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コロナ集団免疫、2年4か月必要との試算。後手後手の安倍政権にも不満の声=吉田繁治

新型コロナの集団免疫獲得までの期間は2年4か月という試算が出ました。しかし、毒性の変異があると「終わりなき戦い」は避けられません。政府のコロナ対策を受け「アベノミクスは失敗」の声も上がっています。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2020年7月1日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

新型コロナ「長期化のめど」の計算

VOICE(PHP社)という生き残った総合雑誌があります。同書の論理が錯綜する論が多いなかで、時々、面白いものが載っています。疫学には数理疫学という数学もあるので、ネットワーク効果のような計算モデルも作れます。「8割削減おじさん」としてTVで有名になった北海道大学の西浦博教授も、数理の理論疫学が専門です。

▼集団免疫獲得までの、日本での期間の試算

必要期間 = 集団免疫の必要人数 ÷ 1年で社会が対応できる感染者数
     =(1.26億人 × 0.7)÷ 〔 {病床3万床 × (52週 ÷ 2週)} ÷ 2%〕
     = 8,000万人 ÷ (78万人 ÷ 0.02) ≒ 2.3年

出典:『VOICE』2020年7月号 安宅和人氏

この数式では、1年で社会が対応できる感染者数がカギです。これは医療崩壊を起こさない感染者数を上限とします。入院患者が、診療ができる病院の収容数(有限数)からあふれると、重症者が診療できず死者が増える(致死率が10%~15%に向かって高まる)からです。

安宅氏は、感染者が広がらなくなる(感染者1人が、平均でうつす基礎生産数が0.6人以下)ための、集団免疫を人口の70%と仮定しています。1.26億人×0.7=8,820万人が感染し中和免疫を獲得した時、感染が広がらず、毎年のインフルエンザのように収束する時期としたのです。

インフルエンザと同じく「終わりなき戦い」になる?

インフルエンザでは都市封鎖、手洗い、マスクをして3密を避けことを続けることがなくても毎年3月頃には収束しているのは、自然に、多くの人がかかって集団免疫ができるためでしょう。

ただし、毎年、このインフルエンザは流行ります。理由は、ウイルスが変異し、前年や前回の抗体では効かなくなるからです。

集団免疫ができる累積総感染数を人口の70%(8,800万人)、
総感染数に対する重症者を2%(8,800万人×2%=176万人)とし、
重症者の入院期間を2週間として、
収容可能な病床数は、全国3万床とする。

以上の結果、冒頭でも紹介した以下のように計算されています。

必要期間 = 集団免疫の必要人数 ÷ 1年で社会が対応できる感染者数
     =(1.26億人 × 0.7)÷ 〔 {病床3万床 × (52週 ÷ 2週)} ÷ 2%〕
     = 8,000万人 ÷ (78万人 ÷ 0.02) ≒ 2.3年

集団免疫獲得までの期間は、日本では2.3年(2年4か月)ということです。集団免疫を獲得すると、同種のウイルスでは海外からの来訪者からも感染が広がらなくなるので、同種のウイルスである限り、海外との交流は、あまり関係がなくなります。

起点を20年の2月とすると、2022年の6月が集団免疫獲得と新型コロナの日本での収束時期の目処になります。

政府と専門家会議が、これに類する計算をしているかどうか不明です。していないとも思えます。「2021年には有効なワクチンができるという期待」があるからです。

安宅氏の計算モデルは、「感染後の免疫を無効にする、新型コロナの変異はない」という前提に立っています。

しかし、新型コロナは実際には、インフルエンザほどではなくても、変異しているようです。RNAの遺伝子では2,000ヵ所が、コピーミスから変化しているとのことです。ただし、この変異が毒性の性質とどう関係しているかの検証はまだ行えていません。

毒性の変異があると、毎年のインフルエンザのように「終わりなき戦い」になります。

武漢A型、中国B型、欧州C型の、感染力と重症化の違いは、すでに報告されています。イタリアで始まった欧州C型が感染力が強く、ウイルスが肺と消化器にまで入って多臓器不全を起こす重症化率が高いという。

Next: 安宅和人氏は集団免疫を人口の70%としていますが、西浦教授によると――



集団免疫は獲得できるのか?

