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日本景気は後退から次の局面へ、株価の大底を探る「景気低迷期」へ突入する=山崎和邦

非製造業にも陰りが出てきた日本の経済指標。政府の景気見通しでは「緩やかな回復」と言い続けているが、景気動向指数はつとに後退局面を示していた。(山崎和邦)

※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2019年8月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

中長期の見方

次の「景気低迷期」こそ、大底を探る機会である

日本経済新聞社の集計によると、上場企業の6割が3四半期連続の減益となる模様。

「工業国ニッポン」の景気の陰りを表しているが、非製造業にも陰りが出てきた。政府の景気見通しの公式見解は「月例経済報告」であるが、これによれば「緩やかな回復」と言い続けているが、客観的な29系列の経済指標からなる景気動向指数はつとに後退局面を示していた。

NHKでは、前者は「総合的判断」と言い、後者を「機械的判断」と言うが、筆者は1960年に経済企画庁がハーバード景気指数などを参考にして創作した景気動向指数を長年信用してきた。それによると前述の通りである。

今まで戦後15回の景気循環を形成したが、15回のうち12回は株価が各循環ごとにタイムラグのリードタイムの違いこそあれ、株価に先行してトレンド変化してきた。上昇するときも下降するときも同様である。これは景気動向指数と日経平均株価のトレンドを比較して、筆者が客観的に検証し実証してきたことである。

「景気は循環する」(命題1)及び「各株価は景気先行性を持つ」(命題2)とすると、この1と2が真であることが論証・実証されたときに、「命題2は1の含意である」という(論理学上の定律である)。

この含意によれば、15分の12の蓋然性をもって景気が後退期に入り、低迷期に入り、「底」に入る前に株価は大底を付けるということになる。今、明らかに後退期にある。次の「景気低迷期」こそ、大底を探る機会である。

政権と市場とから圧力を受け続けるFRB--収まらない利下げ圧力

FRBが10年半ぶりの金融緩和に舵を切ったことは、金融正常化への道を放棄したかのように見られる。トランプはツイッターでパウエル議長を名指しで批判し、早くも追加緩和を迫っている。パウエル議長が7月末日に「長期的な利下げサイクルの始まりではない」とFOMCの後に記者会見で述べたからだ。

そこへもってきてFRBの元副議長ドナルド・コーンはインタビューでこう答えた。「米経済に悪影響を及ぼす米中貿易戦争が続けば、緩衝材として追加利下げが必要になるかもしれない」と言っている。トランプとNY市場とに両方から圧力を受ける形になっているのが現在のFRBである。こういうことが長く続けば、FRBに対する信認は薄らぐ結果になる。

日銀が80年代後半バブルを容認した形で低金利政策を続けたこと、それを加虐趣味さながらに「平成の鬼平」と言われて引っ込みがつかないままに常識外の引き締めを続けて日本経済を破壊した三重野総裁、その後は優柔不断で前言を取り消してばかりいた速見総裁等、日銀に対しては国民も市場も必ずしも信頼はしていないが、FRBがレーガン時代のポール・ヴォルカ─からグリーンスパン、学者であるバーナンキ、学者出身のイエレン女史、そこまでは長期間市場の信認を得てきた。が、これからは判らない。

10年半ぶりに利下げしたFRBは景気拡大する中で利下げを行ったので、これは一時的な調整利下げだとしているが、トランプや市場の緩和圧力はそれを認めない。ますます利下げしろと迫る。収まらない利下げ圧力は市場では年内にあと二度ではないかと言っている。9月の再利下げを見込む声が多い。

年内1~2回の利下げを見込むという声が市場に圧倒的に多いという。「予防的利下げ」というからにはFOMCが開かれる9月にも次回利下げを実施する可能性はある。

Next: 9月にも利下げが行われると、為替や世界経済はどうなるのか?



