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108兆円の緊急経済対策、財政支出は39兆円だけ? 現金給付を減らしたい政府の本音=澤田聖陽

ついに7都府県に緊急事態宣言が出され、政府は108兆円規模の緊急経済対策を決定しました。実はこの政策、わかりにくいですが財政支出は最大で39兆円です。(『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』澤田聖陽)

※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2020年4月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

GDPの約2割に相当「108兆円規模」の緊急経済対策

政府は7日、新型コロナウィルス感染が急速に拡大している事態を受けて、特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を行いました。東京の他、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県が対象となり、来月6日までの1か月の期限となりました。

同時に政府は、事業総額108兆円(財政支出39兆円)の緊急経済対策を発表すると報道されています。これは過去最高水準の規模であり、事業規模が108兆円というのは、日本のGDPの約2割に相当します。

事業規模が108兆円で財政支出が39兆円というのが分かりにくいと思いますので、ここで解説します。

実際に政府が支出するのは最大39兆円?

108兆円というのは、この金額を政府が財政支出すると誤解されがちですが(誤解を狙っているのではないかという感もありますが)、実際に政府が支出する金額は39兆円であり、これも実は確実に支出する額という訳ではなく、最大で39兆円規模になるということです。

政府による財政支出が39兆円(何度も繰り返しますが、最大でこの金額です。なおこの政府の財政支出の部分は真水と呼ばれます)で、それに財政投融資(政府が特別な国債を発行して集めた公的な資金を貸し付ける制度)等を加えたものが政府による財政措置になります。

政府による財政措置に政府系金融機関による融資や民間の負担分を加えたものが、事業規模と呼ばれるものです。

簡単に言いますと、政府は最大39兆円の財政支出(真水)をすることを呼び水として、108兆円規模の事業を作り出そうというわけです。

決して政府が108兆円を財政支出するわけではないのです。

Next: それでも最大39兆円の財政支出は、過去最大規模の額です。ただその内訳を――



一律ではなく「貧困世帯の救済」が狙い

それでも最大39兆円の財政支出というのは、過去最大規模の額ではあります。

ただその内訳を見ますと、39兆円のうち26兆円が法人の社会保険や納税の猶予に充当されると言われています。

法人の社会保険や納税の猶予というのは、あくまで猶予であり、どこかでは納めなければいけなくなります。(報道では1年間の猶予と言われていますが)これは実体的には、金利が無いということ以外には、1年返済で納税資金を借りて納税するのとほぼ変わりませんし、純粋に民間の資金が26兆円増えたということにはなりません。

また、6兆円強を低所得者や中小企業に給付すると報道されています。

低所得者への給付ですが、年収換算で住民税非課税水準まで落ち込む世帯が主な対象であり、収入が半分以下となった場合も一定の要件を満たせば対象となる可能性があります。

年収換算で個人住民税非課税の水準まで落ち込む場合、東京23区内に住む会社員で単身世帯は年収100万円以下、専業主婦と子ども2人の4人世帯では年収約255万円以下であれば住民税が非課税となると言われており、アメリカで行われる国民一律の給付とは異なり、貧困世帯の救済という色彩が強いようです。

また収入が大幅に減った中小企業に最大200万円、フリーランスを含む個人事業主に最大100万円の現金を給付するようです(減収幅などの条件はこの原稿を書いている4月7日現在では調整中の様です)。

現金給付は6兆円規模に達しない?

上記の個人向け、中小企業、個人事業主向けの給付はともに申請制です。

現実にはいろいろな理由で申請しない個人や中小企業、個人事業主は結構多く、6兆円の規模には達しないのではないかという人もいます。

この申請制にするというのは役所がよく使う手であり、申請書自体が複雑だったり、エビデンスを求められたりして断念してしまう人も結構います。

このような役所の申請制による給付は、必ずと言っていいほど複雑な申請内容になります(なぜかと言いますと、虚偽申請等の問題が起こった時、公務員は自分たちの責任にならないようにちゃんと厳しい制度で申請を受けて審査したというエビデンスを残したいためです。今のような危機に瀕した状態でも、このような役所の常とう手段を使ってくるのかと残念な気持ちになりますが…)。

また申請制なので、申請後に確認して、給付するまでは時間がかかってしまいます。まさに今必要なのに、給付されるのは1か月半後、2か月後という形になってしまいます。

Next: やはり財政出動をできる限り抑えたいという財務省の意向が反映されている――



政府は財政出動をしたくない?

申請制ではなく、全対象に手続きなしで配る制度にすべきであったと思うのですが、このような制度にしたということは、やはり財政出動をできる限り抑えたいという財務省の意向が反映されているのではないかと思ってしまいます。

前述のとおり財政支出39兆円という規模は大きいものの、その内容を見ると効果が疑問視されるものが多いのではないかと思いますし、申請制であるものは政府が考えるような金額にはならないのではないかと考えます。

アメリカは、大人ひとり最大1,200ドル(約13万円)、子供ひとり500ドル(約5万5,000円)の現金給付など総額2兆ドル(約220兆円)規模の景気刺激策を議会で可決しました。

しかもすでに2回目の現金給付も検討しているようです。

アメリカと単純に比べることが必ずしも良いとは限りませんが、対比するとあまりにも日本の経済対策が内容・規模・スピードの面で劣っていると言わざるを得ません。

これから1か月は緊急事態宣言によって、かなりの経済の落ち込みが予想されます。その需要の落ち込みを埋めるには、今の日本政府の経済対策では不十分であると考えます。

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元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』(2020年4月7日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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