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海外で日本経済見直し論が復活、2020年は「アベノミクス第3弾」の開幕となるか=藤井まり子

12月2日のアメリカ市場では、わずかですがドル安・ドル国債安(=長期金利の上昇)・株安の「トリプル安」が起きました。このまま続落してしまうのでしょうか?(『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』藤井まり子)

※本記事は有料メルマガ『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』2019年12月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

2021年、日経平均は3万円へ?出遅れの日本株にチャンスあり

12月2日のアメリカ・マーケットは「ミニ・トリプル安」

12月2日のアメリカ市場では、ほんのわずかですが「トリプル安」が起きました(ダウが260ドル以上も下落すると「大幅続落か?」と勘違いしそうですが、わずか1.00%未満の下落です)。

「トリプル安」とは、こちらメルマガで繰り返しお伝えしておりますように、「ドル安・ドル国債安(=長期金利の上昇)・株安」です。

今までのアメリカ・マーケットでは、滅多なことには「トリプル安」は起きませんでしたが、「景気サイクル終盤」に入ったアメリカ株式市場では、12月2日型の「ミニトリプル安」は、今後はしょっちゅう起きることでしょう。

難しい話になりますが、今のアメリカの実体経済は、ダブルバインド(二重に縛られている)状態です。かたや「社債の金利(社債バブル)」に縛られている一方で、かたや「ドル国債の金利(国債バブル)」に縛られているのです。

すなわち、「ミニトリプル安」のメカニズムとは、「アメリカの株価が将来を楽観してイケイケになると、アメリカの長期金利(ドル国債の金利)が上昇、この長期金利の上昇が社債バブル(特に、BBB格の社債)に冷や水を浴びせて、それが、株価を下げてしまう」という「メカニズム」になっているのです。

こういった「ダブルバインドのメカニズム」が働いているので、2020年のアメリカ株は大きく下げることはないでしょうが、大きく上げることもないでしょう。

したがって、2020年以降は相対的に「日本株式市場の魅力(上昇余地の大きさ)」が見直されることでしょう。詳しくは、末章で解説。

とはいえ、グローバル規模での株式ブームは、社債バブルもドル国債バブルもまだまだ弾けない(スクイーズしない)ために、まだまだ2~3年は継続しそうです。

今現在のグローバル規模の株式ブームは、登山で言えば「8合目」あたりか?

私たちは、向こう1~2年、あるいは向こう2~3年は、こういった「ミニトリプル安」が起きるたびに、上手に日本株を中心に「押し目買い」をしてゆけばよいのではないでしょうか。

Next: 株式ブームは、2020年も2021年も継続する?



上がりすぎた米・欧州株よりも、出遅れの日本株と新興国株に上昇余地?

2020年の日米欧では「金融と財政の一体化」政策がいよいよ本格化しそうです。

「金融と財政の一体化」と言えば、聞こえは良いですが、
     ↓  ↓  ↓
「大不況の中では中銀による金融緩和だけでも効果があったけど、景気がそこそこ回復してきたら、『中銀による金融緩和だけでは2%インフレ目標を達成して出口を模索する』ことはできそうもないことが証明されたので、2020年からは『金融緩和も継続しながら、そのうえで予防的な財政出動をも行って、引き続き景気を刺激して2%インフレを目指して出口をもう一度模索』してゆこう」ということです。

日本ではいよいよ2020年から「およそ10兆円規模のヘリマネ出動」となることでしょう。

アメリカでは、肝心のトランプ大統領の発言が二転三転するので、「対中国・関税棚上げ」が本当にマーケット期待通りに15日に棚上げされるかどうかは、確信を持てないところもまだありますが、たぶん、十中八九、トランプは12月15日に棚上げを発表することでしょう。

たとえ紆余曲折を経ても、2020年11月の大統領選挙を意識しているトランプ政権は、「対中関税の引き下げとゼロ撤廃」を断行して、アメリカ経済を刺激してくることでしょう。景気失速に苦しむ中国側も、米中貿易交渉ではアメリカになんらかの大幅譲歩をして来ざるを得ないはず。

日本の安倍自民党政権が10兆円ものヘリマネ出動を行えば、さらには、トランプ政権が対中関税を撤廃すれば、2020年以降のグローバル経済のファンダメンタルズは即座に改善してゆくことでしょう。

