<(3)顧客の期待を上回る価値>
商売をする上でこれを置いて話をすることはできません。顧客は、自分が払うお金と同等かそれ以上の価値を得られると思うからこそ、その商品を買うのです。
リンガーハットでは、「安心・安全の国産野菜」を「たくさん」食べられることが価値となり、値上げしても顧客はむしろ増える結果となりました。
値下げも確かに「価値>価格」とするための手段ではあります。牛丼チェーンは価格を徹底的に下げることによりこれを実現してきました。多くの小売業者が同じような思考に陥っているからこそ、デフレが進行したのです。
なぜ値下げにとらわれてしまうかというと、結局それが楽だからでしょう。数字をいじるだけで特に何をする必要もなく、顧客から見てもわかりやすいものです。短期的には顧客を増やすことができます。
しかし、それはやがて会社の利益を蝕んでいきますから、今度は利益を確保するために商品のクオリティが下がります。すると顧客はやがて「安かろう悪かろう」と感じるようになり、そこの商品を敬遠するようになるのです。
一方の値上げは勇気のいる決断です。失敗したら顧客離れを招きかねませんし、何よりそれだけの価値を提供する自信がなければなりません。
リンガーハットでは、単に野菜を増やすだけでなく、それらを国産化することで価値を上げ、値上げを消費者に受け入れてもらえることができました。これができたのも、米濱氏が常に顧客の「価値」を考えていたからだと想像します。
投資家としては、経営が上向きそうな企業を事前に察知することが求められます。
皆さんも買い物や食事をするときには、ぜひ注意して上のようなことが実行できているかどうか観察してみてください。思わぬ掘り出し物を発見できるかもしれません。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2019年8月27日)
※太字はMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。