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アベノミクスを牽引してきた成長株の伸びは一服?これからは割安株が買いの背景とは=山崎和邦

アベノミクス相場は成長株が主流として伸び、割安株は出遅れてきた。後半は両方ともに上がってはいたが、前者の平均が後者の平均よりも上昇率が高かった。(山崎和邦)

※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2019年12月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

これから長期投資の銘柄選択をするときに見るべき2つのポイント

成長株(グロース株)と割安株(バリュー株)

日経新聞12月7日号の記名入り証券記事「スクランブル」に、「バリュー(割安)かグロース(成長)かという軸で語る時期は終わった」(原文のまま)と出ているが、そんなことは断じてない

日経記者は自己で証券投資をすることが職掌上で出来ない。したがって筆者が言うところの「行動せずにタダ語る者」となる。(客観性を保つうえで重要だと理屈を言うがそうではない。インサイダー取引になる、または、そう疑われるからだ)。この辺を弁えて読むほうがいいと思う。筆者は入社後すぐに本店営業部に配属されて5年弱いた。そのころ、日経新聞の「兜クラブ」(証券担当記者)という若者が時々来店したが、みな忙しいので筆者のような入社したての若者が相手をさせられた。そんなものである。さて本論に入ろう。

アベノミクス相場は主として成長株(グロース株:PERとPBRが高く利回りは低い)が主流であって、割安株(バリュー株:PERとPBRが低く利回りが高い)は出遅れてきた。特にアベノミス相場の後半においては両方ともに上がってはいたが、前者の平均が後者の平均よりも上昇率が高かった。このことは既報でも既述した。

日経新聞12月5日号に、割安株を逆張りすることを基本スタンスとする英国の4兆円のファンドが日本株に向かい始めたと記名入り証券記事に出ている。

この英国の4兆円のファンドはオービス・インベストメンツであるが、これが日本株の比率を高めている。割安株の逆張りを一貫させてきた著名なファンドである。11月末に日本株の比率を15%に高め、米国株は減らしているという(日本経済新聞12月5日号、編集委員の記名がある証券記事「スクランブル」より。この項目の前段で述べたような「見解」や「相場観」や「見方」ではなく、事実を述べる記事は日経新聞の記名入り記事を筆者は信用する)。

同ファンドの分析では、現在のグロース株の偏重はリーマン危機前やITバブルに匹敵するという。米中摩擦の不安がやわらぎ、長短金利差が広がるとグロース株の相対的なパフォーマンスが落ちるはずである。一時的な相場の流れか、あるいは地殻変動を起こすのかは今のところ判らない。米ゴールドマンサックスの分析では割安株の優位性は、成長率が3%以上になった時か、あるいはマイナス成長になった時だったという。特にマイナス成長になった時にはグロース株の調整が深くなる。

今からバリュー株を考えるのは、筆者は個人的な意見では賛成である。筆者自身の基本的方針は主としてバリュー株・割安株の突っ込みを買い中長期的に保存するというやり方であった。これが必ずしも正しいかどうかは判らない。要は、良い結果を生む方法が正しいのだ。

Next: 長期投資をするなら、同族企業を選んだ方がいい理由とは?



長期投資、同族企業が狙い目?

これは日経ヴェリタス紙12月1日号の2ページの前面にわたる特集の大見出しである。この見出しの意味は大いに一理あると、筆者は思っている。
※参考:長期投資、同族経営が狙い目?‐日本経済新聞(2019年12月1日公開)

筆者自身が中長期投資の銘柄を選ぶ場合に必ず大株主を見る。創業者が上位株主や取締役としているかどうかを見る。所謂、同族企業だ。自分が会社員として勤める場合、筆者は同族企業を避けてきたし、筆者の所属した野村證券も、その後の三井の会社も同族企業ではなくパブリックな会社だった。その方が「やりがいがあるし、会社員としての生活はいい」と思っているからだ。ところが、投資家の立場から見ると全く違う場合が多い。

