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レナウン、コロナ倒産ではない? 中国企業との取引に潜むリスクと、破綻の真相=澤田聖陽

レナウンが5月15日、民事再生法の適用を申請。報道ではコロナ関連倒産で初の上場企業の倒産と言われています。これは半分は事実であるが、半分は間違っていると考えます。(『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』澤田聖陽)

※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2020年5月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

コロナ倒産じゃない?

東証1部上場のレナウンが5月15日、民事再生法の適用を申請しました。負債総額は138億円とのことで、報道ではコロナ関連倒産で初の上場企業の倒産と言われています。

コロナ関連倒産というのは、半分は事実であるが、半分は間違っていると思います。

まず足元の業績が悪化しているのは間違いないでしょう。レナウンのIRから月次概況を見ますと、3月から前年同月対比の売上が急減、4月については緊急事態宣言によりレナウンの主力販売先である百貨店が閉店、前年同月比19.0%という極めて厳しい結果に終わっています。

これは確かにコロナの影響と言えるでしょう。

しかしながらレナウンが経営に行き詰まった最大の原因は、親会社の関係会社への売掛金が未回収になったことです。

原因は、親会社グループへの売掛金の未回収

レナウンの親会社は中国企業の山東如意科技集団(山東如意)。山東如意は、中国のLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)と言われるほど、近年積極的にアパレルブランド等を買収し、規模を拡大しています。

山東如意がレナウンに資本参加したのは2013年のこと。

まず2013年7月に山東如意に対して1株120円で約40億円の第三者割当増資を行っています。これにより山東如意はレナウン株41.18%を保有することとなりました。その後、山東如意の親会社である済寧如意投資(済寧如意)に対して、1株144円で約29億円の第三者割当増資を行っています。

これにより済寧如意と山東如意を合計(投資額約69億円)すると、レナウンの議決権の53.32%のシェアを持つことになりました。この時点で山東如意のグループ会社になったわけです。

一方、親会社グループへの売掛金の未回収の件ですが、山東如意の子会社である恒成国際発展有限公司(恒成国際発展)に対しての売掛金53億円が回収できない状態になっており、2019年12月期の決算では貸倒引当金53億円を計上しています(恒成国際発展はレナウンにとって兄弟会社ということになります)。

この売掛金の内容ですが、恒成国際発展に対してレナウンが原材料を販売して、代金が回収できない状態になっていると説明されています。

元々はレナウンが恒成国際発展から原材料を仕入れ、外部の第三者へ売却していたが、取引形態を見直し、外部からレナウンが原材料を仕入れ、恒成国際発展へ販売する取引に変更したと説明されています。

これはかなり不可解な取引であるし、なぜそんなことをする必要があるのかという点において合理性がありません。またこの取引については、恒成国際発展の親会社である山東如意が連帯して保証していると言われているが、保証は履行されていないようです。

個人的には、これは売掛金という形での資金の還流であると考えています。確たる証拠は現在のところありませんが、状況証拠からはそのように取られても仕方がないかと思います。

Next: 山東如意は、度重なるM&Aにより借入金が増大し、米中貿易戦争の影響も――



不可解なグループ間取引

山東如意は、度重なるM&Aにより借入金が増大し、米中貿易戦争の影響もあり、資金繰りが苦しくなっていると言われています。

前述の通り、当初山東如意と親会社の済寧如意で、レナウンに対して約69億円の資金を投じているが、売掛金に見せかけた取引で53億円を山東如意の子会社の恒成国際発展に還流させ、資金回収を図ったのではないかと考えています。

その資金をグループの資金繰りに使うために、このような取引をおこなったのではないでしょうか。

中国企業との取引では、このような資金還流とか不可解な取引が起こりがちです。

LIXILは、中国の孫会社で粉飾決算が発覚して660億円もの特別損失を計上することになりました。
また江守グループホールディングスは、中国現地法人の暴走(粉飾決算や売掛金の回収不能)で経営破綻に追い込まれました。

中国企業との取引については、十分な注意が必要ですが、注意していてもこのような事件は定期的に起こっています。

コロナ以前からの「チャイナリスク」

これは一種のチャイナリスクと言えます。

中国企業との間で、中国での取引で先方の不正等により損失が生じたとしても、訴訟しても勝ち目はありません。残念ながら、そのような法治体制になっている国ではないからです。

それでも人口が世界最大であり、市場規模が大きい中国に企業は参入したいと考えます。

ただし、繰り返しになりますが。中国での取引は正確に履行されるという保証がありませんし、法的手段に訴えても勝ち目がありません。

そのリスクを承知で行わなければいけないということです。

レナウンの場合は、取引だけでなく資本についても中国資本になったのですが、親会社である山東如意の調子の良い時は良かったものの、親会社が資金繰りに苦しくなると、上記のような、かなりグレーな取引をやらされるということになったわけです。

ちなみに今年の3月の株主総会でレナウンの取締役会が出した取締役の選任案に対して、動議を行い山東如意側が選んだ取締役が選任された経緯があるようです。

Next: おそらくレナウン側が選任案として出した取締役は、山東如意側から言うと――



中国企業との取引は難しい

おそらくレナウン側が選任案として出した取締役は、山東如意側から言うとやりにくかったのでしょう。そのため、わざわざ動議までして、山東如意側にとってやりやすい取締役を選任したということだと思います。

結局はその後コロナの影響もあり、法的整理を行い、今後上場廃止になるという結果になったわけですが。

経済規模が大きくなったとはいえ、自由主義経済の国とはいろいろと異なる部分が多いため、やはり中国企業との取引については注意が必要ということかと思います。

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元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』(2020年5月19日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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