世界的な金融緩和は利下げを通じて通貨安競争になる恐れがある

まず、米利下げで円高に振れやすくなる。欧州中央銀行ECBは9月に追加緩和に踏み切る公算が大きい。世界的な金融緩和が金利低下を通じて通貨安となり、各国が自国通貨防止に介入すれば、世界経済は混沌とする恐れがある。

円高に向かう方向は、正月明けの104円という急激なことはないだろうが、この数ヶ月の値動きを見れば4月の112円からじりじりと円高に向かい8月7日に一瞬105円台をつけたし、9月には105円が定着しそうだ。

今後の円相場の焦点は米中摩擦の行方とFOMCの利下げの決め方次第であろう。FOMC開催ごとに利下げが高まるとFOMC開催ごとに円高になる傾向が出てくるであろうが、正月の104円を一気に切ってくることは当面はないと思われる。

「予防的利下げ」

「予防的利下げ」という言葉は1990年代後半にFRB元議長が使い出した。そして3回利下げを行った。当時はアジア金融危機・ロシア危機などがあり金融市場が激動していた。

一方NY市場はIT企業が暴騰し、所謂ITバブルを作出し、2000年にその崩壊が生じた。今回も過去のバブル期と同じような状況になりつつある。米国の株価は最高値を更新したし、米企業の業績はピークアウトしているにもかかわらず株価だけが上昇しているのは実態に合わない、と述べるのは岩田一政元日銀副総裁である。(現在、日本経済研究センター代表理事・理事長)。

企業業績がピークアウトしているにもかかわらず株価だけが上昇しているNY市場は必ず壊れるに決まっている。企業の債務残高が積み上がり、不動産市場にもバブルが生じていると思う。

パウエルFRB議長は景気循環の中盤での調整だと言っている。2~3回利下げをして様子を見ようとしているのだろう。ただし、政権と市場との圧力に屈した形で2~3回の利下げにとどまらず、本格的な利下げ局面に入るシナリオである。

来年秋の大統領選を控えてパウエル議長は引くに引けない。欧州中央銀行も緩和姿勢を強めている。日本の場合に景気が後退期に入って収縮期に入り、政府は財政出動するような場合になれば、日銀が何もしないわけには行かない。短期金利を下げるしかないであろう。

Next: FRBの緩和が本格化するにあたって、ECBにできる対応策は…



欧州経済の様子

ECBは今年後半に経済・物価が勢いを取り戻すという楽観シナリオを描いてきたが、その可能性は既に低下しており、政策の修正を余儀なくされた格好である。

FRBが10年半ぶりの利下げに踏み切ったことで、その米欧の金利差は縮小の方向に向かい始めた。欧州も再び緩和路線に舵を切る。7月25日の理事会でECBは追加利下げや量的緩和政策の再開に向けた準備を進める方針を決めた。

IMF専務理事からECB総裁に就任するラガルド女史にとって、ECB総裁が切れる緩和カードは限られている。彼女にとって難問が迫っている。9月に追加緩和の公算も余地は乏しい。緩和の副作用が金融機関に打撃を与える恐れもある。

市場に厳しい金融・資本市場環境が続いており、低金利の期間がさらに長引くと想定している。

米中貿易戦争、1ヶ月の短期休戦で再開戦

米中は、7月末に上海で2ヶ月半ぶりに閣僚級の貿易協定を開いたが、時間をかけて米国から好条件を引き出そうとする中国の戦術にトランプが憤慨した。

法律ではなく条令で対処しようとした中国の常套手段の態度に怒ったのである。対中関税第4弾(全ての中国製品に制裁関税の対象を広げるもの)を9月に発動することを決め発表した。関税第4弾の対象はスマホ・パソコンなどのIT関係の全て・機械・衣料品・玩具などの消費財が含まれる。米国内の消費者に負担をかける結果になる。

個人消費を冷やす恐れがある。米国の場合にGDP構成要素の7割が個人消費である。これが冷やされることは必定である。NY株価は7月15日に付けた最高値から3%超下落した。戦後最長の景気拡大期を迎えている米景気の腰折れや米株価の下落が鮮明になれば、中国との取引に再び激しくなるシナリオもあり得る。

米中衝突の波紋は途上国の通貨・株価にも波及している

高金利通貨として外為証拠金取引で日本の個人投資家にも買われてきた南アフリカ・ランドは7月から5%下落。チリの株価は4%下がり、6日に今年の最安値を更新した。

LMEの銅相場は世界景気に敏感で世界景気に先行するが、これの先物価格は5日に2年ぶりの安値を付けた。

Next: 敗戦記念日だけではない、8月15日の日本市場に起きた為替の変化



日本にとって「8月15日という日の意味」

1:それは1945年8月15日の敗戦の日だけではない。

2:1971年8月15日に、ニクソン元大統領が一方的に決めたドルの切り下げで、日本円は360円の固定為替制度から一挙に17%高の300円がらみの市場為替度への切り替えを迫られた日である。当然、日本の株式市場は大荒れに荒れた。

