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GSOMIA失効が韓国衰退への分岐点に?反日利権を優先した文政権の罪=勝又壽良

GSOMIA失効が23日午前0時に迫っているが、継続は期待薄だろう。失効となれば、打撃を受けるのは日韓どちらか。それは、軍事面でも経済面でも「韓国」である。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2019年11月18日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

本当に日米韓の協力関係は消えるのか?最も打撃を受けるのは韓国

GSOMIA失効、避けられない見通し

韓国は、GSOMIA(日韓軍事情報包括的保護協定)失効を11月23日午前0時に迎える。

文大統領は、エスパー米国防長官との会談でも破棄の意思を変えなかった。日本が、「ホワイト国除外」を撤回しない限り、応じないというのだ。

日本は、「ホワイト国除外」措置を変更する意思がないので、現時点ではGSOMIA失効は避けられない見通しとなっている。

米国務省高官は11月15日、『中央日報』(11月17日付)報道の「防衛費・GSOMIAと韓国に重なる悪材」によれば、次のように指摘している。

GSOMIAは、韓国の徴用工問題(補償判決)とそれに対するさまざまな対応で始まった日韓両国の問題である。韓国首相が天皇即位式に参加し、東アジア首脳会議で日韓首脳が笑う写真も公開された。本当に必要なことは、日韓関係が再び前に進むよう始動すること。そのためには、GSOMIA維持が呼び水になり得ると示唆した。

この示唆は、重要な意味を持っている。

日韓紛争は韓国に原因

GSOMIA問題の発端は、韓国が歴史問題を持ち出したことにある。

韓国は、歴史問題と経済問題を絡めてきたと日本を非難するが、徴用工問題は1965年の日韓基本条約で解決済みなのだ。韓国大法院が、日本に賠償を命じたとしても、それは日本の預かり知らぬことである。韓国国内の問題である。

条約が、国内法に優先することは国際ルールである。別の表現をすれば、司法は、条約に対して「自制主義」の立場を取るものとされている。つまり、司法は条約に対して介入してはならないのだ。

韓国大法院は、このルールを無視した。米国が、「日韓問題に介入しない」と言い続けている原点は、韓国大法院判決の不当性を見抜き、日本が「ホワイト国除外」にしたことに理解を見せている結果である。

先の米国務省高官の発言は、言外にそれを認めている。韓国が、GSOMIAを継続することで、日韓関係を軌道に乗せるべきだという意味である。

Next: GSOMIA継続は不可能?失効で打撃を受けるのは日本か、韓国か



GSOMIA失効で打撃を受けるのは韓国

米国務省高官発言と同様な発言が、中国メディア『中国経済網』(11月11日付)の「日韓は本当に和解に向かえるのか?」と題する記事にも見られる。

「日本の『ホワイト国除外』の背景には、長年にわたって争いが続く慰安婦問題や徴用工問題において、韓国政府の言動への日本の厳しい不満がある」と指摘している。日本の対応を理解しているのだ。

外交的に見れば、日本による「ホワイト国除外」は、韓国による度を超した歴史問題への遡及に対し、堪忍袋の緒が切れた結果である。これは、米中から理解が得られたと言えるのだ。

日韓問題の解決は、米国務省高官の発言のように、韓国がGSOMIAを継続することが前提だ。それを契機に、日韓の話し合いが進むであろうという米国の期待感が表明されている。

韓国文政権は、自分が絶対に正しいという立場である。日本が、それ故「ホワイト国除外」を解除しなければ、GSOMIA継続は期待薄であろう。日本は、撤回の意思がない。現状では、GSOMIA継続は不可能であろう。

そのような結論が出た場合、打撃を受けるのは日韓どちらか

それは、軍事面でも経済面でも韓国である。

安保で脆弱性が目立つ

まず、軍事面での見方を紹介したい。

北朝鮮のミサイルは、打ち上げから数分後に韓国に到達するため、緊密な米韓連合作戦が必要である。イスラエル、日本、NATOは米国との統合作戦はもちろんのこと、定期的な合同演習や武器共同開発など高い水準で協力関係を維持している。韓国は初心者程度の協力さえ行っていない。

出典:北のグッド・モーニング・ミサイルを防ぐ最適の一手 – 中央日報(11月17日配信)

