新型コロナショックによる株大暴落で、私たちの年金積立金を株などで運用するGPIFが巨額の含み損を抱えています。このまま行けば、日本が新型コロナの世界最大の被害国となりそうです。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2020年3月18日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバッグナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
株大暴落、年金運用は危機的状況へ
連日暴落相場が続く、米国・日本の株式市場。
まだ年度末までわずかな日数が残っているものの、3月17日時点の米株・日経平均・TOPIX・ドル円レートから勘案しますと、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が未曽有の損失を出して2019年の4~12月までの累計収益すべて失い、その倍返しにあたる損失を出していることが見えてきます(編注:原稿執筆時点3月18日)。
もちろんまだ1~3月期の第四四半期は終わっていませんから、確定的なことは今年の6月以降を待たざるを得ない状況です。
しかし、とうとう年間トータルで運用原資を減らすという、まさかの事態が現実のものになろうとしています。
年間運用成績マイナスはすでに確定的
GIPFでは四半期ごとに運用状況を速報という形で公開していますが、それによりますと2019年4~12月の第三四半期までの累計は日本株の株高、外国株(とくに米株)の株高を背景に比較的好調な運用成績を残してきたことがわかります。
参考:https://www.gpif.go.jp/operation/pdf/2019-Q3-0207-Jp_035988.pdf
国内債券は超低金利でほとんど収益はありませんが、国内株式は配当を含めて累計9.63%、外国債券は円ベースで2.58%、外国株式は円ベースで11.24%という運用成績で、累計12兆581億円を稼いだ勘定になります。
しかし、この数字は国内株式では日経平均2万3,656円、NYダウは2万8,548.44ドル、ドイツDAX1万3,249.01あたりの数字で叩きだされたもの。
ですから、この2月から3月にかけての立て続けの世界的な株式市場の暴落と、ドル円レートの急激な円高傾向のもとで下げが続いている状況下では、莫大な損失が出ていることは想像に難くない状況になってきています。
奇しくもGPIFはこの春から投資対象の市場のアロケーション比率を国内株から海外へと振り替えようとしている矢先でした。
どれだけ売却と切り替えが進んでいるのかははっきりわかりませんが、総額168兆9,897億円の資産運用額を当初設定しているポートフォーリオ比率(国内債35%、国内株25%、外国債25%、外国株25%)で継続運用して、市場の騰落率と同様の損失が出ている場合、株式だけですでに16兆円という含み損、債券でも5兆円以上の損失を抱えています。
そして、その含み損は現在進行形で増えていく状態であることがわかります。
Next: ここから年度末までにどれだけ相場が戻すのか、あるいはさらに底に向かっ――
年金運用は始まって以来の大損失へ
ここから年度末までにどれだけ相場が戻すのか、あるいはさらに底に向かって下落するのか。
相場次第で損失額は変化することが考えられますが、現状で見ても累積収益の12兆円は完全に飛ばしてしまっており、さらにプラス10兆円の原資を失ってしまった可能性が非常に高まっています。
ここからポートフォーリオの組み換えを行った場合には、さらに確定損失は大きくなることが予想されますし、なによりドル円が大きく円高に振れていますから、円ベースでの損失は想定以上に大きくなることも考えられます。
ざっと12月までの累計収益の倍の損失を計上して、投資原資を減らしてお仕舞いになることだけは間違いないところに来てしまったようです。
しかも含み損は今後もさらに拡大することは十分にありそうで、GPIFによる運用始まって以来の大損失となることはもはや確定的な状況です。
幹部3人は揃って逃亡か
すでにこのメルマガでもお伝えしていとおり、この3月でGPIFの髙橋則広・理事長、三石博之・理事(総務・企画等担当)、水野弘道・理事(管理運用業務担当)が月末に全員一斉に退任することが発表されており、そそくさと多額の退職金をもって戦線離脱することが決定しています。
結局、だれも損失の責任を負うことはなく、負債だけがGPIFに残るという実に不甲斐ない状況が示現しようとしているわけです。
もちろん、新型ウイルス起因のパンデミック暴落相場などは100年に1回もないことですから、損失が出ても不可抗力であると言ってしまえばそれまでです。
しかし、それではこれまでそんなに上手い投資を行ってきたのかといえば、毎年それなりの損失を計上してきたのもまた事実。
もはや老後2,000万円が足りない云々といったのんきな話をしている場合ではなくなってきていることがわかります。
そうでなくても日本の景気は消費増税に新型コロナの追い打ちで、もはやガタガタの世界に陥ろうとしているわけです。
日本がどうやら世界の中でももっともこのウイルスにやられてしまう国になりそうで、こうした現実の状況を考えますと、空恐ろしくなる次第です。
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『今市太郎の戦略的FX投資』(2020年3月18日号)より抜粋
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