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親の「終の棲家」が役目を終えたとき、子どもはどうするのが正解か?【戸建て編】=牧野寿和

終の棲家とは、生涯を終えるまで住むと決めた家のこと。そこで親が生涯を終えた後、相続人でもある子どもは、その終の棲家をどうしたらよいのでしょう?(『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』牧野寿和)

プロフィール:牧野寿和(まきの ひさかず)
ファイナンシャルプランナー、牧野FP事務所代表。「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務のほか、不動産投資、賃貸経営のアドバイスなども行う。著書に『銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法』(河出書房新社)など。

相続が絡むと複雑に?実家の「その後」を親子で考えておくこと

実家をどうするべきか

終の棲家(ついのすみか)とは、生涯を終えるまで住むと決めたところのことです。

この終の棲家で、親が生涯を終えた後、相続人でもある子どもは、その終の棲家をどうしたらよいのでしょう?

親が終の棲家として、
賃貸に住んでいた場合
戸建てに住んでいた場合
マンションに住んでいた場合
の3つのケースを分けて考える必要があります。

今回はその中から、「戸建て」の場合について解説します。

終の棲家を決めるのは「親自身」

終の棲家をどこにするか。それを決めるのは、当事者である親です。

その家が、親の自己所有の場合や、借りている家(つまり賃貸)の場合もあるでしょう。

賃貸にしても、戸建ての場合は、土地も建物も賃貸のケースと、建物は自分たちで建てて
土地は借りている場合などもあるでしょう。

また、アパートやマンションの1部屋を借りている場合もあります。

どのような形態であれ、親が「自分たちは生涯ここに住む」と決めたところ、そこが終の棲家です。

また、終の棲家を決めるにあたり、親が高齢になってから、また子どもに十分な収入がない限り親が終の棲家を決めることに、子どもは口出しをする機会はないでしょう。

つまり、親の終の棲家は、親が自分たちで決めます。

終の棲家が不要になったら…?

とはいうものの、終の棲家がいらなくなった時のことを考えると、親が亡くなった後の親の持ち物は、遺産相続の対象になります。

親が元気なうちに、親子で、その時のことを考えておくことが必要です。家庭によっては、相続人である子どもたちが、相続の問題に発展しかねないからです。

それでは、今回のテーマであります「戸建て」が終の棲家の場合の、具体的なお話を始めます。

Next: 相続が絡むと複雑に?実家の「その後」を親子で考えておくこと



実家の「その後」を親子で考えておく

戸建ての場合は、親が亡くなる前に、終の棲家をどうするか、つまり両親が亡くなった後の家をどうするかを考える必要があります。

まず前提として、親と子どもの家族が同居している場合もあれば、子どもは別のところで住んでいて両親だけ(または片方の親だけ)が住んでいる場合もあります。

どちらの場合も、子ども兄弟が複数であれば、親から子どもへの相続の問題も絡みます。

亡くなった後は子どもたちが好きにすれば良い、といわれる親もいるでしょう。

しかしここは、親が亡くなった後にこの家をどうするのか、親子で話し合っておくのが、
親亡き後の子どもにとっても、行動が取りやすいことは確かです。

遺産の分け方を決めておく

親が亡くなって、子どもがしなくてはならないことは、親の遺産相続です。

今回のケースは、ご両親が亡くなった後のことを考えていますので、子どもの間で分け合う相続です。

子どもが一人であれば、親の残した遺産の額により、相続税の納付の対策だけで済むかもしれません。しかし、複数の子どもがいる場合は、遺産分割の問題が生じるかもしれません。

