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なぜトランプは黒人差別「抗議デモ」を煽るのか? 世界の反感を買っても退けぬ事情=高島康司

米国黒人男性が警察官に拘束され殺害された事件を受け、世界中で抗議デモが拡大している。それをトランプ大統領は火に油を注ぐように煽っている。それはなぜか?(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)

※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2020年6月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

世界的に拡大する激しい抗議運動

ジョージ・フロイド氏の警察官による殺害が引き金になって発生している激しい抗議運動の拡大について解説したい。

5月25日、米中西部、ミネソタ州最大の都市、ミネアポリスで、偽造された20ドル札を使おうとしたとして通報されたジョージ・フロイド氏が殺害された。警察官のデレク・ショービンはフロイド氏の首を約9分間膝で押さえ込み、窒息死させた。最後の言葉が「息ができない(I can’t breaze)」であった。窒息死させられた動画は広く拡散し、強い怒りを呼び起こした。

すでに日本の主要メディアでも散々報じられているので周知だろうが、死亡からずいぶん日数が経過した現在でも抗議デモが衰える様子はない。抗議デモは全米50州の約140都市に飛び火し、暴徒化した一部のデモ参加者による略奪や放火も相次いでいる(※原稿執筆時点2020年6月5日)。

このような状況に対し、トランプ大統領は連邦軍を導入する可能性を示唆した。首都ワシントン(コロンビア特別区)に1,600人の米陸軍部隊が移動した。すでに23州と首都で州兵が動員されているが、現役の軍部隊が展開するのはこれが初めてだ。

また、連日暴動が発生するニューヨーク市では、30日深夜から2日朝まで外出を禁止すると発表。1日夜も略奪が発生したため、この後、外出禁止を2日夜も開始時間を早めて実施するとした。外出禁止令はこのほか、首都ワシントンを含む40都市以上で発令された。

世界の象徴となったフロイド氏の死

しかし、抗議運動の大きな波はアメリカにはとどまっていない。すでに、世界的な運動として拡散している。なぜか日本の主要メディアは大きく報じないが、世界のさまざまな地域で相当な規模の運動になっている。以下が現状だ。

・イギリス
ロックダウンに抗議する数千人に抗議デモがロンドンのトラファルガー広場を中心に行われた。デモ隊には「黒人の命は大切だ(Black Lives Matter)」のプラカードも多く見られ、フロイド氏の死に抗議するため一部は米大使館に向かった。

・ドイツ
ベルリンのブランデンブルグ門の前に、「黒人の命は大切だ(Black Lives Matter)」と「正義は待っていられない(Justice can’t wait)」のプラカードを持った人々が数百名結集し、抗議デモを行った。

・フランス
パリで「息ができない(I can’t breathe)」、「我々はみなジョージ・フロイドだ(We are all George Floyd)」などのプラカードを掲げた群衆が結集。膝をつくポーズでジョージ・フロイド氏への連帯を示し、その後行進した。

・デンマーク
コペンハーゲンの米大使館前に数千人が結集して、ジョージ・フロイド氏の死に抗議するデモが行われた。「正義なくして平和なし(no justice, no peace)」のプラカードが見られた。

・ニュージーランド
オークランドやクライストチャーチなど数カ所で「黒人の命は大切だ(Black Lives Matter)」に連帯する大規模な抗議デモが行われた。米大使館前に行進。

このほか、イタリア、ブラジル、メキシコ、アイルランド、カナダ、ポーランド、オーストラリア、そしてシリアなどで同種の抗議デモが行われた。

このように、ジョージ・フロイド氏の死に抗議し、これに連帯する運動は、世界的に拡散している。

その理由は、フロイド氏の死が新型コロナウイルスのパンデミックのロックダウンの影響で経済的に困窮している多くの人々の感情の象徴となったからだ。

Next: 抗議運動の2つのスローガン、「黒人の命は大切だ」と「息ができない」は――



誰もが「息ができない」

抗議運動の2つのスローガン、「黒人の命は大切だ(Black Lives Matter)」と「息ができない(I can’t breaze)」は、まさに政府のロックダウンによる経済苦で窒息しそうになっている人々の深い感情を表現している。

特に「息ができない(I can’t breaze)」は、マスクの強要で息ができない苦しさとも重なる。そして、「黒人の命は大切」は、自分たちの命も大切だという強い気持ちと重なっている。