なぜならば、財政刺激策は、(効果が出るまで半年から1年もの時間がかかる金融緩和策とは違って、)即座に効いてくるものだからです。

「予防的な財政刺激策」がリセッション入りを回避、世界はプチ好況へ

先週までは、「大統領選挙までは向こう1年間なんとかアメリカ株高は維持されるものの、大統領選挙後はその反動で株価が大幅下落、アメリカ経済は『プチ不況入り』。その後、ヘリマネ出動で、世界は『この『プチ不況』から回復。「プチ好況」へ。』といったメインシナリオを描いていました。

ところが、このメインシナリオ、ここ一週間で、大きく様変わりしました!

Next: 新たなメインシナリオとは?予防的な財政刺激策でプチ不況を回避



ここ1週間くらいの間に、10兆円補正予算の動きが活発化

日米欧の政策担当者、特に日本の安倍晋三政権とユーロ圏のラガルド新ECB総裁、そしてトランプ政権は、当メルマガの予想をはるかに超えた「貪欲さ」を持っているようです。

日米欧の政治家たちは、悠長に「来るべき、2021年以降のプチ不況」に甘んじるつもりはなく、果敢に「プチ不況」を回避するために、2020年は「予防的な財政刺激策(悪い言葉を使えば、ヘリコプターマネー)」をびしばし発動する覚悟を決めてるようです。

2019年は、「予防的な利下げ」が世界経済を「プチ不況入り」「リセッション入り」から救いましたが、2020年は、「予防的な財政刺激策」が世界経済を「プチ不況入り」から救うことでしょう。

ですから、この「最後の一刷毛」は、2021年以降も継続することでしょう。

以下もうちょっと詳しく解説すると、ここ一週間で急きょ、日本国内では安倍晋三政権による「10兆円真水補正予算」への動きが活発化しています。

日本の政治家の間では、2019年の甚大災害が引き金になって、「国土強靭化」計画などの「10兆円補正予算」への動きが活発化しているのです。

こういった政治家の動きを邪魔しているのが、「まずは財政再建ありき」「増税と緊縮と不況が大好きな」日本財務省です。

反対勢力である日本財務省の動きを封じ込めるためにも、安倍政権は、年明けには解散総選挙へと打って出るのではないでしょうか?

2019年年初のダボス会議に安倍晋三氏が5年ぶりにわざわざ出席した理由が、やっと理解できました。
    ↓  ↓  ↓
安倍氏は、「政治的な立ち回りの必要性から、10%への消費税増税は断行するものの、その埋め合わせとして『ヘリマネ出動』する」ことを、当時のラガルドIMF専務理事に密約したのでしょう。

日米欧の「大型ヘリマネ出動」では、2020年の日本政府がまずは先鞭をつけるわけです。

IMFとしても、日本がヘリマネ出動して内需を刺激してくれさえすれば、日本の内需拡大で世界経済を中国に代わってけん引してくれれば、それで大助かりです。

IMFにしてみれば、日本の内需拡大のための財源が建設国債であろうが、赤字国債であろうが、日本国内の庶民が苦しむ消費税の大幅増税であろうが、どっちでも構わないところがあるわけです。

IMFとしては、日本財務省の顔も立てながら、安倍政権の顔も立てたいところ。安倍政権としても、日本財務省を敵に回さない範囲で、IMFの顔も立てないところ。そうすれば、日本財務相のIMFへの天下り先の確保が可能となり、日本財務省の顔も立ちます。

Next: グローバルマーケットはこれから「にわか景気」に浮かれる?



2020年からは「アベノミクス第三弾」が始まる

目下のところグローバルマーケットは、経済のファンダメンタルズから全く乖離した「狂乱の動き」をしています。

2020年は、「日本の安倍政権の大型補正予算」や「トランプ政権による対中国関税の引き下げ」などなど、日米欧で「低金利下での財政刺激策(日本と欧州ではヘリマネ)出動」となれば、実体経済(ファンダメンタルズ)も即座に上向いてきて、マーケットとファンダメンタルズとの乖離もやがて解消へと向かうことでしょう。

繰り返しになりますが、安倍政権は「真水10兆円規模の補正予算(=マイナス金利の中での財政出動。事実上のヘリコプターマネーの出動)」を発動する腹積もりのようです。

日本財務省などの財政再建派からの反対が強いようならば、年明け1月にも解散総選挙へ打って出て、民意に問うつもりのようです。

「真水10兆円規模の財政刺激策」は、巨大です。

これで、向こう2年くらいで日本の物価上昇率は2%水準を達成することでしょう。

日経平均も、向こう2年以内に3万円を目指す。2020年は、待ちに待った「アベノミックス第三弾」の始まりです!