親の遺産が、子どもの数で均等な価値と金額に割ることができれば良いのですが、できないことで相続の問題が生まれることがあります。

従って、親がご自身の責任として、ご自身の資産をどのように分けるか、まず親が資産といえるものに何があるのか、以下のようにまず書き出してみることが必要です。

・(終の棲家を含む)不動産
・現金
・銀行の預貯金
・株式などの金融商品
・死亡保険の受取指定人と保険金額
・先代からの家にある古美術小道具といった骨とう品

リストの作成ができたら、親単独もしくは子どもも参加して、皆が納得できる分割の案を作成することです。

そこには、不動産や金融商品、それに骨とう品ならいま売却したらいくら手元に入るのか、おおよそのお金に換算した価値も計算しておきます。

その時に、子どもたちが、合意をしておいてほしいことがあります。

それは、親にとっては終の棲家であり、子どもにとっては実家の、終の棲家の役目が終わったあとの対応方法の確認です。

Next: 同居と親世帯のみでは勝手が違う?実家が「空き家」になる日



親と子ども家族が同居していた場合

通常、親の終の棲家に同居していて相続した子どもは、そのまま自分の家族とその家で生活を続けていくでしょう。

中には、自分たち子ども夫婦の終の棲家とするために、リフォームや建て替えることもあるでしょう。

また、その家が郊外にあった場合は、交通の便が良い、間取りもコンパクトな街なかのマンションに引っ越すかもしれません。

しかし、相続は済んでいるのですから、ご先祖様の世話をしながら、相続した子どもの責任で行っていくことです。

ほかの兄弟が口を出すことではありません

親のみが住んでいた場合

親にとっての終の棲家をどうするのか?

親の生きているうちに、親子で対応を決めておくのが一番ですが、難しい場合もあるようです。

そのような場合は、親亡き後は、空き家の状態になるでしょう。

何らかの理由で、子ども全員が相続を放棄しない場合、子どもの誰かが相続をして所有することになります。厳密にいえば、子どもたちが共同で所有してもよいのです。

しかし、将来、子どもの次の世代終の棲家の持ち主である親から見て孫が、結婚して配偶者もでき、子どもも生まれると様々な考え方をする人が交わりますので、ここは、相続人を決めて、その人が相続をした方がよいでしょう。

もちろん、その人を相続人にするのは、ほかの子どもの同意の元です。

相続人が決まったところで、親の住んでいた親にとっての終の棲家をどうするか。

その家の面積や周りの環境立地にもよりますが、

・相続人が引っ越しして住む
・賃貸として人に貸す
・売却する

なお、
・アパートなどの複数の部屋を持つ賃貸経営
・駐車場
などは、人口が減少してまた高齢化をしている現状では、よほどしっかりした市場リサーチしてからでないと経営は成り立たないかもしれません。

Next: 借地に家を建てていた場合は?注意することはたくさんある



借地に家を建てた場合

次に、借地の上に親が家を建てていた場合です。

その家に住む予定の子供がいない場合は、
・家を壊して更地にして、土地の持ち主に返す
・その家をリフォームして、賃貸として貸す
・子どもが住む
などになります。

ただ、その土地のオーナーとは、とくに賃貸で貸す場合は親との契約を子どもとの契約に引き継げるか、さらに借地料は親の時と同じで良いか、そして賃貸にすることに土地の持ち主が承諾するのか、まずは問題になるでしょう。

<相続に備えて記録しておくこと>

保証金などは、契約期間が長いと(言い換えれば、古くからの契約の場合には)結構まとまったお金が戻ってくる場合もあります。

そこで、お金のやり取りは、お金が出ていく方・入ってくる方ともに遺産分割の対象にもなりますので、記録しておくことも大切です。

<そのまま住む場合の注意点>

また、親が亡くなっても、子どもが引き続きその家に住む場合があります。

この場合、その土地の賃貸契約を親がしていたのであれば、子どもの名義で新規に契約書を
交わすことが必要です。

その場合、親の支払った保証金の額や親が生存中に支払っていた借地料の額などは、そのまま引き継がれることもあれば、親との契約が切れたとして一旦返却されて、改めて、子どもと契約書を交わして、請求される場合あります。

いずれにせよ、早くから対策を考えておくことが必要です。

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image by:PR Image Factory / ShutterStock.com

【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』(2019年6月5日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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