このように、ジョージ・フロイド氏の死は世界的に共有されている苦難の象徴になった。いわばその死は、抑圧されているマグマが勢いよく噴出する噴火口のようなものになった。

ということでは、フロイド氏の死をきっかけに始まったこの運動は、彼の死という具体的な出来事を越え、経済的苦難が続く限り世界的に拡大してゆくはずだ。

暴動を煽るトランプのツイート

一方、世界的に拡大し、米国内では手がつけられないほど拡大している激しい抗議デモだが、むしろ火に油を注いで煽っているのが、トランプ大統領である。

普通、このように国内は混乱したとき大統領は広く国民の連帯を訴えるために、デモのきっかけとなったフロイド氏の死を痛むと同時に、警察官の黒人差別の解消策を打ち出すのだが、トランプのツイートはこうしたものとは正反対だった。

次のようなものが、トランプのツイートの例だ。

「上院議員のトム・コットンは『暴動を警察が抑えられないなら軍を投入せよ、アンティファと陸軍第101空挺師団とどっちが強いか勝負だ』と語る。第101空挺師団はノルマンディー上陸作戦やイラク戦争で投入。彼は元第101空挺師団でイラク戦争で戦った」。

「寝ぼけたジョー・バイデンの連中は実に極左で無政府主義者(暴動者)を刑務所から釈放しようとする。ジョーはそれについてまったく分かっておらず、無知だ。しかし連中は大きな力を持つだろう。彼らは税金を高くし、もっと色々なことをするのだ」。

「『マスゴミ』は出来る限りを尽くして憎悪と無政府状態を駆り立てる。国民が、彼らが何をしようとし、彼らがフェイクニュースであり、悪意を持った悪党だと分かっている限り『偉大さ』でこれを簡単に乗り越えることができるのだ」。

トランプのツイートはフロイド氏の死を痛み、問題の解消を約束するものではなく、むしろ暴徒化した抗議デモを非難し、軍の投入を強く推奨するものがほとんどだ。

これはむしろ抗議している国民の反感を買い、運動の過激化を煽る結果になっている。

Next: 日本の主要メディアでは、トランプがこのような火に油を注ぐような編動的――



トランプの岩盤支持層の世界観

日本の主要メディアでは、トランプがこのような火に油を注ぐような編動的なツイートをしている理由は、トランプの直情的な性格にあるとする論調が多い。

しかし、実はそうではない。トランプは大統領選挙を意識し、自分の岩盤支持層の支持をさらに固めるためにこのようなツイートを意図的に繰り返しているのだ。

トランプの熱烈な支持層を代表するアレックス・ジョーンズが主催する「インフォウァズドットコム(Infowars.com)」などのサイトの主張を要約すると次のようになる。

「アメリカを国際資本に売り渡し、アメリカを一部のエリートが支配する社会主義国家にすることを計画しているグローバリスト(ロスチャイルド、ソロスなど)は、民主党と情報機関の『ディープステーツ』を手先に使い権力の掌握を狙っている。

彼らは、新型コロナウイルスの蔓延というインフルエンザ程度の病気の危険性を喧伝してロックダウンを実施し、国民の自由を奪った。新型コロナウイルスはフェイクである。さらに今度は、ジョージ・フロイドの死で盛り上がった黒人の運動を扇動して破壊的な方向に誘導し、これをコントロールできないトランプの支持率を引き下げようとしている。

このようにして、次の大統領選挙ではグローバリストの民主党が勝利するつもりだ。

トランプこそ、グローバリストの策謀を砕き、アメリカを国民の手に取り戻すための『アメリカ第2革命』の真のリーダーだ。トランプを熱烈に応援して、真の革命を起こすべきだ」。

これがトランプの岩盤支持層の世界観だ。

このような世界観から見ると、全米で拡大している抗議デモは、グローバリストの民主党が権力を掌握するために仕掛けたものでなので、むしろデモを取り締まってこそ、「アメリカ第2革命」は完遂するということになる。

このような文脈から見ると、デモの取り締まりを要求するトランプのツイートは、岩盤支持層の世界観と一致していることが分かる。

トランプがこのようなツイートをすればするほど、岩盤支持層はトランプに結集し、トランプの支持は一層強固になる。

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未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ」(2020年6月5日号)より一部抜粋・再構成
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