利は銀行にとって大きな収益の源泉であった。マイナス金利の適用でこれが消滅すると、銀行は新たな運用先を確保しなければ収益が悪化する。

そこで銀行は、日銀の口座から引き出した資金を、当面は安全な資産と見られている米国債と日本国債の購入に向かわせた。その結果、日本の10年物国債の利回りは大きく下落し、史上初めてマイナスになった。

国債の金利は住宅ローンの金利や預金金利、そして企業ローン金利の基準である。これが下がると、すべての金利は同時に下がる。これは、住宅ローンや企業へのローンの金利に依存している銀行の収益を悪化させる要因となった。

そしてこの収益悪化が原因となり、9日には銀行株は平均で6%を越えて下落した。

銀行株は日本経済全体の指標として見られることが多い。銀行株が堅調なときは企業ローンも伸び、企業の投資が活発な証拠だと理解される。他方、銀行株の一斉の下落は企業の業績が思わしくなく、投資が不活発である示唆として見られる。

そのため、日銀のマイナス金利導入にともなう銀行の収益悪化と銀行株の下落は、他の企業の銘柄の一斉売りにつながった。これが9日と10日の大幅な株安の背景と原因である。

米国、中国、ドイツ…世界中に広がる金融不安

しかしこの株安は、日本に限ったことではない。昨年の5月には史上最高値の1万8000ドル台になったニューヨークダウは1万6000ドル台に下落し、またロンドン、フランクフルト、香港、上海なども軒並み大きく下落している。

特に、日本よりも早くマイナス金利を導入したEU諸国の下落幅は大きい。日本と同様EUでも銀行の収益は一気に悪化し、そのためバークレー、クレディースイス、ドイツ銀行などの主要銀行の株価は8%を上回る下落幅を記録した。なかでもドイツ最大の金融機関、ドイツ銀行は史上最大の赤字を計上し、経営的に非常に困難な状況にあることを露呈した。

このように見ると、9日から始まった株安は、マイナス金利の導入という日本独自の背景があるものの、世界経済の本格的な減速にともなう世界同時株安という世界的な現象の一部であることが分かる。

そもそも日銀がマイナス金利の導入を決めた理由は、中国経済の減速による世界経済全体の低迷、そして世界同時株安を受け、日本経済の減速が強く懸念されたことにあった。その意味で日銀のマイナス金利の導入は、世界経済の低迷に対する反応だった。ということでは、今回の日本の株安は世界的なトレンドの反映であることは間違いない。

新たな金融危機の予測

むしろ今回の日本の株安は、これから始まる世界的な金融危機の予兆である可能性が高い。

そのようななか、さまざまな方面から新たな金融危機を予想する記事や発言が相次いでいる。以前の記事では、国債決済銀行のチーフエコノミストで、現在はOECD開発検討委員会議長であるウィリアム・ホワイトの警告を掲載した。

ホワイトは、次の金融危機が起こると、その規模は2008年のリーマンショックよりもずっと大きいとしながらも、量的金融緩和ですべての方策を使い切ってしまった各国の中央銀行は打つ手がないとして、次の金融危機は大変に厳しいものになることを警告していた。
OECD要人「現状は2007年より悪い」まもなく再来する世界経済危機シナリオ

そして1月の終わりから2月の初めにかけて、ホワイトよりもさらに厳しい警告が方々に散見されるようになっている。

ジム・ロジャーズの警告

まずは世界的に著名な投資家、ジム・ロジャーズだ。

2月6日、ジム・ロジャーズはネットラジオのインタビューに答え、2016年に新たな金融危機が起こると警告した。次ページでその要約を紹介する。

Next: ジム・ロジャーズ「2016~2017年、市場は大変なことになる」



ジム・ロジャーズの警告(1)市場の崩壊について

過去20年間、主要国の中央銀行は利子率を低下させ、通貨を増刷し、不良債権を買い取る量的金融緩和を続けていた。これは大変に間違った政策だ。巨額の債務だけが残った。いずれ誰かがこの債務を支払わなくてはならない。

