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米中間の緊張の高まりは最後のバブルの前兆?中国は未来を見据えた、あえての減速か…=藤井まり子

今現在のアメリカ経済は、製造業を除けばまだまだしっかりしています。1998年に酷似する状況…そんななか、今後株式市場はどんな動きを見せるのでしょうか。(『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』藤井まり子)

※本記事は有料メルマガ『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』2019年8月27日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

中国減速は「ゆっくり進む通貨危機」のようなもの

香港、台湾、為替分野で「急激かつ唐突に高まる米中間の緊張」

今現在のアメリカ経済は、製造業を除けばまだまだしっかりしています。

人口動態的にも、今のアメリカではまだまだ向こう数年くらいは就業人口は増加の一途を辿ります。FRBが緩和的なスタンスを維持しさえすれば、まだまだ向こう数年くらいは、アメリカの景気拡大期は理屈の上では続くはずなのです。

目下のところ最も景気減速している地域は、北京政府が中心になってデレバレッジを進めている中国です。ゼロ成長に陥っているかもしれません。昨年からの「トランプによる関税引き上げ」で、中国経済はマイナス成長に陥っていると見る向きもあります。

なにはともあれ、中国経済は「減速している」というよりも、どちらかというと北京政府主導で「遠いと遠い将来まで見据えて、あえて減速させている」という状態。

ただし、この中国経済の減速は、世界中の多くの地域を減速へと巻き込んでいます。中国発の「世界経済の減速懸念」を巻き起こしているのです。

ユーロ圏では、輸出依存の最も強かったドイツ経済がおかしくなってきています。

平たく言えば、この「中国経済の減速」は、「ゆっくり進む、中国発のアジア通貨危機」のようなものなのです。

しかも、この夏あたりから、香港問題や台湾問題をはじめ、米中間の地政学的な緊張が急速に高まってきています。

香港や台湾では、一昔前の「中国の景気が良かった」頃は、親中感情が反中感情を不自然な形であってもなんとか押しとどめてきました。

ところが、ところが、中国の景気が悪くなると、それが香港経済や台湾経済へと伝播します。当然、不景気になれば、反中感情は解き放たれます。

アメリカ国内の反中感情と、中国周辺の反中感情とが、シンクロしはじめたのです。

この夏あたりから、「自由主義VS独裁主義」「資本主義VS共産主義」「有神論者VS無神論者」といったイデオロギー面での米中の覇権争いが、唐突に激しくなってきています。

今、香港の抗議デモに中国人民軍が国境を越えて進軍してしまったら、世界経済にも世界マーケットにも「激震」が走ることでしょう。「香港への人民軍の介入」は、グローバルマーケットの「ブラックスワン」なのです。

「激震」と言えば、21年前の1998年の「LTMC破綻」も「激震」でしたね。

「香港」「台湾」「アメリカによる中国への為替操作国認定」などの「米中間のイデオロギー的な覇権争い」が高まるリスクの重さは、「米中の関税報復合戦」の比では無いのです。

マネーは安全を求めて「質への逃避」を開始、ドル国債をはじめとする先進各国の国債がむやみやたらに買い進められています。世界中のマネーが猛烈な勢いで債券や国債を買い進めています。

なにやら、1998年のグローバル情勢に酷似してきた2019年です。

Next: 今と似ている?1998年周辺で市場に起きていたこととは



10年物利回りと3ヶ月物利回りの逆転

その結果、2019年においても、10年ものドル国債利回りから3か月物のドル国債利回りを引いた差はマイナスとなり、いわゆる「逆イールド」が発生しています。

この「逆イールド」は、3月22日に発生して、今もマイナス圏で推移しています。

3か月物と10年物の利回り差がマイナスとなる「逆イールド」については、1998年にも2000年にも起きていました(1996年には起きていません)。1998年9月にも一瞬間だけ発生。

この時も2019年と同じように、世界経済の減速懸念に中で「質への逃避」が進み、勝手に長期金利だけが低下することで、「逆イールド」が起きています、この時、当時のグリーンスパン議長が緊急利下げへと迅速に動いたので、その後「逆イールド」は解消、株価も経済も持ち直しています。

そして、2000年7月にも再びこの手の「逆イールド」は発生しています。ただし、この2000年の「逆イールド」は、FRBが「バブルを潰す」過程で、FRBが短期金利をばかすか引き上げたので、起きた「逆イールド」です。「2001年の逆イールド」は、「2019年の『質への逃避』が巻き起こした逆イールド」とは性質が違います!

