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新型肺炎はカナダで作られた?2つの有力説を検証してわかった生物兵器説より恐ろしい事態=高島康司

拡散する疑惑

そうした状況で、あいかわらずネットでは新型コロナウイルスの起源に関する疑惑が拡散している。さすがに当メルマガで前回ご紹介したビル・ゲイツ犯人説のような根拠が怪しい説は消え去ったものの、それとは異なる説が拡散している。

それらには、具体的な根拠となる事実があるように見えるものもいくつかある。

今回はそうしたもので、比較的に信用されているものを2つ紹介する。それらはすでに日本でも有名ブロクなどで紹介されているので、知っている読者も多いかもしれないが、この記事では、そうした情報の根拠を確かめるファクトチェックを行うことにする。

意外な事実が見えてくる。

新型コロナウイルスは人工的に組成?

最初は、今回の新型コロナウイルスが人工的に組成された可能性を示唆した論文の発表である。

1月30日、現在武漢をはじめ感染が拡大している新型コロナウイルスから、自然界には通常存在し得ない「不自然な組成」を発見したとの論文が、プレプリントサーバ「bioRxiv」に投稿された。投稿したのは、インド、ニューデリーの研究者らである。以下が論文の題名だ。

「Uncanny similarity of unique inserts in the 2019-nCoV spike protein to HIV-1 gp120 and Gag」

普通、科学論文が発表される場合、同じ分野の研究者による査読が条件となるが、「bioRxiv」サーバーは、生化学の分野で査読される以前の、いわば未完成の論文を自由に投稿できるサーバーだ。「コールドスプリング・ハーバー研究所」という機関が運営しており、科学的な発見をすぐに発表できるサイトとして活用されている。

この論文によると、現在流行している新型コロナウイルスを、同じ祖先をもつ「SARS」のコロナウイルスと比較すると、他のコロナウイルスには存在しない4種のアミノ酸残基の配列が見られたという。普通、短期間でこのような突然変異は見られないという。そして、この変異した配列が、人に感染した際のウイルスの生存率と感染力を増大させ、また、宿主の範囲も増やした可能性もあるとも指摘した。

そして、この論文が注目されたのは、この変異した配列が、「ヒト免疫不全症候群(HIV)」と一致していたということだった。論文の著者は、これは「自然界で偶然、起こるとは考えにくい」と述べ、今回の新型コロナウイルスが、実は人工的に組成された可能性があることを匂わせた。

批判と論文の撤去

前回の記事でも紹介したように、今回の新型コロナウイルスは中国が開発した生物兵器ではないのかとの疑念があったため、この論文はそれを裏付けるものとして受け取られ、一気に拡散した。

しかし、これが科学論文であったため、多くの医学者や研究者から批判があった。

そうした批判には研究の手法に疑問を呈したもののほか、たとえ「ヒト免疫不全症候群(HIV)」と一致した4種のアミノ酸残基の配列があったとしても、これが自然な突然変異ではないと結論づける根拠はまったく提示されていないという批判が多かった。

つまり、突然変異ではないことが証明されていないので、意図的に作られたかもしれないという論文の主張は成立しないということだ。

論文の思わぬ拡散とこうした批判を受け、2月2日、論文の著者はこれをサーバーから撤去した。また、ジャワハルラルネルー大学分子医学特別センター准教授のアナンド・ランガナタン氏は、中国が新型コロナウイルスの組成に関与していたのではないかとするコメントをツイッターにしたが、これも削除した。

こうした経緯で論文とツイートが削除されたので、論文の信憑性にも疑問が出ている。

しかし、この未証明の論文の拡散は止まっておらず、あたかも新型コロナウイルスが中国の生物兵器であることの動かぬ証拠としてネットでは拡散している。

Next: 生物兵器説は証拠不十分/新型コロナウイルスはカナダから運ばれた?

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