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IPO相場の終わりとともに、新年相場入り。ここから株式市場は新たな展開へ=國澤晃

先週金曜のNYは3指数揃って最高値更新、とにかく強いアメリカ株。これを受けた日経平均先物は2万3,800円となっており、月曜からしっかりしたスタート。(『KA.Blog(有料版)』國澤晃)

※本記事は有料メルマガ『KA.Blog(有料版)』2019年12月22日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に無料のお試し購読をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:國澤晃
防衛大学校理工学部通信工学科卒業後、海上自衛隊幹部候補生学校(江田島)へ。退官後、東京八重洲の某東証1部上場証券会社(合併前)で6年間勤務するも、家族の事情で富山へUターンし退社。富山では会計事務所勤務を経て独立。証券アナリスト、FPなど金融・財務・税務関連の資格を保有し、企業業績や業界動向を読み解きながら、テクニカル分析で株価の動きを見極めるのが得意。新光証券(現みずほ証券)主催の仮想株取引「S-1チャンピオンシップ」において75000人中5位を獲得。

世界に不安要素渦巻くなか、金融緩和モードで株高が進む

高値圏でもトランプの発言なく、とにかく強いアメリカ株

先週金曜のNYはトランプ大統領が習主席と通商、香港、北朝鮮について協議して「前進した」と述べたことで3指数揃って最高値更新。SOX指数も1%超の上昇としっかり。一方、シェールオイル掘削リグ数が667→685と急増したことを受けてWTI原油は反落となりましたが、60ドル台をキープしています。それらを受けた日経平均先物は2万3,800円となっており、月曜の日本株はしっかりしたスタートでした。

とにかく強いアメリカ株。今のところ高値圏にあってもトランプ大統領が変なことを言いませんし(弾劾を受けているところだから、とりあえずは大人しくしている?)、その最大リスクさえ封じられているのであれば上がっていくだけという感じになっています。

アメリカ株だけ強いようにも見えるのは、やはり比較的ドル安をキープできているから。アメリカの長期金利は足元でまた1.9%台まで上昇してきています。これは11/8に日本株が戻り高値を付けた時以来の水準なのですが、ドルインデックスは当時に比べて1ドル近く低い水準です。
※参考:ドルインデックスチャート

イギリスの政局混乱に決着が見えたところからのユーロ高が大きく寄与していると言えますが、足元ジョンソン首相が退路を断つようにBrexitの延期を求めない法案を作るとしたことでまたハードBrexit懸念が高まっています。それが今後どう影響するかに注目です。

一方、実はアメリカ株だけでなく、ドイツDAXはまた高値更新を伺うような位置に付けていますし、フランスCACにいたっては07年以来の高値水準になっています。また日経平均もドル建てで見ると既に昨年1月の戻り高値を先々週の急騰で上回っており、不動産バブル以来の高値を更新してきました。
※参考:ドル建て日経平均(日中チャート)

そのバブル時の円建て日経平均高値3万8,915円は、ちょうど30年前の大納会に記録したものですが、市場の話題としては「配当込み」で計算すると、既に日経平均は3万8,915円を超えているのだとか。まあ個人的には日経平均はそもそも銘柄入れ替えも大きいですし、またファーストリテイリング<9983>の寄与度が高すぎるので、意味がある話とは思えません。ですが、足元の株高が結構な水準になってきているのだということを漠然と知らしめる象徴的な意味はあるかも知れません。

ただ株価が示す程世界の景気が良く、視界良好なわけではありません。悪材料を探せばいくらでも見つかります。インドでは国籍法を巡りデモが拡大しています。香港のデモも未だ沈静化していません。北朝鮮もまたきな臭くなっています。個人的にはアメリカ以外の問題は取るに足らないと考えていますが、そのアメリカでも経済指標は濃淡あり、住宅や雇用は良いものの、製造業は悪いものが目立ってきています。

Next: なぜ、世界的な不安要素が多いのに世界の株価が上がり続けているのか



世界的な金融緩和モードで、不安要素をカバー

その七難を隠しているのが、世界的な金融緩和モードです。日本はこれまで以上の金融緩和に追随していませんが、ECBは11月からQEを再開していますし、アメリカでも短期債での隠れQEが行われています。

もっともアメリカの隠れQEに関しては12/1のメルマガでも書いたように、あくまでオマケのようなものです。最大1.5ヶ月ものの短期債で資金供給しているものを、株買いに回すとはちょっと考え辛いです(すぐ返さないといけないので)。ですから、それが今の株高に結び付いているんだ…という論調は半分不正解だと思いますし、逆に半分は正解かも知れません。アナウンスメント効果があるので、全く株価に影響していないとも言い切れませんから。

そういう意味では年末年始の資金供給不足を補うための、この短期債の資金供給が一旦縮小することで、アナウンスメント効果が消えてしまう年初は、株価が急にストンと落ちてしまう場面があるかも知れません。その頃には米中部分合意が署名され、アク抜け感も出やすいです。また1月半ばの自社株買い空白期間にもなり、エアーポケットのように値を下げる場面になる可能性はそこそこあると考えています。

もっとも、基本的には下がっても日経平均では2万3,000円割れくらいがせいぜいで、そこは拾っておくべき場面になりそうな気もします。ともあれ、来年の話はまた来年の空気感を見てから考えますが、今の市場が本当に金余りの金融緩和の結果であるならば、その材料が通じなくなった時は本当に市場が危ない時と言えそうです。

今週のスケジュールは、もう年末モードなので重要なものはありません。今年から天皇誕生日が12月では無くなったので、閑散相場でも休まずに市場は動きます。

23日(月)は安倍首相が25日までの予定で北京へ訪中。そのまま24日(火)は日中韓サミットがあり、日韓、日中首脳会談がそれぞれ開かれます。アメリカはクリスマス前の短縮取引。

25日(水)はクリスマスでキリスト教圏の市場がお休み。

26日(木)はIPOシーズンの終了と、年内受渡最終日。アメリカ以外のキリスト教圏は引き続き休場。そして27日からは受渡日ベースで新年相場入りとなります。

Next: これらの状況を踏まえて、今週の日本株の動向は?



