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リンガーハット、20億円赤字・大量閉店から完全復活。わずか数年で改革できた3つの要因=栫井駿介

長崎ちゃんぽんのチェーン展開を行うリンガーハット<8200>はかつて20億円を超える大赤字を計上し、周囲からは「終わった」との声も聞かれました。しかし、そこから劇的な復活を遂げ、2015〜2017年には3年連続で最高益を達成。日本版顧客満足度指数(日本生産性本部)では飲食部門で2017〜2019年度の3年連続で第1位を獲得しました。

リンガーハットの復活劇は、九州出身の人間として嬉しく思います。ちゃんぽんは長崎発祥ですが、九州では当たり前に食べられているソウルフードです。上京してからも、リンガーハットで食べられる懐かしい味に心を暖められました。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

一歩間違えれば自殺行為?デフレ期に野菜国産化・値上げで大成功

デフレ化とリーマン・ショックで窮地に

リンガーハットが長崎に誕生したのは1974年のことです。1979年には関東に進出するなど、チェーン展開を加速させていきました。2000年には東証一部に上場し、一流企業の仲間入りを果たしています。

快進撃の原動力となったのが、現会長の米濱和英氏の活躍です。1976年に共同創業者の兄・豪氏が亡くなり、32歳にして社長の座に就きました。その後の急成長は和英氏の手腕なくしては成し遂げられなかったでしょう。

しかし、その後経営は停滞の一途をたどります。2004年2月期〜2009年2月期の6年間にかけて実に4度の最終赤字を計上し、財務はボロボロの状態でした。「終わった」と囁かれたのもこの時期です。

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世間では牛丼チェーンに代表されるデフレ化が進み、飲食業界にとって厳しい時代となっていました。そこに追い打ちをかけたのが、2008年に起きたリーマン・ショックです。客足は遠のき、経営は窮地に陥りました。

その頃一線から退いていた米濱氏は、再び会長兼社長として現場に復帰することになります。

飲食店のコスト意識は緩みがち

復帰してまず行ったのが、不採算店の閉鎖です。これは会計上大きな損失を計上するものですから、まさに痛みを伴う改革です。それを全体の10%にあたる50もの店舗を閉鎖したことから、従業員に強い危機感が芽生えたと言います。

そこからは徹底したコスト削減を行いました。当時の決算短信には以下のように書かれています。

飲食店の経営はコスト意識が緩くなりがちです。まして数百のチェーン店の全てでそれを徹底することは容易ではないでしょう。

私も学生時代には某サンドイッチチェーンでアルバイトをしていましたが、入れる野菜の量が目分量だったため、次第に入れすぎになってしまい店長に注意されました。最初は僅かな変化ですが、積み重なると大きくなります。

数%の利益率を絞り出す商売ですから、コストアップは最終的な利益を大きく左右するのです。

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