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韓国、またGSOMIA破棄を主張?文政権の求心力低下で反日強化「3月失効」を画策=勝又壽良

韓国大統領府では、再びGSOMIAを破棄しようという動きが高まっている。昨年11月の突然の「暫定的延長」は記憶に新しいが、今度は3月21日で本格的に失効させるという。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

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※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2020年2月13日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

また反日頼み?国益より私益優先の韓国は「後進国」の域を出ない

韓国は政治的な後進国

韓国文政権は、4月15日の総選挙を控えて窮地に立たされている。

経済的に、「新型コロナウイルス」に端を発する世界経済の混乱に巻き込まれていること。肝心の内需は、最低賃金の大幅引上げによる内需抑制が、追い打ちをかけていることなどだ。

その穴は、財政支出でカバーする本末転倒な政策を行なっている。世にもまれな政策運営である。

韓国は政治的に見て、どうにもならない「後進国」である。韓国社会構造の特色である「宗族制」を、政治の世界に持ち込んでいるからだ。

何らかの縁者で組織を固める。いわば、仲間内だけで文政権を支えるアナクロニズムに陥っている。縁者は、文政権と一蓮托生である。文政権が沈めば、その縁者にとっても未来の出世の道が絶たれる。その点で深刻である。

やることをやらず、再び「GSOMIA破棄」を主張?

韓国大統領府では、安保グループと若手秘書官が中心になって、GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)を破棄しようという動きが高まっている。

昨年11月21日に失効予定のGSOMIAは、韓国が突然「暫定的延長」で継続されている。今度は、3月21日で本格的に失効させるというのである。

この動きこそ、韓国政治の「後進性」を示すものだ。

破棄の理由は、日本が韓国へ行なっている「ホワイト国除外」措置を撤回しないから、報復するというもの。

「ホワイト国除外」問題は、韓国大法院(最高裁)が日本企業に徴用工賠償の判決を下したこととセットになっている。日本は、1965年の日韓基本条約で解決済みであるという立場だ。韓国大法院判決を受入れない、という方針で一貫している。

日本は、以上の理由で韓国へ「ホワイト国除外」措置を取った。歴史問題(徴用工賠償)と経済問題(ホワイト国除外)は、従来の「政経分離」から一転し、「政経不分離」へと変わって、日本側の強い不満を表わしている。

韓国も、経済問題(ホワイト国除外)に対して、安保問題(GSOMIA破棄)で対抗する構図に変わった。

韓国は、徴用工賠償問題とホワイト国除外がセットになっていることを熟知している。それゆえ、韓国文国会議長が中心となってまとめた「日韓の民間寄付金による解決法案」は現在、韓国議会で審議されている。

こういう経過を辿っている中で、韓国大統領府の民族派と若手秘書官が手を組んで、日本の「ホワイト国除外」措置が進んでいないとして、GSOMIA破棄論を主張し始めた。

韓国が、同時に行なうべき「文国会議長案」成立の遅れに見合うものである。原因は、韓国の法案成立が遅れていることにある。

こういう交換条件の成立「義務」を負う韓国が、一方的にGSOMIA破棄を行なえば、「ホワイト国除外」問題はなんら進展せず、硬直状態のままに終わる。韓国大統領府の秘書官は、こういう事情を無視して対日強硬策に出てきたのだ。

総選挙で勝利しなければならない。そういう切迫した事情に追い込まれているのだろう。

Next: また反日頼み?国益無視・私益優先の韓国は「後進国」の域を出ない



国益無視で私益優先へ

大統領府の秘書官関係で、約60名が次期総選挙に立候補予定者となっている。残りの「若手秘書官」にはその道も閉ざされている。

そうなると、今後も継続して大統領府勤務を確実にする手段を取らざるを得ないのだ。総選挙で与党が敗北すれば、次期大統領選でも進歩派候補は落選濃厚となり、これに伴い秘書官は失職する運命である。

こうなると、与党が次期総選挙で勝利を収める条件として、常套手段である「反日」を煽るほかない。

この延長線で、「GSOMIA破棄論」が浮かびあがったのだろう。こういう思惑が働き、国益や日米韓3ヶ国の防衛ラインへの悪影響など無視し、自らの就職の場を確保する「保身の術」で、GSOMIA破棄論が出て来たと見るべきだ。