IPOに資金一極集中が終わり、相場は新たな展開へ

今週の日本株は前半がパッとしないものの、後半木曜辺りから、早ければ水曜以降は買われる展開を想定します。全般的には海外市場がお休みの中で薄商いが続くのでしょう。

結局先週は週間では下落の週となりました。先々週末急騰の勢いは火曜までで終わってしまい、アメリカ株が強くても日本株は弱いという流れになりました。

日本株に関しては、薄商いの中で資金がほとんどIPO銘柄に持って行かれたことに敗因があるように思います。特に先週のIPOは時価総額1,000億円を超えるフリー<4478>やJMDC<4483>などが活況で、それ以外でもマクアケ<4479>やJTOWER<4485>などが大盛り上がり。売買代金はマザーズ上位10銘柄で1,000億円に迫る形です。

とりあえず26日になるとIPOが終わり、まだ盛り上がる銘柄は先々のIPO空白期間にもずっと盛り上がっているでしょうが、対象が絞られてくるので、ようやくIPO銘柄一極集中の流れは終わると思います。同時に26日で年内最終売買日となり(※今年は受渡日短縮があったので、今年から年内最終売買日が一日遅れる)、そうなると個人投資家の損出し売りが一巡するので、いよいよ掉尾の一振に向けた動きが出て来ます。

この損出し売りの一巡というのは、相当明確なパフォーマンスの逆転を見せます。実際、直近の投資主体別売買動向を見ても、個人投資家の売り越しが大きく顕著でした。特に今年下がり続けた銘柄などにはリバウンドのチャンスがあります。

気にしておきたいのはアラムコの株価。もし相場混乱の新しい悪材料が出てくるとするならば、このアラムコの株価下落が各ポートフォリオの毀損に繋がり、負の連鎖を引き起こすことかも知れません。冒頭で述べたようにアメリカのシェール掘削リグ数が増えたことで原油価格が下がり、それがアラムコの株価下落に繋がりました。上場初日の安値水準に接近。

当初はストップ高などを含めて盛り上がりましたが、日本の大型IPOを見てもわかるように、盛り上がるのはせいぜい上場初日から3日間くらい。時価総額が世界最大ですし、それくらいが限界です。もう組み入れる必要がある投資家は組み入れてしまったので、新規の買い手が不在となり、値が下がりやすくなる→需給が暗転してしまうという構図です。

ご存じのようにアメリカは今や「自分さえ良ければ良い」と考える国になってしまっていますから、サウジを始めとする中東諸国に忖度することなく、ガンガンシェールを掘って原油を取り出していくでしょう。環境問題も知ったことでは無いと言っているわけですから、十分整合性があります。ですから「年末年始に株を枕に…」とお薦めできる程強気ではなくなっていますが、少なくとも上述した来月中頃まではひとまず何とか大丈夫じゃ無いかなとは現段階では思っています。

Next: 長期的目線で日本株は3万円、4万円超えへ



時間軸を気にする必要がない点が個人投資家の武器

ただあくまでずっとずっと長期の話ですが、日経平均や日本株は3万円、4万円超えは十分あると思っています。これは何年も前からブログやこのメルマガでも主張している話で根っこは変わっていません。それが何年後になるかまでは正確に予想できませんが、アメリカ株同様に日本株も持ち続けていればいずれ報われる金融商品であるとは思っています。

根拠はやはり結局株高にしないと全てが上手くいかないですから。年金制度が崩壊して、日本も海外のようなデモが連日起こるような国になってしまうかも知れません。そうさせないためにも株価は高くしておく他ありませんし、そのために政権があらゆる手段を講じてくるでしょう。実際、上述のように日本株は既に十分高値圏に維持されています。人口減少が続いて、高齢化問題が生産性の足を引っ張り内需が弱っていくと見られている中で、それでも株価は高いのです。

一方、アメリカのタイムマシン経営が日本で行われるように、株式市場でも同じようにアメリカから数年遅れて同じような動きがやってきます。その一つがROE革命でしたし、その流れもあって自社株買いの増加や親子上場解消などの動きが起きています。そうやって株式市場からドンドン株券が吸い上げられていくことで(一方で今やIPO以外で資金調達がほとんど行われない)、既存株の希少性はドンドン高まっていきますから、成長率が過去と同じであっても株価位置は今より高くなりやすいと言えます。

ですからもし、投資に対する時間軸を長く取れるのであれば、ほぼ間違い無く勝てるのが株式市場であると考えています。その点(時間軸を気にする必要が無い点)が本来、個人投資家の大きな武器であるとは思うのですが。そういった「根っこ」を想定しつつ、日々の上げ下げでのブレを見極めて楽しく投資を続けて貰いたいとは思っています。


※本記事は有料メルマガ『KA.Blog(有料版)』2019年12月22日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した株式・為替市場の詳細な分析、今週の注目イベント展望や、配信済みバックナンバーもすぐ読めます。

image by:Bankrx / Shutterstock.com

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KA.Blog(有料版)』(2019年12月22日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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