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【11月米雇用統計】米中貿易戦争の影響で経済指標が下振れるなか、緩和期待が高まる

先月、先々月に続いて雇用統計週はドル円が下がる流れになりがちです。前回は予想を大幅に上回る数字となったことで一段高となりましたが、果たして今回は…ということで、現在の相場状況について解説しながら、雇用統計のトレード戦略を考えていきたいと思います。(『ゆきママのブログでは書けないFXレポート(無料板)』『お値段以上!?ゆきママの「週刊為替予測レポート」(有料板)』FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)

今のドル安の背景とは?市場は利下げ・緩和期待に傾く

予防的利下げに続いて、ステルスQE(隠れ量的緩和)政策を実施

まず、ドル安の背景についてですが、これは米国の経済指標が下振れしたことによる利下げ、FRB(米連邦準備制度理事会)による緩和期待が高まっていることがあります。

FRBは今年3回にわたる予防的利下げ、さらにはステルスQE(隠れ量的緩和)とも呼ばれる政策を実施しています。

このステルスQEは、短期市場における資金需要の高まり、逼迫を解消するために月額600億ドルの国債購入などを行っていますが、実質的には市場に資金を供給するわけで、量的緩和と変わらないのではないかという指摘があります。

このように、ここ最近のFRBのスタンスは非常に緩和的であることから、指標の悪化を受けて利下げの催促、ドル安という流れになっています。

やはりISM(米供給管理協会)が発表した11月の製造業景況指数は予想を下回る結果となり、4ヵ月連続で好不況の節目となる50.0ポイントを割り込むなど、米中貿易戦争の影響が製造業を中心に実体経済にも影響していることは明らかですからね。

また、米経済を下支えしている非製造業部門の総合指数も2010年以来の低水準となっています。雇用指数や新規受注は良好な数字となったため、そこまで懸念する声はありませんが、これも利下げ期待が高まる要因となっています。

FRBの予防的利下げ、緩和姿勢は米中通商交渉の難航を想定した措置とも言われており、なかなか合意に達しない現状を踏まえれば、さらなる緩和期待が高まるのも当然でしょう。

要は今日の雇用統計が、この利下げ・緩和期待を払拭できるような数字になるかどうか、というのが今の相場にとっては非常に重要なポイントになりますから、まずはそれを意識した上で展望を考えていくことが重要です。

Next: 雇用統計では、ドル安を払拭するような数字がでるのか?



ドル安を払拭するような数字のハードルは高め

そして、このドル安の流れを完全に払拭するには、それなりの結果というか、有無を言わせないようなパーフェクトな数字が求められますので、なかなかハードルは高めなのかなと思います。

最も相関性が高いと言われるADP(オートマティック・データ・プロセッシング)が発表した11月の雇用報告は予想を大幅に下回りましたし、前回の10月分も下方修正されましたからね。

市場の期待感という意味ではハードルが下がっているものの、ドル安を払拭できる数字になる可能性という意味では、かなり厳しくなっていると言わざるを得ないでしょう。

図1:先行指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)

先行指標は全体的に悪化傾向です。力強い雇用を牽引し続けている非製造業部門の雇用指数は堅調ですから、そこまで悲観することはないように思いますが、事前予想値からの上振れを期待するのは、やや難しいように思います。

また、非農業部門雇用者数が18万人増という、なかなか強気なコンセンサスとなっていますが、前回(10月分)はGM従業員のストライキの影響で5万人以上の雇用が失われる中で12万人増でしたから、当然といえば当然の期待値ではあります。

したがって、非農業部門雇用者数が20万人を超える伸びを見せ、失業率が引き続き3.6%以下で安定し、平均時給の伸びが一段と加速するような数字、ピーク時の前年比で+3.2%以上が合わさればドルの反発が期待できそうですが、先行指標を見る限りは難しいでしょう。

Next: 想定は1ドル=108.00〜109.50円、今夜のトレード戦略は?



今夜の想定レートは108.00〜109.50円!下値余地は乏しいか?

事前予想を大幅に下回る、例えば非農業部門雇用者数が10万人以下を下回って一桁万人増にとどまるようだと、流石に米経済を懸念する向きが強くなって株安からの円高になりそうですが、裏を返すとこれ以外では、そこまで大きく下げるとは考えにくいです。

なぜなら、悪かったら悪かったなりでFRBによる利下げ、緩和政策への期待感が高まって、株価はそれなりに支えられるでしょうからね。

ドル安を払拭するような数字というのはハードルが相当高そうな一方で、極端に米経済への懸念が強まるような数字でなければ底堅そうですから、トレードとしては押し目買い・ロングという戦略で見ておきたいところでしょう。

図2:ドル円(日足)チャート

トランプ大統領による米中合意の見送り発言や、ロス商務長官による12月15日の対中制裁関税第4弾を予定通り発動といった報道を受けても108円半ばでサポートされていますから、引き続きこの水準は底堅そうです。

ADP雇用報告が予想を下回ったこともあり、予想を上回ればポジティブサプライズとなりそうですから、雇用統計発表前にドル円が108.50~108.60円にあるなら買って発表を待っても良さそうです。

また、108円半ばを割り込んでも日足ベースで108.20~108.30円レベルが強いサポートとなりそうですから、ここで買って見るのも悪くなさそうです。

いずれにせよ、予想を大幅に下回るような数字、非農業部門雇用者数が12~13万人以下、平均時給が前年同月比で+2.7%以下といった結果にならなければ押し目の意識でトレードを想定。

損切りは108.00円割れ、利益確定は21日移動平均線や200日移動平均線のある108.80~108.90円が目標です。109.00円台に乗せる勢いならホールドして、様子を見ても良いですが、予想を大きく上回る数字でない場合は全戻しもあるので早めに利食いした方が良いでしょう。

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image by : Syda Productions / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2019年12月6日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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