私ごとになるが、筆者は夏休みで家族とともに信州の高原にいたが慌てて会社に飛んで帰った。

1970年当時、アメリカ行政府は公にはドルの切り下げに言及しなかったが、国際社会ではドルの切り下げがあるのではないかという噂が何ヶ月も前から流れていた。日本では当時の大蔵省国際金融局の指示で、これを1971年6月発刊された当年度の経済白書に一行も書くことを禁じられた。

(★註:ここで1999年秋の日本経済学会での筆者拙論発表時の件を記すと、当年の白書にその予測が一行も触れていなかったことを筆者が難詰したことに対して、発表会の会場でそれを聞いていた元経企庁官僚が当時の実態を話した)

経済白書が出て2ヶ月後の1971年8月15日にアメリカはドルの金への兌換を停止し、ドル平価を切り下げるということにした。これの狙いは輸入品の価値を高くして輸出品の価格を低くしようというアメリカの自国本位のことであった。これが日本市場に伝わったのは8月15日の東京証券市場の立会時間中であり、もちろん大暴落した。日本の証券史上においても現代史においても、これを「ニクソン暴落」としている。

アメリカでは、ドル平価の切り下げは給与や物価の統制に比べると深刻なことではなかったようだ。ニクソン演説の翌日にNYでは株価の高騰が起こった。その後主要国の通貨は変動相場制を維持することになり、金本位制が放棄された。これまでドルの価格は金に裏付けられていたが、金本位制の放棄で、ドルが価値の基準を失うのではないかという恐れが内外に広がった。

1972年末ドルが大幅に下落すると同時に、日本の通貨が評価され始めると為替市場は不安定になり、続いてポンドが大幅に下落した時、イギリスの銀行システムを危機が襲った。当面の混乱を防ぐためにアメリカを中心とした臨時の為替平価を定め、当年8月15日までは365円を固定為替としていたものを臨時に308円に決めた。これはその会議があった場所をとって「スミソニアン体制」と呼んだ。

これは1971年12月8日のことであった。ニクソンが金兌換を廃止し、ドル平価を切り下げたのは8月15日、スミソニアン体制は12月8日、前者は日本国がポツダム宣言を受託し所謂敗戦の日である。そしてスミソニアン体制の30年前のこの日に真珠湾攻撃をし、対米戦争が開始された日であった。

この8月15日と12月8日という日をニクソン声明の日とスミソニアン体制の日に敢えて意図的に合わせたのか、それとも偶然の結果だったのか、筆者は当時から前者を意識していたが、現代史のうえでそれを論う者がいなかったか、筆者のみが聞こえなかったか、いずれかであるが、それは今日まで論じられなかった。

時事評論や金融史上でも26年前の8月15日と30年前の12月8日との「偶然の一致」は述べられていない。

(★註そのニクソン発言を根拠に、「日本の終戦記念日を意図的に狙ったのではないか」とする見解も存在する。ただし声明は日本時間で8月16日午前10時で、またアメリカ人にとっての戦争が終わった日は8月15日ではなく8月14日である。これについての詮索は本稿の本筋と関係ないので割愛する)

3:16年8月はアベノミクス相場で始動点から2.4倍になった「壮年期相場の終焉の舞台」となった、いわゆる「チャイナショック」が始まりの月であった。

4:今年は8月2日から3日間で三空を開けての大幅急落を起こした。8月という月は、とかく何かが起きる月だった。

5:07年8月10日は、サブプライムローンの破裂で仏パリバ銀行が破綻に瀕し、これが翌年のリーマン・ブラザーズ証券の破綻の契機を作った。

6:18年8月15日は、トランプの対トルコ措置によってトルコリラが半日で25%暴落した日だった。

Next: 追加関税を発動し、さらに一部を解除したトランプの意図とは



「米中貿易戦争は世界経済を犠牲にする」

この標題のカギカッコ内は日本経済新聞8月3日号の社説のタイトルである。

トランプが中国に対する制裁関税の第4弾を9月1日に発動すると表明した。トランプと習近平は6月末に会って追加関税の発動を猶予して貿易戦争の打開策を協議することを確認したばかりだった。

