コロナショックは自然災害に似ている。しかし巨大地震は物を破壊するが、今回はそのようなことはなく、家も工場もインフラもそのままである。つまりは新型コロナウイルスの脅威は存在するが、その脅威が徐々にでも後退してくれば、元の経済活動に復帰できるインフラはそのまま存在している。(『牛さん熊さんの本日の債券』久保田博幸)
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消費支出、前年比11.1%減。過去最大の減少幅に
総務省が5日に発表した4月の家計調査によると、全世帯(単身世帯除く2人以上の世帯)の実質消費支出は前年比11.1%減(変動調整値)で、比較可能な2001年1月以来、過去最大の減少幅となった。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて緊急事態宣言が出ていた影響で、減少の幅が大きくなった。緊急事態宣言により、不要不急の外出は避け、買い物も生活必需品を中心としたものとなった。
「贅沢は敵だ」となったわけではないが、高級レストランでの食事、旅行・レジャー先での消費なども、当然ながら落ち込んだ。
世界貿易も大幅減退
米国商務省が4日に発表した貿易統計によると、輸出額・輸入額ともこの統計を始めた1992年以来、最大の下落率を記録した。
サービスを除いた輸出を国別で見ると、EU(=ヨーロッパ連合)向けがマイナス32.4%、カナダ・メキシコ向けが合わせてマイナス37.4%などとなっていた。その反面、いち早く感染拡大のピークを越えていた中国との4月の貿易は、輸出・輸入額とも増加していた。
米中の貿易については米大統領選挙も控え、交渉のツールに使われる可能性もあるため、今後の不透明感はあるものの、いずれにしても貿易も歴史的な水準に落ち込んでいる。
流通を止めたのは各国政府
今回の新型コロナウイルスの感染拡大を受けての人や物の移動の制限もしくは停止は、世界の経済活動に大きな影響を与えた。
これは当然といえば当然で、人の移動が制限され、製造や流通がストップしてしまえば、経済活動も停止状態とならざるを得ない。
ただし注意すべきは、この人と物の移動制限は、それをしなければならない事情があったにせよ、政府などが行った措置である。
それをしなければならないものについては、それを淘汰はできずとも、いずれ押さえ込むであろうことも時間の問題ともなろう。
Next: コロナショックについては、金融システムに影響を与えることは少ないと――
コロナ・ショックは金融市場を破壊していない
以前にも指摘したが、過去の世界恐慌、リーマン・ショック、日本のバブル崩壊と呼ばれたものは、金融システムに大きな問題があり、その金融機関そのものが自壊してしまったことで、いわゆる金融市場に大きなショックを与えた。
今回のいわゆるコロナ・ショックについては、金融システムには特に影響を与えることは少ないと思われ、金融不安を誘発する可能性は低い。
どちらかといえば、リーマン・ショックなどよりも、巨大地震などの自然災害に似ている。しかし、巨大地震は家や工場、さらに道路などのインフラを壊してしまうが、今回はそのようなことはなく、家も工場もインフラもそのままである。
つまりは新型コロナウイルスの脅威は存在するが、その脅威が徐々にでも後退してくれば、元の経済活動に復帰できるインフラはそのまま存在している。
もちろん新型コロナは我々の社会慣習や仕事のあり方、人との接し方など大きな変革をもたらすであろうことも確かである。
それはたぶん、良い意味で変化を遂げるのではないかとの期待もある。在宅ワークが増えると、少なくとも通勤時間分、人々の余裕時間も増える。
景気減退は人為的なもの
期待先行と言われながらも、ここにきての株価の戻りも理解できなくはない。
足下の景気は確かに歴史的な落ち込みとなっているが、これは人為的に行った結果でもある点に注意すべきかと思われる。
最も注意すべきは、この対策として、日本だけでなく海外でも大規模の経済政策が講じられ、その分の政府債務が大きく積み上がったことである。
その債務は我々の将来の税金が主な担保となるが、我々の生活が今回の政府の対策によって、膨大に政府債務を返済できるほど豊かになるという目星も当然ながらつけられない。
国債は日銀が買えば済む、で収まるわけがない、
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『牛さん熊さんの本日の債券』2020年6月5日号より
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