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年金支給額0.2%増に騙されるな。実態は今後35年で27%減、30〜40代が最も割を食う=栫井駿介

厚生労働省が2020年度の年金支給額を発表しました。前年比では0.2%の増加となったことで、これだけ見ると一安心と感じます。しかし、実は…。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

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プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

年金は今後35年で「27%減」へ!? 浮き彫りになる政府の思惑

年金支給額「増加」でも喜べない?

厚生労働省が2020年度の年金支給額を発表しました。前年比では0.2%の増加となったことで、これだけ見ると一安心と感じます。

しかし、実はこの改定、名目上は「プラス」ですが、よくよく見ると「マイナス」とも言える結果です。

その内容は、以下の毎日新聞の記事に書かれています。

厚生労働省は24日、2020年度の公的年金の支給額を前年度比0.2%引き上げると発表した。物価や賃金の上昇を反映した本来の引き上げ幅は0.3%だが、年金額を抑制する「マクロ経済スライド」を2年連続で適用。これにより、支給額はわずかに増えるが、物価・賃金の伸びよりは抑えられることになり、実質的な価値は目減りすることになる。

出典:公的年金伸び率0.2%に抑制 2年連続「マクロ経済スライド」適用 – 毎日新聞(2020年1月24日配信)

つまり、インフレで物価や賃金が上昇している中、年金の増加額はそれ以下に抑えられるということです。

このままインフレが続けば、年金額は「名目プラス、実質マイナス」が続きます。

35年で年金額は実質27%減少する

さわかみ投信によると、物価上昇率2%が続いた場合、35年で年金額は実質27%減少すると言います。3割減というと、かなりの金額です。

ここに政府の思惑が透けて見えます。

発表自体は「プラス改定」とできますから、批判を低減することができるでしょう。もし、マクロ経済スライドについて追及されても、多少なら誤差の範囲とされるからです。(しかし、上記のように積み重なれば大きな数値となります。)

Next: 長い目で見ると年金は3割減?もっとも苦しいのは、いま現役の30〜40代…



目的は財政状態の改善

実質的な年金を減らした先の目的は、財政状態の改善です。

年金を含む社会保障費は、国家財政を圧迫しています。高齢者が増加する以上、黙っていればひたすら支出ばかりが増えてしまう状況です。

そこで、30年かけででも実質3割も年金を減らすことができれば、その効果は数兆円単位となります。これとインフレをあわせれば、GDP対比の債務残高と毎年の収支が同時に改善するというわけです。

いま現役の30〜40代がいちばん苦しい

もちろん、これで困ってしまうのは高齢者です。しかも、あとから高齢者になった人ほど苦しい状況になります。

そう、一番苦しいのは、いま現役世代の30代・40代ということになるのです。

この世代の人口は65歳以上の高齢者より少なく、選挙の投票率も低い傾向にあります。政府は選挙対策として高齢者の顰蹙を買うことなく、一方では将来に向けた布石を打つことができるのです。何ともよく考えられた仕組みです。

求められる自衛。ポイントは「収入源確保」と「インフレ対策」

こう見ると「政府の陰謀だ」と批判したくなりますが、それを言ってもはじまらないと思います。

社会保障費を減らさなければ国家財政はますます厳しくなり、危機的な状況に陥る可能性もあるからです(必ずそうなると言うわけではありませんが、リスクマネジメントの観点では大切です)。

声を上げることも大切ですが、それ以前に私たちがすべきことは「自衛」です。

ここで求められる対策は、以下の2点になります。

1)年金以外の収入源の確保
2)インフレ対策

年金以外の収入源の確保という観点では、まず「働く」ということがあります。長く働くために知識や技術、そして何より健康を保つことは人生の質を上げるという意味でも大切です。

Next: 投資は不可欠? もはや資産運用は生き抜くための必須スキル



資産運用は生き抜くための必須スキル

そしてもちろん、投資も不可欠です。

現役世代のうちに株式の配当や不動産所得を得る仕組みを作っていれば、自分年金として老後の生活費の足しにすることができます。

株式なら1億円の資産があれば5%の配当で400万円(税引後)の年収ですから、ひとまず生活には困らないでしょう。

株式や不動産は、インフレにも強い資産です。株式の裏付けとなる企業は、インフレになれば商品・サービスの価格を上げることができますし、不動産価格や家賃も上昇します。

同じ金額を現金(預金)で持っていたら、インフレで実質目減りしてしまい、いざという時の対策としては貧弱なものになってしまいます。

以上のようなことがあるからこそ、私は若い人ほど、現役世代のうちに投資を学んで欲しいと思うのです。これは「好きな人がやる」という従来の投資ではなく、もはや生き抜くための必須スキルだと思います。

一部内容が重複しますが、以下の動画もぜひご覧ください。リターン以前の問題として、投資することは生活防衛のために重要なのです。


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image by:shigemi okano / ShutterStock.com

バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2020年1月26日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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