ネットでは新型コロナウイルスの起源に関する疑惑が拡散している。今回は比較的に信用されている2つを紹介したい。根拠を確かめるファクトチェックを行えば、意外な事実が見えてくる。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2020年2月10日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
拡散する疑惑。生物兵器説が出回ることで得するのは誰なのか…?
「コロナウイルス Made in China」?
新型コロナウイルスによる感染の拡大が止まらない。全世界での感染者数は2万600人を超え、前日の約1万7,000人から増えた。厚生労働省は4日、日本国内で確認された新型コロナウイルスの感染症例が新たに3人増え、計23人になったと発表した(※原稿執筆時点:2020年2月6日)。
一方、2月4日、「世界保健機関(WHO)」の緊急委員会の疫学者は、684人が新型ウイルス感染から回復したと述べた。
「WHO」によれば、新型ウイルスによる死者は少なくとも560人に達したという。現在、重症例は13.6%、致死率は2.1%だ。1918年から19年に流行し、全世界で5000万人が死亡したとされる「スペインかぜ」とほぼ同じ致死率だ。
そうしたなか、各地で中国人、ひいては東洋人全般に対する差別的言動が広がっている。新型コロナウイルスにかこつけて、中国人、ひいては東洋人全般に対する差別的行為だ。
ドイツでは、大手誌「シュピーゲル」が、真っ赤なケープにガスマスクを身につけた東洋人男性の写真と「コロナウイルス Made in China」というタイトルの扇情的なカバーを使用し、グローバリゼーションの進展による中国人旅行客の拡大が、蔓延の背景にあると主張した。
世界経済に深刻なダメージ
他方、経済への影響も深刻だ。ほぼ世界中が日々、同ウイルスの影響を痛感している。
航空便の運航は停止され、サプライチェーンは混乱。需要の減退と物価の下落は、東南アジアや南米などの新興市場の経済成長の押し下げ圧力になると予想される。
春節の連休は通常1週間だが、今年は帰省ラッシュによる感染拡大を回避するために3日間延長されて2日までとなっていた。そのため名目上は各企業とも3日から営業を再開する予定だったが、ほぼ全ての地域では少なくとも9日まで休暇が延長されており、学校や大学の再開はさらに遅くなる見通しだ。
感染の中心になっている武漢は、中国の製造業の中心地のひとつで、特に自動車産業やIT関連産業が集積している。こうした産業のグローバルなサプライチェーンの中核になっているのが武漢だ。ウイルス蔓延による春節休暇の延長で工場が一斉に休業しているため、韓国や日本の自動車産業でも影響が出ている。部品調達が困難になりつつある。
エコノミストの予測によると、中国の2020年のGDP成長率が最終的に2019年の6%とさほど変わらなかったとしても、第1四半期の成長率は大幅に下落するだろうという。下手をすると4%台後半の成長率もあり得るとしている。
これが、2020年の世界経済を大きく減速させる最大の要因になる可能性すら指摘されている。