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【10月米雇用統計】まずまずの数字が出ても、後に控えるISM発表に注意が必要=ゆきママ

堅調な値動きを続けていたドル円は、先月に続いてまたもや雇用統計直前に急落してしまいました。それでは、今月もこの急落の背景を踏まえながら、雇用統計のトレード戦略について考えていきたいと思います。(『ゆきママのブログでは書けないFXレポート(無料板)』『お値段以上!?ゆきママの「週刊為替予測レポート」(有料板)』FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)

想定レンジは1ドル=106.00~108.60円、今夜のトレード戦略は?

米経済の停滞を覆い隠していた米中合意期待が剥落して急落

先月は10年ぶりの低水準となったISM(米供給管理協会)製造業指数がきっかけとなって株価とともにドル円が比較的大きめの調整をしましたが、今月は米中合意への疑義がきっかけとなっています。

匿名筋の話として中国政府当局者が包括的な合意の実現に疑問を抱いているとのこと。中国はこれ以上の譲歩はしないとし、米国側が関税を撤廃する意向を示さない限り、さらなる合意には至らないと警告したと報じられています。

中身がないと批判されていた部分合意すらままならない中、報道が事実であるとすれば、中国が重要課題である知的財産権保護と国営企業優遇・補助金供与で譲歩しないということで、もはや米中通商交渉そのものが意義が問われることになりそうです。

そして、ここ数ヵ月は米経済の停滞感が経済指標の数字からも意識されていましたが、米企業決算の好調さや中国との通商交渉進展期待が覆い隠す形でリスクオン(選好)の株高、さらに円安となっていましたが、今回、そのうちの1つが変調という流れですね。

今週発表された企業決算は概ね好調ですし、米GDPなど重要な米国の経済指標もまずまずといった中で株価はギリギリ高値権を保っていますが、流石に今日の雇用統計やISMが予想を下回る数字となると調整の始まりになる可能性があります。

特に今年は株価が最高値を更新した直後に大きな調整を伴うのがパターンとなっていますので、その可能性を考えながら数字と結果を見ていく必要があるでしょう。

Next: それなりにハードルの高い非農業部門雇用者数をクリアできるのか?



GMのストライキが雇用者数を大きく押し下げるか?

自動車大手GM(ゼネラル・モーターズ)のストライキの影響により、今日発表される10月雇用統計の非農業部門雇用者数が、少なくとも4.6万人分押し下げられる可能性があると米労働省が発表しています。

ストライキ期間中の従業員は無休となり、統計上は失業者として扱われるとのことですから、今日の雇用統計は割り引いて考える必要があります。

注目の非農業部門雇用者数の事前予想値は+8.5万人と弱い数字を想定しているように見えますが、当然ですが、これは4.6万人の下押しをあらかじめ差し引いた数字です。

8.5万人に4.6万人を足せば+13.1万人と実はそこそこの数字を想定しており、ハードルはそれなりに高い点に注意でしょう。

今月は雇用統計後に発表されるISMにも警戒したい

今月はISMが雇用統計後の発表となりますので、その点も注意しておきましょう。雇用統計は21:30でISM製造業指数は23:00発表です。雇用統計がまずまずの数字でもISMが予想を下回って反落、あるいは逆のパターンもあり得ますからね。

図1:先行指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)

先行指標に関しては、ISMが未発表のため、手がかりを見出すことはなかなか難しそうです。とはいえ、ADP雇用報告が若干弱く、新規失業保険申請件数も僅かに増えて悪化していますから、極端に弱い数字を想定する必要はありませんが、強気になれる傾向はないとの見方で良さそうです。

失業率は若干の上昇想定ですが、既に歴史的な低水準なので、あまり気にする必要はないでしょう。

非農業部門雇用者数は先ほども書いたようにGM従業員のストライキの影響が多いため、+5.0万人を割り込んでくるという数字にならない限りは、そこまでネガティブサプライズでもありません。

平均時給については、やや強めの数字が織り込まれていますが、インフレを期待する向きはあまりないので、多少弱い程度なら、あまり問題視はされなそうです。

Next: 想定は1ドル=106.00~108.60円、今夜のトレード戦略は?



今夜の想定レートは106.00~108.60円!下落余地に警戒!

今夜は雇用統計とISMの数字なりに動いていくでしょうが、強い数字による上昇余地よりは弱い数字による下落余地の方が大きいと考えています。

昨日今日の急落の他に根強いドル安が現在の相場の根幹にあり、それは今週のFOMC(米連邦公開市場委員会)の動向を強く受けています。

FOMCでパウエル FRB議長は、経済の下振れによる利下げ余地こそあるものの、著しいインフレ上昇でもない限りは利上げをしないと明言しています。

つまり、利下げこそあるものの利上げはないという見方でドル安が続いていますから、非の打ちどころのない数字が並べば別として、予想並みか多少強い程度ならリスクオンの円売りでもドルはそれほど買い戻されず、上値は重いままでしょう。

むしろ、事前予想値を下回ってくるのであれば、株価の調整とともにズルズルと下方向へ行きそうです。

図2:ドル円(日足)チャート

ダウが史上最高値を更新していくような、予想値を大幅に上回るような数字が並べば別として、予想値を上回っても基本的には108円台半ばから後半にかけては上値が重たくなるでしょう。

逆に下値に関しては107円台半ば、89日移動平均線のある107.50円が支えとなりそうですが、ここを割り込むと106円台半ばぐらいまで見えそうです。

したがって、トレード戦略としてはショート・戻り売りが基本となるでしょう。107円台で売っていくのはやや躊躇われますが、108円台に頭を出している状態なら軽く売り、発表前にジワリ高なら売りポジ追加でしょう。

予想値を上回る強めの数字が出た場合は、ISMもあるので損切り。弱い数字が並んだ場合、107.50円で下げ止まるなら一旦利益確定、もしここで下げ止まらないならホールドして利益を伸ばしていきたいところです。

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image by : MillaF / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2019年11月1日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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