現政権はこれに加えて、「THAADの追加配置、米国のミサイル防御と統合、韓米日同盟」を結ばないし、行わないという三つの不履行を中国の前で誓っている。後日、最悪の中華事大として記憶されることだろう。

出典:同上

韓国がGSOMIA破棄で、日本の軍事衛星からのリアルタイム情報が消えたらどうするのかという不安だ。国民の生命と財産を守るべき政府が、感情論でGSOMIA破棄したのでは責任放棄である。まさに、根本的な問題を投げかけている。

韓国大統領府が、いくら防衛・軍事の非専門家の集まりといえど、常識論でもGSOMIA破棄が危険であることは分かるはずである。

Next: 選挙優先で「安全保障」は置き去り? 経済面でも大打撃を受ける



選挙優先で「安全保障」は置き去りに

それをあえて破棄しようとしているのは、その裏に来年4月の総選挙が控えていることだ。大衆世論は、安保について素人ゆえ、「反日」感情論に左右されている。

GSOMIA破棄=反日という認識を利用して、総選挙で与党勝利という構図を描いている結果であろう。

チョ、グク前法相を任命する際も、同じ間違いに陥っていた。与党支持基盤から、グク氏は熱烈な支持を受けていた。文大統領は、この高い支持率に目が眩み、疑惑の多いグク氏を法相に任命した。それが、家族にからむ事件から30日で退任せざるを得なかった。

GSOMIA破棄も、事前に多くの問題点が指摘されている。政府は、世論調査で高い支持率を得ていることで、来春の総選挙目当てにして破棄を決めれば、安全保障政策とは何か。そういう深刻な問題を提起するだろう。

経済的な損害は韓国に

経済面では、韓国に目先と将来の面でマイナス影響が予想される。

短期的には、航空会社の経営に大きな影響が出ている。7〜9月期の韓国航空会社は、最終損益で全社が赤字となった。原因は、反日不買によって日本への旅行客急減である。

大手航空会社の場合、日本路線の売り上げが1割程度とされる、LCC(格安航空)では、3割超〜4割超が日本路線による売上である。7〜9月期は例年、業務の超繁忙期である。この期間が、反日不買によって訪日観光客が激減し、航空会社経営に大きな打撃を与えた。

大手旅行会社では、率先して反日活動を行い、インターネットでの「日本案内」を中止するという過激な行動に出た。これが、訪日旅行客を激減させる誘因になった。

皮肉なものだ。政府が、経営左前の旅行会社への緊急融資を迫られる事態になっている。

訪日旅行客は、今年1〜9月累計では全体で前年同期比4.0%増であった。その中で、韓国が同13.4%減、中国は同14.8%増を記録した。韓国の落ち込みが「反日不買」であることは言うまでもない

韓国の大幅落ち込みは、韓国航空会社の経営を圧迫した。実は、反日で訪日旅行を止めたにしても、他の地域への代替の海外旅行があれば、旅行会社や航空会社も経営に大きく響くことはなかった。不思議なのは、日本旅行を取り止めた人たちが、他地域へ流れなかったことだ。

韓国では、日本旅行が「短距離・清潔・サービス」などの点で最高評価を受けていると言う。当然、リピーターが過半を占めているのであろう。これら「日本通」が、反日騒ぎで日本旅行をしづらい雰囲気で、海外旅行そのものを取り止めたと見られる。

これが、訪日旅行減=航空会社の赤字=旅行案内会社の赤字と連鎖した背景だ。

Next: 文政権の反日が元凶? 政治が絡まなければ普通の隣人でいられる



政治が絡まなければ、日韓は普通の隣人でいられる

日本が、韓国の海外旅行の有力先になってきた背景を考えると、1つの結論が出てくるように思える。

それは、日本と韓国の関係が、1965年の国交回復以降のことでなく、1910年の日韓併合時代以来、110年にも及ぶ関係があることだ。この間の歴史が愛憎に満ちたものにしても、密接な交流があった事実を消せないだろう。

ソウルの郊外へ行けば、日本の街を歩いているような錯覚を覚える。そこは韓国であるが、風景は日本とそれほど変わるわけでもない。言葉が違うだけで、顔つきは日本人と違いがあるわけでない。この感覚は、韓国側から見ても同じで、差があるとは思えない。要するに、韓国の訪日旅行者も、きわめてリラックスして「隣町」の日本へ出かける雰囲気と思われる。