2016年と2017年はこれが要求される年となるので、市場は大変なことになるだろう。

すでに昨年の末から株式市場は大きく下落するトレンドに入っていた。市場の下げトレンドに入るときは、上がる銘柄よりも下げる銘柄の数が圧倒的に増えるが、すでに昨年の終わりからこのトレンドに入っていた。だから、2016年に入った市場の乱高下は予告されていた。

今回の下げの原因はFRBの利上げではない。利上げは散々喧伝されており、誰もが知っていた。サプライズではまったくない。

FRBは市場が大きく下げると再度量的金融緩和をやる可能性はあるだろう。

ジム・ロジャーズの警告(2)中国について

中国はリーマンショックのとき政府債務はほとんどなかった。しかしながら今回は異なる。中国政府の債務は大きくなっているので、破綻の影響はあるだろう。

一方、中国政府は政府債務の多くをインフラの建設に充当してきた。これは将来の競争力を維持するために必要な条件だ。中国は不動産バブルの崩壊から厳しい状態になるだろうが、政府がただ通貨を増刷してきたような国よりもはるかにましだ。

だが、中国は経済構造の転換の最中だ。これまでのように安い労働力を利点に安い製品を生産する方法は成り立たない。ベトナムやミャンマーなどの東南アジアの国々にその位置が脅かされている。

ジム・ロジャーズの警告(3)ドルと金・銀について

ドルは過剰に評価されている通貨だ。それは、危機に陥るとドルが逃避通貨として好まれ、ドルが買われるからだ。これと反比例して金と銀が売られる。将来、ドルが売られ、金と銀が買われる局面があるだろう。

私は正しい判断でその波に乗りたいが、いまはそのどちらも買ってはいない。

いま銀が最安値を記録している。将来は金よりも銀のほうが激しく上昇する可能性がある。

以上である。要するに、2016年から17年にかけて、主要国が実施していた極端な量的金融緩和による債務の支払いが要求され、危機に陥るはずだという予測だ。

さまざまな警告が出ているが、そのなかでもジム・ロジャーズのこのような警告は比較的に穏健なほうである。もっと強い口調で警告しているのは、かつてリーマンショックを的中させたことで知られるハリー・デントだ。

Next: ハリー・デント「2016年は1931年以来の最悪な年となるだろう」



ハリー・デントの警告

ハリー・デントはリーマンショックや昨年8月24日の上海から始まった世界同時株安を事前に予測し、有名になった市場アナリストだ。

人口動態の変化から実態経済の動きを予測し、市場変動の見通しを立てることで知られる。以下は1月28日にアレックス・ジョーンズのインタビューに答えたものだ。

現在、米経済はバブルのさなかにいる。このバブルはまさにいま弾けようとしている。これは2008年のリーマンショックをはるかに上回る規模の金融危機となるはずだ。

2016年は1931年以来の最悪な年となるだろう。だが、具体的にいつ崩壊が起こるかは分からない。

本来このバブルはもっと早く崩壊するはずだったが、FRBが実施した極端な量的金融緩和により、破綻の時期が遅延されてきた。

そのためバブルの規模ははるかに巨大になっている。今後1年から1年半でバブルは崩壊し、ダウは6000ドルから5500ドル近辺まで暴落するだろう。

相場の下落は2016年から始まり、2022年くらいまで続くはずだ。そうなる理由ははっきりしている。主要国の中央銀行は極端な量的金融緩和を実施して通貨を増刷し、市場に過剰な資金を放出してきた。

その資金のほとんどが株や債権、そして不動産に投資されてきた。これは大変なバブルである。これが破綻するのだ。

2011年から2015年7月までダウは右肩上がりだった。なんの調整局面もなかった。それがやっと2015年8月24日と26日で大きく下落し、調整の時期に入った。もし昨年の8月の相場よりもダウが下落するとそれからは一気に下がると私は予測したが、いまそのようになっている。

昨年私は株価が下落するきっかけは中国と原油価格になると予想したが、昨年の下落のきっかけはまさにそうであった。今年の下落の引き金を引くのはドイツになると私は見ている。

以上である。

Next: 複数のアナリストが予測する「3月上旬大暴落」の引き金となるもの



ジム・ロジャーズとハリー・デントの共通認識~それはいつ起こるか?