なお、安宅和人氏は集団免疫を人口の70%としていますが、西浦教授によると20%~40%でも集団免疫になるというように変わってきています。

事例は2つです。

2月のダイヤモンド・プリンセス号内での感染では、船内での感染者隔離は行われたが、約3,000人の乗船者に対してその17%が感染した(累積罹患率が約17%)。70%には遠く及んでいない。

スウェーデンはロックダウン(都市封鎖)などの行動制限を行わず、集団免疫に達することを受け入れるとしています。現在、人口の約35%が免疫もつ段階で、流行は下火になろうとしている。最終的な累積罹患率は50%にも至らないだろうと言われています。

以上から、感染者の隔離が適切に行われた時という条件では、集団免疫は20%~40%と推計されることもあるとされています。間をとって30%なら、日本での期間は、2.3年×(30%÷70%)=0.98年≒1年に短縮します。

2021年の3月に収束。ただし、これは「変異をするウイルスが、毒性を変えない」という前提のものです。変異が感染力と症状を変えれば、この限りではない。インフルエンザのように、有効な治療薬ができるまでは「終わりなき戦い」になります。

なお重症化を止める治療薬ができれば、自然治癒が少ない怖さはあってもインフルエンザ並みになっていきます。

感染数の少なさという日本の有利さの不利

日本では、東京で増えていても1日50人台であり、累積確認感染数が1万8,593人と少ない(7月1日)。100万人あたりでも150人です(編注:原稿執筆時点7月1日。なお、7月2日〜7日まではいずれも100人以上の感染者数が出ており、7月8日には75人と再び100人以下に戻っています)。

米国の262万人、100万人あたりで8,190人と比べて1.8%、ウイルスが違うのではないかと思えるくらい少ない。生活習慣、人種、貧困の少なさ、BCGによる交差免疫など、いろんな要因が挙げられていますが、原因は確定していません。

未確認の感染者は、わかっていません。日本のように低い抗体保有率での検査では誤差が大きくなります。

神戸の医療センター中央病院の、外来のPCR検査では3.3%でした(5月4日)。大阪市立大学の付属病院では1%でした(5月1日)。巨人軍では1.8%でした(6月3日)。1%~2%くらいではないかと推計できます(126万人~252万人)。

海外では、スウェーデンでは25%、NY市では21%(NY州14%)、ロス4.1%、ドイツ15%、米国サンタクララ3.3%、オランダ3%とされています。日本は、米国サンタクララ3.3%、オランダ3%に近い。

感染が少なかったカリフォルニアやテキサスでは現在が第二波です。カリフォルニアの新規感染数は7,118人、テキサス州は6,542人です(6月2日)。

日本やカリフォルニアのような過去の感染数の少なさは、集団免疫にとっては不利に働きます。「感染期間が長引く」という不利さです。日本経済は、コロナショックの影響を全米平均より2、3倍長く受けることになるでしょう。

安宅モデルは、病床をオーバーフローさせる限度までの新規感染があったとした時の試算です。3万の病床の50%が埋まる状態なら、収束までの期間は、2.3年の2倍の4.6年になります。

しかし70%ではなく、35%の感染で集団免疫になると仮定すれば、収束までの期間は2.3年です。どう考えたらいいのか? 当方は、

新型コロナのウイルスの変異が、毒性を変えないという仮定で、
集団免疫を35%、
病床の50%が埋まるレベルの速度とし、
2.3年と見ています。

「不透明な将来は、確率的数値」で想定するしかないのです。

Next: 政府のコロナ対策は、政治と関連しています。トランプ大統領には、無茶が――



政治とコロナ対策

政府のコロナ対策は、政治と関連しています。

トランプ大統領には、無茶があり、本気であることがおもしろい。「米国の感染が多いのはPCR検査が多いためだ。検査数を減らせばいい……」本人の関心は、11月3日の大統領選挙です。このため、経済の再開を急ぐ。支持率から見て再選の確率は60%でしょう。相当に危なくなっています。大統領選を左右する9月に、何かのビッグディールがあるかもしれません。香港問題を材料にした対中国強硬路線かもしれません。

安倍政権はコロナ対策、検察庁の定年延長、河合議員夫妻への1.5億円の政治資金(政党助成金の異例な分割:10倍)から、支持率が30%台で、危機ラインです。このため、秋の解散総選挙が噂されています(起死回生を狙う)。立憲民主党の支持が上がらないからです。

「20年冬には、21年夏の東京オリンピックの開催」が停止になり、支持が減ると自民党は考えています。4選は完全に消えました。

一次、二次補正の総事業費225兆円(真水は57兆円)に加えた、第3次補正も言われるようになってきました。「対策が遅い、1人10万円では十分ではない」という非難があるためです。

当方にも、アベノマスクが送られてきましたが、小学生用であるかのように「小さく、ガーゼが分厚い」。設計されたものではない。暑苦しく、日本の夏にできるものではない。これは、シュールなもので無用です。

コロナ後の経済の落ち込みを見て、7年のアベノミクスは「失敗だった」という声が大きくなっています。米国よりGDPの低下が大きいからです。

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