日韓の経済関係は、感情的な対立さえなければごく普通の「隣人」なのだ

そこへ、政治的な思惑がからんで「謝罪しろ」「賠償しろ」という隣人らしからぬ問題が入り込んでくる。これが現状である。

文政権の反日が最大の元凶

もし、文在寅政権が生まれず、保守派政権が継続していたならば、ここまで日韓関係が紛糾することはなかった。問題が起これば、話し合いで解決できたはずだ。

文政権の場合は、「反日」によって保守派を排除する目的である。文政権と与党は、「20年間進歩派政権構想」を大真面目に推進してきたのである。

この超長期与党政権維持を前提に、これまで文在寅氏はあらゆる謀略を行って来た。その挙げ句が、GSOMIA破棄である。

文氏は、大統領就任2年半で反日懸案事項はすべて「完了」という思いであろう。それだけに、日韓関係が最悪の事態に落ち込んだのは当然なのだ。

文政権は、これまで110年間に及んだ日韓関係をズタズタにした。これは、韓国経済に大きな衝撃を与えている。航空会社の7〜9月期の赤字決算は、日韓関係を断ち切られた象徴に見える。

韓国政府は、大学生に日本企業への就職斡旋をわざわざ2ヶ月も遅らせる妨害をした。韓国大学生から不評を買ったが、11月中旬に開催されて、1,000名以上の大学生が詰めかけた。韓国の学生が、国内と同じ感覚で日本企業の就職試験を受ける気持ちは、遠い外国へ行くのでなく、「隣町の会社」という感覚であろう。

韓国の地方自治体では、日本企業へ就職する奨励金を30万円も出していた。「NO JAPAN」の反日不買騒ぎで、この就職奨励金は続いているか気掛かりである。

Next: 極端な日本排撃運動に出た文在寅政権。その裏には利権がある?



極端な日本排撃運動に出た文在寅政権

日韓の底流には、110年間の草の根交流の実績がある。

戦前の対馬は、天候さえ良ければ小舟で釜山へ買い物に出かけていた。古老が話してくれたものだ。こういう類いの話は、現地に山ほどあるに違いない。

文政権の反日は、こういう「草の根過去史」をすべて抹殺する暴力である。韓国の学校校庭の景色になっている「カイヅカイブキ」が、親日の象徴として伐採する運動まで起こさせたのである。

カンボジアのポルポト派による残虐事件(1976〜79年)ほどではないが、文在寅政権は極端な日本排撃運動に出ている。これも「20年間政権」推進の一端であろう。

こういう過程を経て辿り着いたのが、現在のGSOMIA破棄である。

GSOMIAは反日の砦

GSOMIA破棄は、きわめて根が深い問題である。反日の砦になっているからだ。

これによって、日本との関係を人為的に絶たれる結果、韓国経済に累が及ぶことは必至である。

日本は、韓国が反日運動をやっても、市場が大きいからそのマイナス分は十分に吸収可能だ。韓国の場合、航空会社の赤字経営のように、「日本需要」が消えれば、カバーできず赤字に沈むのである。

反日の裏には必ず文政権を支える市民団体がいる

文政権は、日本との間にできるだけ壁をつくって遮断しようとしている。日本の水産物には、放射能汚染という風評被害をつくり上げてきた。

これには裏があって、韓国の原子力発電を止め、太陽光発電を有利にさせる策略の一環である。

文政権は原発を中止して、太陽光発電に多額の補助金を流している。この受け皿が、文政権を支える市民団体である。

韓国の太陽光発電利権を守るため、福島県などの海産物に風評被害をまき散らし、利権の犠牲にさせている。日本も対抗策で、韓国に漁場を開放せず禁漁処分を続けている。

日韓で話し合えば解決する問題だが、韓国の市民団体という利権集団が絡んでいる故、解決できずにいる。

旭日旗問題慰安婦問題など、この裏には必ず市民団体が控えているのだ。

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勝又壽良の経済時評』(2019年11月18日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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経済記者30年と大学教授17年の経験を生かして、内外の経済問題について取り上げる。2010年からブログを毎日、書き続けてきた。この間、著書も数冊出版している。今後も、この姿勢を続ける。

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