やはり、「2019年の逆イールド」は、「世界経済の減速懸念の中で国債がやたら買い進められて、長期金利だけが勝手に低下することで起きてしまった1998年型の逆イールド」にそっくりなのです。

「2019年の逆イールド」と「1998年の逆イールド」の違いは、その長さです。「1998年の逆イールド」はわずか1ヶ月間だけ発生してすぐ解消されています。「2019年の逆イールド」は、もう3ヶ月以上も継続して発生して、「1998年型」よりも「根深い」物を感じさせてくれます。

2019年のアメリカ株式市場は、「1998年のデジャブー」か?

今のアメリカ経済は「まだら模様」ですが、まだしっかりしています。

ところが、ここのところ唐突に「米中間の緊張」が高まって、それが世界景気に「激震」を走らせる可能性が高まっています。香港発のブラックスワン、台湾発のブラックスワンがいつ飛び立っても不思議ではありません。

あるいは、「トランプ再選ならず」の可能性も高まっています。これもブラックスワンの一種なのではないでしょうか?

今のアメリカ経済と1998年のアメリカ経済は、パウエル議長が示唆するようにあまりに「似通っている」点が多い。しかも、マーケットの動きを照らし合わせてみると、あまりに「今現在のダウの動き」と「1998年のダウの動き」が酷似しているのです。

「今現在のダウの動き」は、まるで「1998年のダウの動き」のデジャブーなのです。1~2週間くらいタイムラグがありますが、ほとんど同じ動きをしています。

1998年は、8月下旬に激震が走りましたが、2019年の場合は9月上旬に激震が走るかもしれません。

Next: 逆イールドは、米国リセッション入りの合図なのか?



米国経済がリセッション入りする確率

目下のところ、アメリカ経済が「向こう1年以内のリセッション入りする」確率は、ほぼ半々(50%)。

ざっくりと言えば半々(50%)ですが、これではあまりにも芸が無いので(なんだか、当てずっぽうみたいなので)、もっと正確に言えば、「向こう1年以内にリセッション入りする確率」は40%。「リセッション入りしない確率」は60%。

1998年の秋には、グリーンスパン前議長は0.25%の利下げを3回連続断行して、アメリカ経済をして「ITバブル形成」へと導いています。

ITバブルが弾けて、そしてアメリカ経済がリセッション入りしたのは、1998年9月から数えると、それぞれ23か月後(ITバブル崩壊)と30か月後(リセッション入り)でした。

1998年秋の「激震」は後から考えると、アメリカ株をざっくり買い増す「ビックチャンス」だったのです。

1998年秋の「激震」は、FRBが利下げしてくれたので、米国経済の拡大期をさらに3年近く先送りしてくれたのです。

自由主義、最後のバブルがやってくる?

巡り巡って2019年。

この秋、香港や台湾などで米中間の緊張が高まってアメリカ株式市場が大きく崩れたならば、その時はアメリカ株をざっくり買い増す「ビックチャンス」となるかもしれません。

そして、これは、「最後のチャンス」になるかもしれません。

なぜならば、次の「最後のバブル」が弾けたならば、アメリカFRBにはもう「利下げの糊代(のりしろ)」が残っていないからです。

数年後のアメリカ経済は、日本やユーロ圏に続いて、「ゼロ金利の世界」近辺へと沈んでいることでしょう。

何はともあれ、秋の終わりには「自由主義、最後のバブル」がやってくるかもしれません。

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【要注意!】なお、資産形成および投資は、必ず「自己責任」でお願いします。この記事は藤井まり子の個人的見解を述べたもので、当メルマガ及び記事を読むことで何らかの経済的及び精神的被害を被ったとしても、当方は一切責任を負いません。

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藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』(2019年8月27日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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