トランプの意図はどこにあるのか。筆者が「邪推」するところによれば、彼は史上最高値に燃焼してしまったNYダウを少々冷やさないと来年の大統領選までに燃え尽きてしまう、そこで冷やしを入れた(★註)、というものだ。トランプはFRB議長に対して牽制したり催促したり露骨に行う。

トランプは大統領権限だけで遂行できる通商問題と、自分が送り込んだFRBパウエル議長への介入を以て、株価を自在に操れると思い込んでいるから始末に負えない。

米は戦後最長の好景気局面を今記録更新中だ。自ら引き起こした貿易戦争のおかげで下振れの懸念が強まり、FRBは10年半ぶりの利下げに動いた。その利下げ期待の熱狂相場に対して、少々長持ちさせるための方策があったに違いない。

(★註)NY市場が“Death of Equities.”を脱して約7倍に上昇した時、時のFRB議長グリーンスパンは“Irrational Exuberance”と言って長期上昇相場を作出した。「根拠なき熱狂」と和訳されて日本市場も警戒した。この「冷やし玉」の入れ方のタイミングが長期相場につながった。

彼が史上最長の19年間もFRB議長を務め、「神の手」「名指揮者」と言われた最初の手法はこれだった。トランプがそれを真似ているわけではあるまいが、筆者にはそう見える。短期的にはトランプに牛耳られているNY相場だと言える。

ただし、議会の承認も何も要らなかった徳川吉宗さえも、江戸時代大坂堂島の米相場を制御することができず「コメ将軍」と揶揄されたように、相場というものは本質的には人為で左右できるものではないということが市場経済の基本的な原理原則だ。

しかし、トランプが仕掛けた米中貿易戦争が実物経済に大影響を与え、中国にも欧州にももちろん日本にも大きなマイナスになることは間違いない。株価はそれを先読みして、しかも拡大し、伝播する。

米雇用の減速

16万人に減ったのはもちろん対中摩擦が下押し圧力となったからだ。日銀の使命は通貨価値の安定というただ1つが大義であるが、FRBの使命は2あって、2つ目が「雇用の発展」である。

対中摩擦が雇用の下押し圧力になるから、FRBは早期の追加緩和も考えねばならなくなるだろう。7月末のFOMCではそこまでは踏み込んだ表明はしなかったが、必ずそうなるに違いないと思う。

Next: 歴史から見る、米国の外交方針はどう変化してきたか



中長期の見方:米外交方針の基本の変化

第2次世界大戦後の米国の基本的外交方針は次のような流れだったと思う。

1989年11月のベルリンの壁崩壊までは、一貫してソ連を仮想敵国に置いてきた。

90年に入ってからの米国の仮想敵国は日本になった。今考えてみればもっともだったことである。

当時日本は対外債権で世界一、貿易黒字で世界一、外貨保有で世界一、国際競争力で世界一、東証時価総額で世界一、国土の地価は世界一(特にこれは原油も鉄鋼石もキンも全部採れる北米大陸の2倍の地価を日本はしていたのだ)、愛知県一県のGDPが韓国の2倍。これが80年代後半の日本だった。

米国は今まで日本を自分の子分か弟分だと思っていたのが、自分に追いつき追い越してしまった。ここで日本に核兵器でも持たれたら自分が世界の超大国でなくなる、しかも日本は世界唯一の核の犠牲になった国であるから、核を保有する資格は国際的に認められる。その技術もカネもある。したがって、世界一の経済大国であり、核保有国にもでもなったら、米国の地位は危ういと当時思われたのだ。

レーガンは英国の盟友サッチャーとともに新自由主義を進め、日本を仮想敵として猛烈な貿易摩擦を迫った。そのうえ、プラザ合意という史上最大の悪だくみを起こして日本を疲弊させた

当時日本は愛知県一県で韓国のGDPの2倍はあると言い、日本の国土を売れば米国の国土を二度買えるなどと図に乗っていた点はあったが、米国に安全保障を依存していたし、米国の弟分であると思っていたので、米国の貿易摩擦に対しては唯々諾々としてこれに従ってきた。

