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「政治家は麻雀の名手だらけ」平成の半ば、政治記者は賭け麻雀でお小遣いをもらっていた=真殿達

黒川元検事長は「賭け麻雀」が問題となり辞任したが、平成の半ばまで政治記者は政治家の麻雀相手をして小遣いをもらうのが常だった。ある大手新聞の政治部長は「政治家ほど麻雀の名手がそろっている業界はない」と言っていた。(『資産運用のブティック街』真殿達)

※本記事は有料メルマガ『資産運用のブティック街』2020年6月16日号を一部抜粋したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:真殿達(まどのさとる)
国際協力銀行プロジェクトファイナンス部長、審議役等を経て麗澤大学教授。米国ベクテル社とディロン・リードのコンサルタント、東京電力顧問。国際コンサルティンググループ(株アイジック)を主催。資源開発を中心に海外プロジェクト問題への造詣深い。海外投資、国際政治、カントリーリスク問題に詳しい。

1億総ギャンブラーの国ニッポン

日本で賭けマージャンを問題にし始めたら、誰しも何かの拍子に訓戒や懲戒の憂き目にあってもおかしくはない。日本はギャンブル依存症の多い国である。競馬、競輪、競艇のように法的に指定されていなくても、パチンコ、麻雀、ゴルフなど賭け事の絡むゲームは世に事欠かない。

古き良き時代だったといわれかねないが、平成の半ばくらいまでは麻雀をしない勤め人は非常に少なく、ほとんどが金を賭けていた。ゴルフだって、当事者同士で様々な賭けを組み、その約束を「握り」といった。

昨今は様々なデジタル・ゲームが登場、進化し続けているようなのでトラッド組の賭け事は相当減ったにせよ、死んではいない。日本ほどホワイトカラーが賭け事に打ち興じる国は世界でも稀だ。

コロナ騒ぎの真っ最中でも、パチンコを止められない依存症の人が多くいることに驚かされた。

パチンコは公然とカネをかけているのに、ギャンブルと認定されていないことは誰もが知っている。かつてはパチンコの総売上額は年30兆円と、当時の自動車業界と同規模だとされた。今なお、自動車業界と並ぶ売り上げがあるとは考えられないが、衰退産業ではない。

意外かもしれないが、パチンコ台は自動車、家電と並ぶリサイクル3大品目の1つである。その中で、解体後に回収できるハイテク部材や貴金属の原単位が圧倒的に高いのがパチンコ台で、都市鉱山の雄といわれる。

相当に技術水準が高くないと、そして国内に巨大な市場を持っていないとパチンコ台は生産できない。それが可能なのは、パチンコを遊戯施設として合法化している日本だけということになる。

カジノ誘致は、建設できればそれで良い?

こんなに社会の隅々にまでギャンブルが染みわたっているのだから、IR(統合型リゾート)のカジノは採算が取れるのかと心配になる。

IRカジノのマーケットリスクが問題視されないのは、本当は、カジノなんかはどうでもよく、開発工事の規模に関心が集まる土建屋型プロジェクトであることによる。

推進している業界や政治家たちはいずれも建設族である。多くの箱もの同様に、建てればよいだけだと考えられていることによるのかもしれない。

政治記者は政治家のマージャン相手をして小遣いをもらうのが常

かつては、霞が関の役所内や大手企業の事務所内で、国会待機やお客の指示や国際電話を待つ深夜には、雀卓がセットされて時間つぶしをするのが当たり前だった。雀荘で時間つぶしをしている者も多数いた。

企業間の接待マージャンは頻繁に行われ、どのように上手に負けるのかが、みそだった。

少し職種は異なるが、政治記者は政治家のマージャン相手をして小遣いをもらうのが常だった。ある大手新聞の政治部長が、「政治家ほど麻雀の名手がそろっている業界はない」と言っていた。

サラリーマン記者が、こんな大きなかけ率で負けたら大変なことになると追い詰められ懸命に打たされるが、終わってみるといつもそこそこ勝っていた。勝たせてもらったとまったく感じさせないで小遣いをくれたのだ。

Next: 在日外国人記者にも猛者がいた。数年前に亡くなった名物記者サミュエル――



有力政治家と付き合うにはマージャン必須?