深い考えはない。「国益」の前に「私益」が優先されている。韓国政治は、冒頭に掲げたように「後進国」の域を出ないのである。

気に食わない検察トップの部下を一掃

韓国政治の後進性はこれだけでない。次のような深刻な問題が提起されている。

韓国大統領府は、韓国検察庁の剛腕トップである尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏を封じ込めるため、部下の枢要ポストの座にあった人たちを一掃してしまった。

枢要ポストの「ビッグ4」とされるソウル中央地検長、検察局長、最高検察庁反腐敗・強力部長(旧中央捜査部長)、公共捜査部長(旧公安部長)の人事が、一斉に湖南(ホナム、全羅道)出身者に変わったことだ。

これは、全州出身の青瓦台(チョンワデ、大統領府)公職紀綱秘書官が、人事を握っていることも関係あると推測されるという。

韓国の官僚人事では、「地域配分、牽制と均衡の原則」が生かされてきた。韓国の社会構造が、「宗族制」という遺風を持っており、不平等になる潜在的な危険性を抱えているからだ。

日本でいえば、明治維新後の官僚人事で、薩長が肩で風を切って歩いていた。それと同じ構図が、韓国では未だに見られるのだ。驚くべきこの政治的な後進性が、現実政治を牛耳っているのである。

「GSOMIA破棄論」は、遅れた政治土壌の中から芽を出しているのであろう。

Next: 誰も信じられなくなった文在寅。朴槿恵政権と同じ道をたどる?



誰も信じられなくなった文在寅

さらに大きな問題は、文在寅(ムン・ジェイン)政権に見られる不安感である。

官僚人事では、公平性が消えてしまい、もはや誰も信頼できない雰囲気になっているという。同じ理念や特定地域の出身者だけを集めざるを得ないからだ。

検察の人事では、「所得主導成長をどう思うか」という思想検証までしたという。文政権の権力支持基盤は、「学生運動出身+湖南」に絞るという退行症状が目立っている。

以上は、『中央日報』(2月12日付コラム「文大統領は7年前にすでに答えを知っていた」)が伝えた。

こういう文政権の退行症状は、朴槿惠(パク・クネ)政権時にも先行事例が指摘されている。

朴槿恵(パク・クネ)政権が崩壊する不吉な兆候は、2014年から表れていた。その象徴的な場面が、3大権力の中枢である検察・警察・国税庁のナンバー2の席に大邱(テグ)青丘高出身者を座らせたことだという。

こうした人事は、不安定で窮地に追い込まれる政権ほど、信頼できる人物を側に置きたいと執着する結果である。これが、政治的な自殺行為となった。

朴前大統領は、崔順実(チェ・スンシル)との関係を断ち切れず、側近に囲まれて最後は弾劾の道を歩むことになった。以上は、前記の『中央日報』が論じたものだ。

検察が文政権の番犬に

文政権が、すでに朴政権の辿った「転落人事」に陥っている。これは、注目すべき政治的退行現象だ。

文大統領は、就任時に「国民統合」という大きな目標を掲げた。現実には単なる看板に過ぎず、支援者の利益のみに奉仕する党派政治に陥っている。

検察の人事では、前述の通り「所得主導成長をどう思うか」という思想検証までした。政権に弓引く人間は、政権内に引入れないという原則を明確にし、守りを固める決意である。

検察が、文政権の利益へ奉仕させる「番犬」の位置づけにされた。これは、きわめて危険である。金大中(キム・デジュン)政権当時にもなかったことだという。

文政権は、進歩派政権の退行現象を決定的にした点で罪深い存在になった。

Next: 文政権は「親中朝・反日米」の一辺倒。一方、韓国の小中高生は現実的?