ジム・ロジャーズもハリー・デントも、金融危機と市場崩壊が起こる原因の認識は共通している。

リーマンショック以降、先進国の中央銀行は、ゼロ金利政策や国債の買い取りという量的金融緩和策を実施して通貨を増刷し、市場に資金を流していた。

この結果、政府の債務は極端に増大している。しかし、このような金融緩和策にもかかわらず、成熟期を過ぎた先進国の経済の成長率は構造的に低い。

そのようななか、世界経済を牽引したのが中国を筆頭とする新興国経済である。新興国経済の成長は著しい。10%地階成長率の国も多い。自律的な成長が困難になった先進国経済は、新興国の増大する需要に引っ張られ、成長率をかろうじて維持することができた。

その結果、極端な金融緩和にもかかわらず成長が困難になった先進国経済の実態は覆い隠され、成長が維持されているかのような体裁が保たれた

このような主要先進国を直撃したのが、新興国経済の急減速である。これで主要先進国は失速し、量的金融緩和によっても成長が困難になった本来の実態を露呈させた。

そのため、先進国経済に対する市場の信頼は失墜し、相場が暴落する可能性が高まっている。

このような認識だ。この見方は、以前の記事で紹介した高い的中率を誇るボー・ポルニーも共有している。

3月上旬の暴落から危機は開始か?

すると、やはり気になるのは市場の暴落と危機が始まる具体的な時期だ。いまのところ、危機の引き金になる要因はあまりに多い。

中国経済の失速と人民元の切り下げ米シェールオイルバブルの破綻ドイツ銀行などの欧州の金融機関の破綻などさまざまだ。いまのところ、なにがきっかけになってもおかしくない状況だ。

だが、先に紹介したウィリアム・ホワイトのコメントを待つまでもなく、暴落と金融危機が迫っていることは間違いない。ではいつ決定的な危機は始まるのだろうか?ボー・ポルニーは2016年10月3日までに市場の暴落はあるとしている

そのようなとき、筆者が情報を交換している海外のシンクタンクの複数のアナリストから、これに関する情報が送られてきた。だいたいみんな一致した暴落の時期を予測している。それは、次ページで紹介するような段階で起こるとしている。

Next: 2月に下げた相場は一度戻す/3月8日から10日にかけて大暴落



シナリオ(1)2月に下げた相場は一度戻す

まず、ニューヨークダウや日経は2月の終わりころには上昇し、2月は1月末の相場まで値を戻す。日経であれば1万7000円の水準である。

シナリオ(2)3月8日から10日にかけて大暴落

だがこれで安心してはいけない。3月8日から10日にかけて暴落する。暴落の大きさはリーマンショックの水準を越える可能性がある。

シナリオ(3)5月24日から25日にかけてさらに暴落

その後、相場は変動するものの元の水準まで値を戻すことはない。そして、5月24日から25日にかけてさらに大きく暴落する。3月と5月の2度の暴落で、株価は下手をすると50%以上も下落する可能性すらある。

この暴落の後、既存の金融システムは本格的な調整過程に入り、2022年くらいまで下落は続く。

このようなシナリオだ。これはハリー・デントやボー・ポルニーの予測と非常によく似たシナリオだ。

デントとポルニーはこの暴落は金融危機を引き起こし、危機の後は新しい金融システムに移行せざるを得なくなるとしているが、今回情報をくれたシンクタンクのアナリストたちも同じような見方をしている。

この予測は、株価のチャートのテクニカルな分析によって導かれたので、きっかけとなる出来事がなんであるかは分からない。あと1ヶ月である。このようなシナリオ通りになるのだろうか?注視していかなければならないことは間違いない。

【関連】世界が注目する3人の大暴落予測 近づく「ダウ6000ドル時代」の生き残り方

未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』(2016年2月12日号)より一部抜粋・再構成
※記事タイトル・リード文・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部による

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