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政府統計「不正」準備万端?景気悪化を認めぬ安倍政権が数字のお化粧方法を密かに告知=斎藤満

2月17日に発表される昨年10-12月期のGDP統計が、いろいろな意味で注目されます。大幅なマイナス成長が見込まれますが、アベノミクスの成果を傷つけたくない政府に対して役所が「忖度」する可能性があり、その兆候も見られます。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

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※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2020年2月5日の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

ついに禁じ手まで? 個人消費を偽装し、雇用者報酬は過大推計か

GDP統計に監視の目を

2月17日に発表が予定されている日本の昨年10-12月期のGDP(国内総生産)統計が、いろいろな意味で注目されます。

ここまで発表された経済指標からみると、大幅なマイナス成長が見込まれています。

しかし、「見栄え」を大事にする政府、アベノミクスの成果を傷つけたくない政府に対して役所が「忖度」する可能性があり、その兆候も見られます。

つまり、実態よりもよく見せるお化粧をした数字を出してくる可能性があります。

これまでも各種統計の「齟齬」が見つかり、厚生労働省の「毎月勤労統計」調査がやり玉に挙がったことは記憶に新しいところです。

また労働力関連データ、家計調査にも問題があり、GDP統計ではこれを基にして数字を作ります。労働者の所得総額を示す「雇用者報酬」もその1つです。

消費お化粧の高等戦術

今回のGDP統計でチェックすべき項目は「民間個人消費」の部分です。

すでに小売り統計や家計調査統計で10-12月が大幅な落ち込みを見せていることは確認されています。10月からの消費税引き上げに度重なる台風、豪雨と言った自然災害の影響も出たと見られます。

この個人消費がGDPの約半分を占めているので、これが大幅な減少となれば、GDPも大幅なマイナス成長不可避となります。

そこで、内閣府は高度なお化粧手段を使い、個人消費の落ち込みを隠そうと考えているようです。

一般国民には理解しがたい「季節調整」のなかで、異常な落ち込みがあった場合にこれを「異常値」として排除し、結果的に美しい顔立ちの数字を作ろうとしている節があります。

Next: 数字のお化粧方法を内閣府がひっそり告知?もはや実態隠しの「禁じ手」



数字のお化粧方法を内閣府が告知

内閣府のホームページの四半期国民所得の修正方法について、一応、次のような断りを入れています。

つまり、2019年7-9月と10-12月期においては、耐久財、半耐久財、非耐久財の消費データについて季節調整する際、加法型異常値処理のダミー変数を設定する、と言っています。一般国民が読んでも何のことやらさっぱりわからないと思います。
※参考:2019年7-9月期四半期別GDP速報(1次速報値)における推計方法の変更等について(PDFファイル)

要するに、7-9月と10-12月の消費データのうち、「モノ」の消費が異常に弱く出た場合、これは実勢ではないとして、数字の穴埋めをすることです。 

問題は、その「異常」の評価で、統計処理上実態とは異なる制度上の特殊要因、例えば休日の数が例年より1日多いと言った問題や、明らかに一時的な特殊要因で数字が飛んでしまうような場合には、これを異常値として排除することはあります。

しかし、消費税を引き上げたために消費が落ち込んだり、台風や自然災害で消費が落ち込んだり、といったケースは「一時的な異常値」ではありません。

つまり、しかるべき理由があり、実態のある落ち込みについては、安易にこれを排除すべきではありません。

昨年7-9月、10-12月という時期は、自然災害や消費税引き上げによるかく乱があった時期で、相応の理由があり、実態のあった時期で、それをトレンドから見て大きく落ち込んだというだけで、「ダミー変数」で穴埋めしてしまうと、化粧を通り越して実態隠しとなる「禁じ手」です。プロの統計処理担当者、エコノミストは、決してこれに手を染めてはいけません。

この「ダミー変数」で処理した場合、「台風や消費税引き上げが無ければ、これくらい増えていたはずだ」という架空の姿が描かれるのですが、現実には台風があり、消費税引き上げがあり、それによって消費や生産が落ち込みました。

それを消費だけ化粧して落ちなかったことにしても、生産などほかの指標と整合性がとれなくなります。

雇用者報酬も過大推計か

この個人消費と関連する指標に、GDP統計の中の「雇用者報酬」があります。これは1人当たり賃金と雇用者数から推計した「労働者の総所得」を表します。これが増加基調を維持しているので、消費環境は良いはずだ、というのが政府の判断です。

ところが、この「雇用者報酬」と、財務省の「法人企業統計」の「人件費」とが、昨年春以降大きく乖離しています。

例えば、直近4四半期の数字を追ってみると、雇用者報酬(名目)の前年比増加率は、18年10-12月から順に3.3%、1.7%、2.3%、1.6%増となっていて、確かに政府が言うように「堅調な増加」を維持しています。

これに対して、「法人企業統計」の人件費の伸びは、同じ期間で、3.1%、1.6%、マイナス0.7%、マイナス1.8%となっています。

昨年1-3月まではほとんど差がありませんが、4-6月以降、企業が実際に支払った人件費が減少に転じた一方、GDP統計の雇用者報酬は増加が続いていると推計しています。

法人企業統計は、資本金1千万円以上の企業が実際に支払った額を集計し、企業全体のおよそ7割をカバーしています。残りの3割は中小零細企業で、彼らがよほど大幅に人件費を増やしていない限り、雇用者報酬の伸びが高すぎることになります。

もちろん、法人企業統計の調査サンプルが変わることで、増加率に落差が生じますが、売り上げや利益の数字で、サンプル誤差はさほど見られません。

すると、雇用者報酬の数字に疑問が出ます。この基礎統計は昨年問題になった厚労省の「毎月勤労統計」による1人当たり賃金と総務省の「労働力調査」の雇用者数です。「毎月勤労統計」は調査上の齟齬があって連続性がないと自ら認めています。

結局、法人企業の人件費の動きがより現実を示している可能性があり、政府の「所得から支出への前向きな循環」は働いていない可能性があり、消費堅調との判断根拠も希薄になります。

Next: 役人に「安倍離れ」現象? 弱い数字がそのまま出てくる可能性も



安倍離れ現象も

もう1つ注目されるのが役人の対応です。統計上の処理は、専門的に見えますが、見る人が見れば問題が分かります。

絶対的人事力を持った政府に忖度すれば、あえてリスクもとるでしょうが、「安倍政権は長くない」とみれば、そんな無理はしないかもしれません。

つまり、役人が数字の「化粧」をしないでそのまま弱い数字をあえて出してくれば、それは政権に見切りをつけたことになります。

内閣府のホームページでは今のところ消費の季節調整で「異常値ダミー」を使うと言っていますが、これを限定的に扱うか、取りやめにするようだと、逆に政権が見切られたことにもなります。

GDPで消費をどう扱うか、いろいろな意味で注目されます。

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  • 鵜呑みにできない政府統計(2/5)
  • FRBにレポオペ解除不能危機(2/3)

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マンさんの経済あらかると』(2020年2月5日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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