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社債分野で巨大に膨れあがるバブルはいつまで保つ?FRBが握る、アメリカ経済の行方=藤井まり子

IPO前のユニコーンの発行する社債や、レバレッジドローン分野など社債分野でバブルが巨大に膨れあがるアメリカ経済。この崩壊はいったい、いつ起こるのでしょう。(『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』藤井まり子)

※本記事は有料メルマガ『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』2019年10月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

静かに幕を閉じ始めた「社債バブル」、景気を温存するか否か

アメリカは長期債務サイクルの終盤局面、これが「社債バブル」の正体だ

サブプライム危機(リーマンショック)は、2008年秋に起きました。11年後の2019年のアメリカ株式市場は、「サブプライム危機の1年前の2007年のマーケット」にどこかしら似てきています。

おりしも、2019年のアメリカの民間企業は「長期債務サイクルの終盤」に入っています。

今現在のアメリカの民間企業の債務残高はおよそ15兆ドル、名目GDPの7割を超えている状態です。この水準は、リーマンショック前の最高水準を既に越えています。

明らかに今のアメリカ経済は、「長期債務サイクルの終盤」局面なのです。

アメリカでは、比較的信用度の低い「BBB格以下の企業」の社債発行が目立っています。特に、シェールオイル分野を中心にして、BBB格付けの企業が極めて大量の社債を発行しています。

超低金利の中で、イールドハンターたちがこぞってこういったハイイールド債もどきを購入しているのです。

BBB格社債は、一応は今のところ「投資適格債」に位置づけられていますが、次の景気後退期には、BB格の「投機的クラス」に格下げされるとみられています。

バブルは社債分野で巨大に膨れあがっているのです!

さらに、IPO前のユニコーンの発行する社債や、レバレッジドローン分野などなどの「信用度の低い企業の社債」発行分野でも、バブルが発生しています。

レバレッジドローンから組成された「CLO」では、前回サブプライムバブル時の「CDO」の組成(そせい)のやり方をそっくりそのまま真似て、「リスクの所在」を分かりにくくしています。毎度毎度、超ハイリスクなのに「トリプルA格付け」されてミドルリターンで発行されているのです。

この「CLO」は、およそ6,000憶ドルを越えて世界中にばらまかれているようです。

(サブプライムの「CDO」の発行額は、2007年には約1兆7,800億ドルにも膨れあがっていました。当時の「CDO」規模には及ばないものの、今回の「CLO」も6,000億ドル規模にまで膨張しているわけです。この「CLO」、日本の金融機関では農林中金が8兆円、三菱UFJフィナンシャルグループが2.6兆円、ゆうちょ銀行が1.3兆円保有しているということです)

今年2019年に入ってからは、「CLO」からの資金流出が静かに始まっています。

いつ何時、こういった資金流出が、非投資適格債(ハイイールド債)や投資適格だけどリスクの高いBBB格社債からの資金流出へと飛び火し始めても不思議ではありません。

アメリカ株式市場は、早ければ2019年第4四半期(10~12月)あたりから下落が始まって、2020年の秋あたりには、最大では高値圏から40%前後の暴落が起きる可能性が今から指摘されます。

この暴落が起きれば、アメリカ経済も一巻の終わり、リセッション入り(2期連続のマイナス成長)を免れません。

ただし、次章で述べるように、今後のパウエルFRBの出方次第では、こういった「大暴落」や「景気後退入り」は当面免れて、アメリカの景気拡大期はまだまだ1年半から2年くらい、2021年まで延長される可能性も指摘されています。

Next: パウエルFRB総裁は、さらなる利下げへと打って出るのか?



アメリカの景気拡大期が延長される可能性について

「利下げ」を継続して「債券バブル」温存か?それとも、「利下げ」を打ち止めして「債券バブル」崩壊か?意見が大きく対立するFOMC内部。

パウエルFRBのメンバーたちが、今後「さらなる利下げによって人為的に債券バブルを温存、リセッション入りを回避する覚悟を決めた」ならば(言い換えたら、トランプ大統領に魂を売ったならば)、アメリカ株は景気拡大期を2021年以降まで引き延ばせる可能性があります。

アメリカ株は向こう1年半くらいは「ボックス相場入り」だけで済むかもしれません。

そうなれば、アメリカ経済も「四半期2期連続のマイナス成長(リセッション入り)」は2021年あたりまで回避可能かもしれません。

アメリカでは、9月17日~18日にFOMCが開催され、7月に続いて「0.25%の利下げ」が実施されました。が、この9月のFOMCでは、「その後の利下げ見通し」で、FOMC内のメンバー17人の意見が3つに大きく割れて対立していることが、明らかになりました。