在日外国人記者にも猛者がいた。数年前に亡くなった名物記者サミュエル(サム)・ジェメソン(元LAタイムズ東京支局長)の事務所に初めてあいさつに行った時のことだった。

午後というのに眠そうな顔で出てきて、いきなり流ちょうな日本語で「すいません。昨夜政治家と徹マン打ってたんで眠くて、ぼうっとしています」といった。

田中角栄以下多くの総理大臣との単独インタービューに成功していたジェメソンは、多数の有力政治家と個人的に付き合っていた。

シンシナチ郊外の高級住宅街に住む大学院の学友の両親のブリッジ仲間の1人が、ジェメソンの母堂だった。母堂から「日本に帰ったら必ず私が元気にしているとサムのところに行って伝えてね」と頼まれていたのだ。

世界的経済学者も神田のパチンコ店へ

もうそんな制度はなくなったのかもしれないが、30年以上前には、日本銀行には世界的な経済学者を半年日本に招待して、研究活動の傍ら国内の有識者との交友をプロモートするプログラムがあった。

その1人がたまたま旧知の人物だった。日本に来ることが決まるとすぐに電話をよこしたので、困ったことがあれば何でもしてやるから安心しろ、日銀は格調の高い世界だから羽目を外したくなったら俺が塩梅してやるから何でもいえ、というような馬鹿話をして、ガハハハと笑い合って電話を切った。彼は間もなく家族を連れてやってきた。

昼飯を共にしたり、居酒屋に飲みいったり、家族を連れて我が家に来たり、若い日々にかつての交友が復活した。

ある時、折り入って相談があるといってきた。社宅から日銀本店までの道すがら、神田駅から日銀本店までの短い距離に限っても、パチンコ屋を何件も通り過ぎる。「滞在中に一度ぜひ行ってみたい。だが日銀の同僚や役員にそんなことは恥ずかしくていえない。お前、何とかしてくれないか」という。

日銀マンとはすれ違いそうもないウィークデイの11時少し前に日銀に迎えに行き、神田駅近くのまだすいているパチンコホールに入った。3,000円を手交し、1,000円分の玉を買い、やり方を教え、すったらあとの2,000円を使い、それも無くなったら近くで打っているので俺のところに来い、と言って私もファイトに及んだ。

無欲とは恐ろしいもので最初の300円で買った玉の一発が当たり「777」が並ぶと、後は処理しきれない勢いで玉が出始めた。店員が大きな箱を持ってきて玉を取り出している間にもジャラジャラ出続けていた。視線を感じて振り返るとあっという間に大枚3,000円をすった件の博士が戻っていて私の背中をじっと見ていた。

「お前、何時もやっているのか」「いや、もう十年以上パチンコホールには来たことがない」。若い時に友達に誘われて入ったのが最後だった。

「ところで、この玉を持っていくと好きなお菓子やおもちゃに換えてくれるから、ちょっとしたショッピングが楽しめるぞ」と伝えた。そして、景品棚は文字通りただのショーウィンドウだけでカウンターのお姉さんは何も言わずに玉の数を見て、ライターのようなものをいくつかくれ、店の外のボックスへ行けと指示した。1万4〜5,000円になったと記憶する。

「777」の賞金は、当時の日本橋の高級店の松花堂弁当2人前でもおつりがきて、千疋屋でお茶も飲めた。

Next: パチンコの興奮冷めやらぬ大学者は詰めに詰めた。矢継ぎ早に発せられた――



日本のギャンブル好きは変わらない?

パチンコの興奮冷めやらぬ大学者は詰めに詰めた。

矢継ぎ早に発せられた鋭い質問は、パチンコ業界と警察官僚との関係、在日問題、与野党の南北朝鮮への関与、政治献金、いくつかある遊戯協会の実態など主に物事の裏表の委細や業界団体の機能と役割等への説明を強いた。

アメリカなら反トラスト法に触れかねない談合行為や業界のインサイダーたちが寄ってたかってツケを消費者に回している実態を話すことになったのだった。

敵は最後に、「当事者の全員がインサイダーになって各々が既得権を合法的に享受するために、物事を言い変えたり、黙認し合ううちに、つじつまの合わなくなるところは言葉の意味と実態に齟齬が生じても黙って認めるシステム」という解説すらして見せた。

「わかったぞ、日本の特殊な金融システムや慣行にも似たところがあるのだ!」「今日は、日銀の研究所で議論しているより勉強になった!」などと吠えられたので、腹いせに、ついついちょっかいを出したくなり、「路地裏の経済学」で名をはせていたその時はもう倒産していた長銀の竹内宏氏(故人)のパチンコへのうんちくを教え、日銀に戻ったら誰かに元長銀の竹内氏に会いたいと頼んでみろと唆したのだった。

働き方改革、イクメンなど世の中は変わった。ジェメソンや竹内宏氏に、検察官の賭けマージャンを今ならどう思うのか聞いてみたいものだ。

2人ともニヤリと笑って「ギャンブルを徹底して取り締まったら日本の生産性は上がるだろうなあ」というのか。それとも「相変わらずパチンコをギャンブルといわない嘘が通用しているんだ。もう救いようがないなあ」と突き放すのか。

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image by:Dan_H / Shutterstock.com

資産運用のブティック街』(2020年6月16日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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