日本がとった道は「輸出の自主規制」であった。トランプもおそらく中国は当時の日本のようになるだろうと思って始めたであろうが当てがはずれたというところだろう。

2001年の9月11日の米国多発テロを契機として米国の最大の仮想敵国をイラン・イラク・北朝鮮という「悪の枢軸国」となった。これはイラクのクエート侵攻を契機としてイラクに必ず核兵器と細菌兵器があると信じて爆撃で壊滅させた後データ精査したが核兵器も細菌兵器も出てこなかった。この米国の間違えた空爆はその責任をどうとるのか、誰も国際的な問題にしない。超大国に対しては口を出さないのだ。

次にオバマ政権に移ってからの8年間は仮想敵をつくらなかった。そして米国は「米国は世界の警察の役割をやめた」と自ら言って軍事・経済のハードパワーを持つ超大国の座を引退した。

そこでトランプになってから仮想敵の焦点は中国に絞られた。そして米ソの46年間に及ぶ長い冷戦に対して米中の貿易を中心とする争いは「新冷戦」と言われつつある。だが新冷戦は旧冷戦に比べてかなり複雑である。

旧冷戦時代のようにイデオロギー・価値観・経済体制が確然と区別されていた時代とは違って、今は所謂「グローバリズム」であり、両国ともに資本主義であり米国ともに市場経済である。両国ともに世界各国と貿易をしている。

ただ、中国は国営資本主義、官製市場主義であるし、価値観もイデオロギーも根本的には違うが、グローバリズムと世界貿易の点で旧冷戦時代とは基本的に複雑を極めている

Next: 日本の外交の現状を形作る、現在の環境



トランプにとって貿易赤字の対象で日本は4番目だ

トランプはレーガン時代と違って、日本に対しては貿易の難題を吹っかけてこなかった。
安倍首相がトランプに招かれて最初に訪米した際に、豊田章一郎氏が首相官邸まで訪ねて何かを話し合ってきた。

出てきた豊田章一郎社長に質問した新聞記者に対して豊田社長は(「トランプに騙されるなよ。日本の自動車に関税をかけるなと言っても気安く承諾するなよ」などと言ったのではなく)、「当社も自動車業界も日本の政治家や官僚に大変お世話になり指導を受けてきたので、これからもご指導願いたいとお願いしてきました」と応じた。だが実際はトランプに篭絡されるなよと、念を押してきたのであろう。

一方、トランプは、日本は貿易赤字作出国としては4番目だから目くじら立てて責めるようなことは今まではしなかった。「今までは」の話しである。

日本が中国・EU・メキシコに次ぐ4番目でしかなく、米国の対日赤字は全体の赤字額の8%しかない。

日本の輸出に対して一番厳しく当たったのはレーガンであったが、クリントンも大統領就任早々に具体的な数値目標を設定する「包括協定」なるものを日本側に「提案」したが、実際には「押しつけた」のだ。トランプは今のところそういうことはしていない。筆者が想像するには、トランプは多分為替介入をもって行うのではないかと思う。為替は決して自由市場の相場ではない。覇権国の権力者のひとことで激動する場面がある。

日韓関係の急速悪化について

言うまでもなく外交は究極的には国家間の力の均衡で定まる。日本の国力の方が韓国のそれよりもはるかに強かった。1965年の日韓基本条約が締結された頃に比べると、日本と韓国の国力の差はかなり縮まっている

そこで韓国は両国間の国力の格差の縮小を図に乗ってきたのだ。今さら言っても仕方がないが、慰安婦の銅像などは始めから無視すれば良かったのだ。日本が韓国に追われる立場であるから本気になってムキになったのは筆者に言わせれば大人気なかった。始めから無視すれば良かったのだ。

徴用工問題はまた別である。これについては成文法まであるのを無視して元徴用工が騒いできた。図に乗った大衆が騒いでいるだけだと無視するわけにはいかなかくなった。最高裁が成文化された文書を無視して民衆の騒ぎを正当化したからだ。

そして新日鉄等の工場を差し押さえた、実効支配に出た、ここで日本は黙っているわけにはいかず、慰安婦問題・竹島問題・徴用工問題、そういう「感情」の問題を貿易という「勘定」でお返ししたのだ。

これも安倍政権がトランプに似てきたとか、トランプのやり口と同じではないかとか、韓国に対して小気味良い動きだったとか、そういう筆者を含めて大衆の感情には受ける。そういうことから言えば、安倍政権もポピュリズム化に手を染めたことになる。

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第1部;当面の市況

第2部;中長期の見方

第3部;読者との交信蘭

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山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2019年8月11日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。

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