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日銀は追加緩和を検討する際に、短期金利の引き下げを考慮/今週の動きと来週の予想=久保田博幸

日銀金融政策決定会合の議事要旨で、追加緩和による副作用の緩和を検討する必要があるとしている。現状、日銀は長期金利をコントロールしているかに思われる。(『牛熊ウイークリー』久保田博幸)

※本記事は有料メルマガ『牛熊ウイークリー』2019年9月27日号を一部抜粋したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

消費税導入の行方や日銀達観発表など、日銀の対応にも注意

今週の動き

米中協議の先行き不透明感から20日の米債は買われ、23日はドイツのPMIの悪化などから欧州の国債が買い進まれた。24日の債券先物は買い戻しが先行し、23銭高の154円96銭で寄り付いた。

その後、155円台を回復。この日の中期ゾーンの日銀の国債買入での金額の変更はなし。債券先物の引けは30銭高の155円03銭となった。

米国のペロシ下院議長がトランプ大統領の弾劾に関する調査開始を発表すると報じられた。米経済減速への警戒感、米中摩擦への懸念、そして米政治リスクなどが意識され、24日の米10年債利回りは1.64%に低下した。24日に黒田日銀総裁は講演で、仮に短中期金利を下げることになれば、超長期金利が行き過ぎた低下をすることがないよう必要に応じて国債買い入れを調整すると述べた。追加緩和観測も出てきたことから25日の債券先物は買い進まれた

40年国債入札はやや低調な結果となり、40年債などには売りが入ったが、中長期債は買われ、債券先物の引けは31銭高の155円34銭。

25日の米債安もあり26日の債券先物は売りが先行した。26日に日銀は長期ゾーンの買入額を減額し、10年債などには売りが入るが、超長期債には押し目買いが入った。この日の債券先物の引けは11銭安の155円23銭。

27日の債券先物は戻り売りに押され、引けは6銭安の155円17銭となった。

来週の予想

7月29、30日に開催された日銀金融政策決定会合の議事要旨によると、仮に追加緩和により副作用が生じるならば、それを緩和する方法を検討する必要があると指摘したとあった。24日の黒田日銀総裁の講演でも同様の発言があった。日銀は仮に追加緩和を検討する際に、その手段は短期金利の引き下げを考慮しているとみられ、それによってイールドカーブのスティープ化も防ぐ対応を取ろうとしている。

すでにその準備も進められているようで、それが長期ゾーンや超長期ゾーンの国債買入の減額となっている。現状、日銀は長期金利をコントロールしているかに思われるが、果たしてイールドカーブの形状を思うように操作することはできるのかは不透明である。

当面の債券市場は米中の通商交渉やトランプ大統領の弾劾に関する調査の行方、そして今後の景気動向などリスク要因の動向と、それによる欧米の長期金利の動きなど見ながら、慎重な取引となるのではないかと思われる。

30日夕方の日銀の来月の国債買入スケジュールも注目されよう。下期に入っての国内投資家の動向にも注意したい。

10月1日には日銀短観が発表される。大企業・製造業のDIは悪化との予想となっており、国内の景気動向に対してあらためて注目度が高まることも予想され、こちらも注意したい。1日には10年債入札も予定されている。

長期金利の予想レンジ -0.250~-0.150%

Next: 日本の経済実態からみれば、消費者物価指数は0~1%程度が落ち着きどころ



日本の消費者物価指数は低迷

9月20日に総務省が発表した8月の全国消費者物価指数は、総合指数が前年同月比プラス0.3%、日銀の物価目標となっている生鮮食品を除く総合は同プラス0.5%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合は同プラス0.6%となった。

コア指数のプラスは32か月連続となったが、2017年7以来の低い伸びに止まった。また、総合のプラス0.3%は今年2月のプラス0.2%以来の伸びの低さとなった。

寄与度でみると、上昇に寄与したのはアイスクリームの値上げなどによる菓子類、そして外食や電気代となっていた。これに対して下落への寄与度は、生鮮食料品が大きく、これが総合の前年同月比の伸びを縮小させた。それだけでなく、ガソリン価格の下落なども影響した。

さらに携帯電話の通信料の下落も物価を押し下げた格好となった。

ガソリン価格については中東情勢の緊迫化などもあり、ここにきて値動きも大きくなってきているが、いまのところ方向性は掴めない。米中の通商交渉の行方も不透明感を強め、世界経済の減速懸念も強まっている。原油そのものへの需要が後退してくる可能性もある。

ここにきての消費者物価指数の動向から見て、日本の物価は再びゼロ近傍になってくる可能性もある。日銀の物価目標は依然として消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の2%としているが、日本の経済実態からみれば、ゼロ%から1%あたりが落ち着きどころなのではなかろうかと思われる。

ちなみに米国の8月の消費者物価指数は、前年同月比1.7%上昇。変動の激しいエネルギーと食品を除いたコア指数は2.4%上昇となっていた。FRBの物価目標はPCEデフレータであるが、消費者物価指数で見る限り、米国は2%近辺が落ち着きどころともみられる。

国によって物価を巡る環境は異なるとともに、計算方法も異なってくる。グローバルスタンダードだからといって2%が絶対的なものではない。少なくとも金融政策で無理矢理に日本の物価を上昇させることは困難であることは明らかとなっている。

もしそうであるのであれば、日銀は物価目標そのものを本来あるべき水準に引き下げるべきではないかと思うが、そうもいかないようである。

10月には消費増税がスタートする。8月の消費者物価指数について総務省は「増税前の駆け込み需要が出ているかはわからない」との見解を示した。

前回の2014年の増税時に比べると、いまのところそれほどの駆け込み需要が出てるようには思えない。

2014年の際にはこの駆け込み需要に円安効果も加わって物価の上昇圧力となっていたが、
どうやら今回はそれほどの物価上昇圧力とはなりそうもない

Next: 来週、2019年9月30日~10月4日分の主なイベント



9月30日 (月)
金融政策決定会合における主な意見(9月18・19日分)
8月小売業販売額
8月百貨店・スーパー販売額(既存店)
8月鉱工業生産速報値
8月新設住宅着工戸数
英4~6月期GDP改定値)
ドイツ9月消費者物価指数
9月シカゴ購買部協会景気指数

10月1日(火)
日銀短観
10年利付国債入札
8月失業率・有効求人倍率
ユーロ圏9月消費者物価指数
米9月ISM製造業景況指数
米8月建設支出

10月2日(水)
マネタリーベース(9月)
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高
米MBA住宅ローン申請指数
米9月ADP雇用統計

10月3日(木)
日銀布野審議委員公園(島根)
日銀需給ギャップと潜在成長率
流動性供給入札(残存期間15.5年超39年未満)
新規失業保険申請件数
米8月製造業新規受注
米9月ISM非製造業景況指数

10月4日(金)
国庫短期証券(3か月物)入札
米9月雇用統計
米8月貿易収支


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image by : Sasun Bughdaryan / Shutterstock.com

牛熊ウイークリー』(2019年9月27日号)より一部抜粋
※見出し、太字はMONEY VOICE編集部による

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