同族企業は大成功するか大失敗するかであり、また破綻価格にいる場合に破綻はさせないだろうという判断にもなる。同族企業は我が家のために長期戦略を立て、素早い経営判断を行い、経営効率の高さを強みにすることができる。

それに対してサラリーマン経営者は会議をして決める。そして株主総会にかける。株主総会も取締役が大株主ではないから簡単ではない。13時間半に及んだ史上最長のソニーの株主総会、4時間半に及んだ野村證券の平成9年の株主総会のようなことになりかねない(筆者は両方とも株主とて出席していた)。

判りやすい例の代表は、永守さんの日本電産である。随分前のことであるが、日本電産が大幅減益を発表するという話が(インサイダー情報ではなく)事前に伝わっていた。そこで筆者は明日の寄り付きで大幅に暴落したらこれを買おうと決めていた。何故なら、サラリーマン経営者ならば大幅減益を発表する前に四半期予想ごとに小幅な減益を繰り返し、大ニュースになることを避けるだろう。

ところが、永守さんの独裁会社(話しに聞くところによると必ずしも独裁ではなさそうだが)は「いっぺんにウミを出し尽くしてその後は大幅増益になるに違いない。ウミを出し尽くして暴落したところが買いだ」と考えたのだ。この考え方は大体的中する。ところが筆者のような考え方の人が多かったせいか、翌日の大幅減益発表の時には大幅に株価は上がってしまった。それで筆者は買いそびれた。そこで買っていれば株価は3年で15倍になった。(もちろん、もし買っていても筆者は15倍までは持たなかっただろうけれども)、具体的に言えば、96年の2,000円割れが99年には3万円になった。このようなものである。

永守さんの話を直接聞いたことがある。多分、IRの会場だったと思う。この会社はこの社長がいるから世界一の精密小型モーターの会社に一代で仕上げた、たいした会社だ。だが、この会社に勤める気には全くなれなかった。「この会社に勤めていたら社員はさぞかし大変だろうなあ」と思って帰ってきた。「会社員としてのやり甲斐や居心地の良さや精神的な幸福度」と「投資家・株主が期待するところ」とは一致しない

このことを筆者は銘記したいところだ。同族会社には素早い経営判断と我が家の長期の幸福のために長期視点で利益を追求していくことができる。サラリーマン経営者のように期限を決めているわけではない。期限を決めての責任ではない。そこで筆者は、本稿に一度既述したことがあるが、筆者は野村證券時代に、総研にいる友人に「同族企業とパブリックな企業に二分して同族企業の株価とパブリックな企業の株価とを同業種内で比較してみたらどうだ、それを調査してみてくれ」と頼んだところ、彼は、「とんでもないことだ。同族企業の株価の方が高いに決まっている。同業種ならば同族企業の株価の方が高いに決まっている。そんな統計を出せば法人部や金融法人部が顧客としている相手はだいたい大企業で経団連銘柄が大手だ。経団連銘柄はほぼ全部がパブリックな企業だ。だからそんな統計を出したら法人部に恨まれる」と言下に断られたことがある。この話しは本稿でも既述したことがある。

これも銘柄選択の一つの視点である。所謂株式評論家という稼業でメシを食べている人はこういうことは言いたがらない。筆者は株式評論でメシを食べているわけではない。二本の箸でメシを食べている。

欧米にも同じ例はあるようだ。筆者は同族企業の中堅証券会社の代表取締役会長が、今から55年前に新入社員として野村證券に入ってきた時から家族ぐるみの親しい間柄である。彼に月に2回ぐらいは会うが、彼の話しの隅々に、我が一族のために長期的利益損失を考える。我が一族のために社員が重要である。顧客第一ではない。社員が第一でもない。顧客を重視するために社員を重視するのだ。そして社員を重視するために一族経営者を重視するのだ。顧客・社員・一族、これら皆が運命共同体なのだという意味のことが言葉の隅々ににじみ出ている。現に、その企業の株価は業界で一番の高株価だ。