FOMC後の記者会見でも、パウエルFRB議長の発言は想定以上に「タカ派」的でした。

ここはとても重要なことなのですが、
    ↓  ↓  ↓
FOMCメンバーによる「今後の政策金利見通し(ドット・チャート)」では、
・17人のメンバーのうち7人が、今年末までにさらに1回(0.25%)の利下げを見込んでいる一方で、
・5人は金利据え置きを見込み、
・残り5人は0.25%の利上げ(今回引き下げたFF金利を元に戻すこと)を見込んでいたのでした!

今の時点で、なんとなんと5人ものメンバーが「利上げ」を主張していたんですよね!

この意見対立が表していることは、
    ↓  ↓  ↓
・利下げを見込むメンバーの7人は、「今後は人為的に景気を過熱気味にして、人為的に債券バブルを温存させてでも、『アメリカ経済の来たるべく景気後退入り』を未然に防止して、少しでも景気拡大期を引き延ばしてゆこう」と考えている(トランプ大統領へ魂を売っている)ということです。

・残りメンバーのうち5人は、政策金利の引き下げは7月と9月の合計5回ですでに十分で、「アメリア経済が今後減速して、もしかしたら債券バブルが弾けてしまってリセッション入りするとしても、それはそれで自然な景気循環なのだから仕方がない。成り行きに任せよう」「FRBが人為的に債券バブルを温存することには反対」と考えている(大統領の魂を売っていない)ということです。

・残りのメンバー5人は、今の時点で既にアメリカ経済は過熱気味なので、「たとえ近い将来景気減速や景気後退が起こるとしても、利上げは断行して、今現在の景気の過熱をいくばくか冷やさなければならない」「債券バブルは弾けても致し方ない」と考えている(大統領に魂を売っていない。)ということなのです。

すなわち、「今後、人為的に景気を過熱させて人為的に債券バブルを温存してでも、アメリカ経済の景気拡大期を少しでも引き延ばそう」とするメンバーは、半数以下のたったの7人なのです。

その他の半数以上の10人のメンバーたちは、「今後、アメリカ経済が減速してゆくのは景気循環から見て自然なこと。不自然な利下げで人為的な債券バブルを温存してはいけない」とする立場なのです。

「9月18日の想定以上にタカ派的なFOMCの発表」を受けて、マーケットがネガティブな反応を示さなかったことは、とても意外です。

かように、バブル(陶酔)が弾けるのは、いつの世も、とてもとても時間がかかるものなんですね。

Next: この債券バブルがはじけるのは、いったいいつになるのか?



バブル(陶酔)が弾けるには、とてもとても時間がかかる

2006年に「逆イールドカーブ」が発生したとき、強気派たちは「金融工学が発達したので、アメリカの住宅価格はもう決して下落しない」と主張していました。2007年当時も、陶酔(ユーフォリア)から「景気後退は来ない」と多くの人々が感じていたのです。2007年10月に「撤退」を叫んだ私は、多くの人からさんざん馬鹿にされ叩かれました。

1998年に「逆イールドカーブ」が発生した時は、強気派たちは「ITなどの新テクノロジーが新たなパラダイムを生み出した」「新たなパラダイムは従来型の景気サイクルを時代遅れにする」と主張したらしいです。

けれども、2019年、アメリカではもう既に民間企業たちはイケイケでめいっぱい債務(=主に社債)を積み上げてしまっているのです。

あとは、この債務の山がいつ崩れ始めるか…時間の問題です。

バブルはいつの世も姿形を変えて「This TIME Is Different(今回ばっかりは違う)」を主張します。

ユーフォリア(陶酔)が弾けるには、いつの世も1年から1年半といった長い時間が必要なのでしょう。

けれども、「逆イールドカーブ」が発生してしまっているわけですから、私たちは、決して「慢心」してはいけないのです。

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【要注意!】なお、資産形成および投資は、必ず「自己責任」でお願いします。この記事は藤井まり子の個人的見解を述べたもので、当メルマガ及び記事を読むことで何らかの経済的及び精神的被害を被ったとしても、当方は一切責任を負いません。

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image by: iatlo / Shutterstock.com

藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』(2019年10月1日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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