すべては「親中朝・反日米」

文政権の危険性は、「親中朝・反日米」基調にあることだ。GSOMIAという国家の土台に当る安全保障政策を、オモチャのように弄んでいる政治感覚の危険性である。

GSOMIA破棄論は、日本との安全保障協力は破棄することにも通じる。日本の安全保障上の価値が天秤にかけられている議論でもあるのだ。韓国の一部では、時々使える衛星情報を提供する国という程度で考えられているようだ。

これは韓国にとって、日本の安全保障上の重要性を知らずに言うことだと批判されている。

朝鮮戦争初期、韓国軍は釜山一帯まで追い詰められる事態となった。李承晩政権は、山口県への「避難」も考えたほどで、当時も今も日本が、韓国の安全保障に果たす役割は大きい。駐韓米軍の後方基地は、在日米軍である。日本の後方基地があるから、韓国の安全保障に役立っている。

こういう認識が、文政権にはゼロである。驚くほど無知である。

1977年1月、ウォルター・モンデール副大統領が日本を訪問し、在韓米軍撤収方針を伝えた。自民党議員は、一斉に立ち上がって米国へ反対する請願まで出した。2カ月後、日米首脳会談のためにワシントンを訪問した福田赳夫首相は、「『撤収』ではなく『縮小』に向かうべき」とカーター大統領を説得した。

結局、全面撤収に固執したカーター大統領は縮小に旋回した。米政府内の反対の影響も大きかったが、日本のロビー活動が作用したというのが定説だ(『中央日報』(2019年8月16日付が報じた)。

日本が、韓国の肩を持ったのはもちろん自国の利益のためである。動機はともあれ、日韓両国の安全保障上の利害が一致して、過去に協力したケースは少なくない。

ところが、文政権の安全保障政策は日米韓3ヶ国の防衛ラインを強固にすることよりも、中韓の安全保障に肩入れする傾向を見せている。

つまり、日米との安保協力よりも中朝韓3ヶ国の関係をスムーズにして、安全保障を維持するという「夢のような話」に夢中である。

小中高生は北へ警戒感

文政権が、GSOMIA破棄論などと世迷い言を言っている一方で、韓国の小中高生の方が、はるかに現実的な見方をしていることが判明した。

昨年、南北および米朝関係が行き詰まったことで、北朝鮮を「協力の対象」と考える韓国の青少年が大幅に減ったことが判明した。

一方、「北朝鮮」という単語から戦争・軍事、独裁、貧困など否定的な単語を連想する青少年が増加している。以上は、下記の調査結果に基づく。

韓国統一部(省に相当。以下同じ)と教育部は、昨年10~11月にかけて、韓国各地の小中高生6万6042人を対象に「2019年学校統一教育実態調査」を行った。

その結果、北朝鮮について、次のような結果が出た。

「協力の対象」:43.8%(前年より7.1ポイント下落)
「警戒すべき対象」:35.8%(同7.6ポイント上昇)
「助けてやるべき対象」:12.1%(同3.9ポイント減少)
「敵と考えるべき対象」:5.2%(同3.1ポイント増加)

韓国の学校教育現場は、北朝鮮の「チェチェ思想」(主体思想)に凝り固まった教師が跋扈している。日常、「親中朝・反日米」を教え込んで問題を起こしているほどだ。

それにも関わらず、北朝鮮への警戒論が増えている。

Next: 韓国国民は文政権を見限っている?春の総選挙で与党は勝てるのか…



韓国国民は文政権を見限っている?

これは、文政権の思惑外れであろう。子どもたちが、前記の北朝鮮観を持っていることは、子どもたちの両親が、日常会話でこういう主旨の会話を交わしている結果と読めるのだ。

GSOMIA廃棄論が現実になった場合、韓国与党は総選挙で勝てるだろうか。

子どもたちの両親が、北朝鮮へ警戒感を強めているとすれば、GSOMIA破棄は与党への支持率を引上げるよりも、逆の結果になりそうだ。

大統領府の民族派と若手秘書官は、社会の空気を読み違えている。

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勝又壽良の経済時評』(2020年2月13日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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勝又壽良の経済時評

[月額864円(税込)/月 毎週木曜日(年末年始を除く)予定]
経済記者30年と大学教授17年の経験を生かして、内外の経済問題について取り上げる。2010年からブログを毎日、書き続けてきた。この間、著書も数冊出版している。今後も、この姿勢を続ける。

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