「2012年秋からのアベノミックス第一弾」と「2014年のアベノミックス第二弾」から随分とお待たせしてしまいました。

が、今度こそ、2020年からは「アベノミックス第三弾」が始まることでしょう。

日米がばかすか「予防的な財政刺激策」を発動することで、2020年から2021年の世界経済は「プチ不況」を事前に回避して「プチ好況(にわか景気)」へ。

2021年あたりの世界経済は、ヘリマネの影響でかなり「浮かれた感じ」になるのではないのか?

ただし、この「プチ好況」では、遅かれ早かれ先進各国の物価や長期金利がコントロール不能となることでしょう。数年後(3~4年後か、5~6年後)には遅かれ早かれ「ドルが基軸通貨から滑り落ちる、トリプル安の大型不況」が訪れるのでないでしょうか。

それまではグローバル経済は、しばしの「にわか景気」に浮かれるのではないでしょうか?

Next: 日本株は改めて、世界から見直されつつある?



海外では、いたるところで「日本経済見直し」論が復活!

11月27日のWSJ(ウォールストリートジャーナル)は、「日本経済はその危うい評判の割に好調だ。人口縮小に直面しているにもかかわらず、好調だ」と、「日本株への見直し」論を提唱しています。

※参考:「日本化」という妖怪、投資家は恐れるな~日本経済は人口動態の割に好調で、金融市場は手堅い投資機会を提供~‐THE WALL STREET JOUNAL.(2019年11月27日公開)

このWSJ記事によれば、理由の1つに、日本では「労働者の生産性向上が非常にうまくいっている」点を挙げています。「労働1時間当たりの国内総生産(GDP)で計算した日本の労働生産性」は、2010年以降、なんとなんと、伸び率が他の先進7カ国(G7)を上回っているとのこと。G7平均が5.8%であるのに対して、日本は6.5%。しかも、日本は女性や65歳以上の高齢者を中心に労働参加率が上昇していて、労働人口も数百万人規模で増えているとのこと。

ここのところ、「日本の外需が弱いけれども、日本の内需は堅調」と云われているのも、こういった状態だからです。

さらに、WSJによれば、「日本の労働年齢人口(通常15~64歳の人口を指す)1人当たりの実質GDP」は、2007年以降、他のG7諸国を上回るペースで成長しているとのこと。同期間の日本全般の1人当たりGDP伸び率は7.1%と、米国の9.4%と比べてさほど悪くはなく、英国の4.3%を上回っているとのこと。

「日本経済衰退」論の提唱者はしばしば、日本の国債利回りが低いかマイナスである点を強調しますが、WSJによれば、オランダとドイツの国債利回り曲線は全体的に日本のそれよりも低い水準で推移しているとのこと。スイスに至っては大幅に日本を下回っているとのこと。

株式についても、意外や意外、日本市場は過去10年、主要な投資可能国で2番目に高いパフォーマンスを示しているとのこと。利益伸び率は米国に匹敵。製造業などを中心に一部セクターでは日本企業のパフォーマンスが米国のライバル企業を上回っているとのこと。

WSJによれば、「日本経済は、一般に人々が弱いと思い込んでいるようには、弱くない、強い」ということです。

アメリカ株式市場で「天井感」が強くなってきた中、安倍自民党政権による「10兆円の真水」論が活発化しているのと並行して、こういった「日本経済見直し論」がいたるところで復活しています。

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【要注意!】なお、資産形成および投資は、必ず「自己責任」でお願いします。この記事は藤井まり子の個人的見解を述べたもので、当メルマガ及び記事を読むことで何らかの経済的及び精神的被害を被ったとしても、当方は一切責任を負いません。

※本記事は有料メルマガ『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』2019年12月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

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image by: Drop of Light / Shutterstock.com

藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』(2019年12月3日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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