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トランプが本気を出せば中国は秒殺される?香港市場がしぼんだら中国経済は息ができない=勝又壽良

米国は、国際基軸通貨国である。その底知れぬ力を見落とすと、中国は「秒殺」の運命を辿る。香港金融市場が、現在の地位を失えば、中国経済も道連れとなるのだ。米国は、この現実をしっかりと把握して手を打っている。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2020年6月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

他国を煽って「愛国心」を高める中国

中国は、大きな転換点を迎えている。世界各国へ孔子学院をつくって、表向きでは中国文化と中国語の普及を図るソフトパワーの強化に努めてきた。その孔子学院が、実は裏の顔を持っていたのである。中国人留学生の監視と、スパイ活動という実態が明らかにされている。ソフトパワーの強化が本旨でなく、ハードパワーの強化につなげる目的であったのだ。

ソフトパワーとは、国家が軍事力や経済力などの対外的な強制力によらず、その国の有する文化や政治的価値観、政策の魅力などに対する支持や理解、共感を得ることだ。国際社会からの信頼や、発言力を獲得し得る力とされている。この対極には、ハードパワーがある。

胡錦濤政権までは正直正銘、ソフトパワーに相当の力を入れていた。だが、2012年の習近平政権登場とともに、ハードパワーが前面に出ている。中国のソフトパワーは、ハードパワーを補強する手段に降格された。

今回の新型コロナウイルスによるパンデミックは、中国の地を表わすきっかけになった。対外的に高圧的な態度を「全開」させている。中国外交部報道官の攻撃的発言は、「戦狼」と揶揄されるほど、他国に不快感を与えている。

外交部報道官の任務は、あえて敵をつくらず、中国の意図を伝えるのが仕事である。それが、逆の行動を取り他国の顰蹙(ひんしゅく)を買っているのはなぜか。中国国内に鬱積する経済的な不満を外に逸らす目的であろう。高圧的発言は、「愛国心」を高める効用が期待できるのだ。

中国経済は、それほど追い詰められている。

習氏は最悪事態を想定の「底線思考」

習近平氏は4月8日、中国共産党の最高指導部の会議で、「我々は複雑で厳しい国際的な感染状況と世界経済の情勢に直面しており『底線思考』を堅持しなければならない」と訴えたという。「底線思考」とは、最悪の事態も想定して行動するという意味とされる。

具体的には、「軍事力の強化」と「国内失業者に雇用の場を与える」ことだ。

この2つの道は、日本が昭和初期に経験した昭和恐慌(1927~31年)への対応と同じことに気付く。軍事力の強化を背景に、満州(中国東北部)を侵略し傀儡政権樹立と重工業発展策を展開した。国内も軍需工業のテコ入れを図った。こうして、日本経済は1936年(昭和11年)に愁眉を開いたのである。だがそれは、太平洋戦争への一里塚になった。

中国は、明治維新以降の日本の「隆盛」をつぶさに研究している。昭和初期に取った日本の対応を参考にしているとみて間違いないだろう。日本は満州撤兵を要求され、国際連盟(国連の前身)を脱退するという孤立政策に陥った。今様に言う「ソフトパワー」を失ったのである。

現在の中国は、まさに外交部報道官の「戦狼」発言によって敵をつくる点で、戦前の日本と同じ誤りに陥っている。いずれも国内不満の発散が目的である。

中国のソフトパワーはすでに、大きく傷ついている。国際世論における中国のイメージは、コロナ禍で損なわれたのだ。

中国ファーウェイ(華為)の次世代通信網「5G」は、コロナ禍による信頼失墜の飛び火で、ヨーロッパ諸国で導入拒否の動きが強まっている。英国では、G7を中心に「10ヶ国連合」(D10)でファーウェイ製品導入を拒否する動きまで広がっている。

中国がどのように言い繕っても、世界の人々がパンデミックを引き起こした中国への怒りを消すことは不可能だろう。国際世論の場で、中国の罪を問うべきだという指摘も出ている。これは、中国の目指したソフトパワーを根こそぎ捨て去る意味だ。

こうしてコロナ禍が、中国の力と威信を低下させている。コロナ後、中国経済が新たな発展の道を辿る、そういう夢は100%消え失せたと見るべきだ。

Next: 中国全人代(国会)では、香港に「国家安全法」を適用することを決めた――

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