顧客第一主義というのは間違いだ。顧客第一のために社員第一主義とする。社員第一主義のために経営者第一主義とする。そこで三者は結果的に運命共同体となるのだという考えである。社員の居心地がいいかどうかということはまた別として、株主になるならば代表取締役や企業や経営者や大株主の構成をある意味では重視しなければいけないと思っている。

Next: 創業オーナーがメリットがあるだけではない、リスクとなる場面とは…



創業オーナー経営企業のリスク

ただ言えるリスクはこういうことだ。創業オーナー経営者が一歩間違えたら会社全体が間違えてしまう。パブリックな企業ではこういうことは会議で防止される。また、その大物経営者が急死したら株は暴落する。

筆者はいくつかの会社を上場担当責任者として上場させたことがある。これは企業役員退社後、未上場企業の非常勤取締役を4社ほど務め、そのうちの2社は上場させた。その時に主幹事会社が審査の対象とするときに、必ずリスクの第一として創業経営者・オーナー経営者・大株主であるところの誰々が急死した場合を「将来考えられるリスク」の筆頭に挙げている。リスク要因でもあるのだ。その場合に後継者を今のうちから養い、いつでもバトンタッチできるようになっていることを主張して(必ずしもそうでなくても)上場を果たした。

中長期の選び方

具体的な例で筆者の考えを述べたいと思う。昭和電工が日立の傘下の日立化成の買収を巡り、両者の株価が激変した。昭和電工は買収総額9,000億円の賭けに出て暴落した。日立化成は昭和電工に吸収されるということで暴騰した。3,500円ぐらいの株が一挙に4,000円ぐらいになった。昭和電工は3,300円台のものが一挙に2,800円近くまで下がった。どちらを買うか。筆者ならば賭けに出た方(昭和電工)を買う。賭けに出られた方(日立化成)の暴騰は昭和電工の力を背景にしたものだ。

ここで筆者は、今すぐ昭和電工を買うと言っているのではない。ただ、これは『週報 投機の流儀(動画解説版)』で話した「石原ファンド」という筆者のパートナーの石原氏が選んだ30銘柄の10年間の大底圏内にある「里帰り銘柄」の一つであり、それを話題にした時からかなり上がってしまっている。今買う気はない。ただ、ものの考え方として、賭けに出た方は暴落し、賭けに出られた方は暴騰した。その場合どちらをとるかを述べたのだ。

既に発表されている11月米製造業PMIは改善傾向を示しており、ISM製造業景況感指数も10月からの改善が予想されている。

以下の2銘柄は日経平均225構成銘柄の一つであり、「大通りにある割安銘柄」として常にその株価推移を注目している銘柄である。ホンダは割安30銘柄の中の一銘柄として取り上げた。

オービス・ジャパン・エクイティ運用戦略は2019年7月~9月の間に、ホンダの保有割合を2019年9月末:5.4%(←2019年6月末:4.0%)に引上げている。2019年8月安値(2412円)形成時、アベノミクス相場始動時の「里帰り水準」で買いの投資行動を行っている。

オービス・ジャパン・エクイティ運用戦略は2019年7月~9月の間に、日東電工の保有割合を2019年9月末:1.7%まで買付けし、1%以上の保有銘柄リストに新たに加わってきた。

アベノミクス相場始動時の水準に接近する水準までの押しはなかったが、底値圏に近い4,000円台の水準で買いの投資行動を行っている。

続きはご購読ください。初月無料です<残約18,000文字>

第1部;当面の市況

第2部;中長期の見方

第3部;長期投資の銘柄選択の一尺度

第4部;的確に言い当てていた本、大きくはずした本

第5部;「資産価格バブルの経済理論」

第6部;「国運の分岐点 中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか」

第7部;読者との交信蘭

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※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2019年12月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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image by : Duncan Andison / Shutterstock.com

山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2019年12月7日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。

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